04-魔法少年の座学
ゆーき少年とおかーさんは、無事に帰宅をはたしました。
「嘘つき!田舎道を走っていったら、空に竜が舞っていたよ!」少年が叫びます。
しょうがないじゃないですか、野外では、1/8の確率で出現するんですよ。
「どこのウィルダネスアドベンチャーだよ!」いいツッコミですと、いい笑顔でサムズアップしました。
「そうよ、今どき20面体なんて振らせないでよね、タコ(To Hit Armor Class 0)の計算なんて久しぶりよ」ちょっと懐かしい、と笑うおかーさんです。前世紀の偉大なる遺物にして原点に感謝を。しかし良く知っていましたね、おかーさん。
「赤箱くらいは見たとあるわよ?」しれっと言うおかーさんです。あなた何歳ですか?「14からは数えるのをやめたわ」早いでしょう!いくらなんでも。
「そうそう、倒したら、竜の正体、今度は、早期警戒用の哨戒機とパイロットでしたね」
ええ、まさか行間で倒されるとは思いませんでしたが。劣化竜程度の障害を、うっかり戦力過多な相手に出すといい稼ぎにしかなりませんね。
「……まさか、倒せるとは思わなかった?……いや、うん、でも夢の世界だと、結構もっと大きいのと遊んでいたっけ」シロ君元気かなー。とか呟いているゆーき少年でありました。ええとシロ君とは誰というか何なんでしょうね?
「ちょっと銅貨が重たいけど、しっかりひろっとかないと成長しないのよね」これも古い話題です……ついてこいよ?こちらは気にせず飛ばしていきます(誰に言っているのでしょう?)。
嫌がらせのつもりではなかったのですが、低額硬貨が多いのは仕様ですかね?というかこの場合の金銭収入って、戦闘機乗りのお財布からだったりするんでしょうかね?
「それは、お気のどくかも?苦手なミッションへの参加拒否時に違約金が払えなかったら、ちょっとかわいそうな気がするな~」ちょいちょい、とステアリングをあてて、後ろを見ながら、バックで自宅の駐車場へと車を止めながら言うおかーさんでした。まあ、大丈夫でしょう、所属は中東の傭兵基地じゃないはずですし。
「……なんだかおかーさんが意味不明なボケをしている気がするけど、よくわからないから突っ込めないです」ちょっとしょんぼりな少年です。うなだれなくていいですよ。その姿もかわいいですが。
「電子版がタブレットで見えるから読んどくといいわよ?気になるなら?多分あされば、ストレージに動画もあるはず」けろりんと言いながら、車から降りて、前面にあるトランクを開けて、戦利品やら、測定器具やら、ビニールシートやらを降ろすおかーさんと、それを手伝うゆーき少年。
「うん、落ち着いたら見てみたいかも?見てもいいまんがなんだよね?」おとーさんに叱られない?というニュアンスで聞くゆーき少年です。
「……微妙に15Rかもしれないけど、まあ、問題ない……よね?」ちょっと首をかしげます。
名作なので良いと思いますよ。レーティング?なにそれ、ていう時代の漫画ではありますが。
閑話休題
「さて、まずは、知能検査からかな?ここに天井から吊るしたバナナが……」
「怒るよ」
「……冗談はさておき」
おかーさんは帰宅して着替えています。なぜか紺色のタイトスカートに白いブラウス、と伊達眼鏡です。ブラウスのボタンは、きっちり上まで止める派です。で、細い首を強調するように、髪をアップにまとめています。手に持っているポインタは、すぐに机に置きました。
広めのリビングで、親子は並んで座ります。おかーさんは端末を操作して、ひょいっとユーキ少年へとばします。
「とりあえず、それ解いてみてくれるかな?」促します。
「ええと、文章問題?足し算とか引き算とか、かけ算とか割り算とかするやつかな?」ざっと見て取る、ゆーき少年です。
「四則演算と言うね、まあちょっと基本から?」ちょっと悪戯っぽく笑いながら。
「ええとオイデプスくんが、イオカステさんと結婚して、子供を5人作りました、そのあとさらに子供を6人作りました……兄弟おおいですね?」サッカーチームが作れます。
「簡単?」おかーさんがゆーき少年に尋ねます。
「うん、答えは11だね」ちょっと自信満々に答えます。
「正解……なんだけどね。よーくその文章問題見てくれるかな?」
「?とくにおかしいところはないようだけど、どこか引っかけがある問題なの?」じーと何度も読み返して、けど分からなくて、少し涙目になりながら、聞き返すゆーき少年です。
「うん、問題の中身に引っかけはないんだけどね、ユーキ君?ラテン語って最近の小学校では必須科目だったかしらね?」ちょっと悪戯っぽく笑うおかーさんです。
「そんなことはないよ?……て、この文字、日本語じゃない!」ようやく無意識のうちに読み進めていた言葉が、日本語でなく、少年にとって未知の言語であったことに気がつきます。
「もしかしたら……て思っていたけど、自動翻訳?に近い能力が身についているようね……今度はこれを聞いてみて」ひょいっと、動画投稿サイト(一応、いえ当然、全年齢版です)を投げて送ります。
「うわあ……意味が分かるよ……ええと日本語訳というよりも、意味が直接に通じるような感じかな……でもなんで、これ、アニメの内容を熱く語るおじさんの動画なの?」
「趣味よ」きまってるでしょう、とばかりに薄い胸を張るおかーさんでした。
「どうしてこんなことに」その他いくつかの言語で試したのち、聞き取れる、目で認識できる、ならほぼすべての言葉が理解できることが判明して、また規格外の能力に愕然とするゆーき少年です。おそろしいことに鯨の言語やら、犬猫の感情表現やらもおおよそ判別できました。
「まあ、なんというか夢の世界の能力がそのままこちらにも反映されるとしたら、必須?かな?だって、どう考えてもその世界の住人はともかく竜とか、知恵ある獣?とかは日本語をしゃべっている気がしなかったものね」とうとうと理屈を述べるおかーさん。「まあ、お約束?というものらしいわよ」どやっという顔をして、薄い胸を(以下略)。
「どこのお約束ですか……」頭をかかえるゆーき君です。
「『まあ気にしな気にしない、ただ日常生活では、うっかり意味が取れても、相手が何語を話しているのか解るようにしておこうね』」ニッコリ笑いながら言うおかーさん。
「『了解しました(jIyaj)』」机に突っ伏したまま答えるゆーき少年に、軽くチョップをかますおかーさんです。あ、ごんってリビングの机で額をうったみたいですね。
「痛いです」涙目で見上げるゆーき少年です。
「クリンゴン語で話しかけたのに、違和感無くその言語で返答するんじゃないわよ」とおかーさんは笑いながら言いました。
うわあ、なんてマイナな言語で試すんですかこの人。というかネイティブとしか思えないような、発音でしたよ。……人工言語にネイティブってあるんですかね?
「クリンゴン語ってなに!」ゆーき少年、真っ当な疑問だと思います。
「アーカイブにあったような気がするけど、あのシリーズ?最後のフロンティア的物語で、でてきた異星人の言語です、シャレで、言語としての体裁を整えて、実用に足るようになった、人工言語って言えばいいのかな?ええと、とりあえず、その物語、第1シーズンは30話くらいあるけど」見る?と聞くおかーさんです。
「……長いです」何度目か、机に突っ伏す少年です。
「第2シーズン以降、映画版とか含めるとだいたい700時間くらいで全部視聴できるかな?」
さすがに無理には勧めないですよー。と続けるおかーさんです。
「さて、じゃあそれをふまえて、これを見てみましょうか?」おかーさんは、複数のリアルカードをリビングの机に広げます。帰り道の山道でであった山賊と村人から出てきたカードと、さらに荒野(?)で遭遇した竜から手に入れたカードです。
そのカードの上半分にはデフォルメされたキャラクターのイラストが描かれていて、下半分にはなにやら解説?説明が記入されています。あとカードの左上に名称らしきものが、右上角にはなにやらシンボルと、右下にはスラッシュで隔たれた数字が書かれています。
「さてゆーくん?読めますよね?」にっこり笑いながらおかーさんが、文章を小さな手で指し示します。
「ええと、左上のはカードの名前かな?『賊』『村の長老』『美しい村娘』『未熟な火吹き竜』右上の模様?シンボルは意味がよくわからない……。イラストの枠と文章の枠の間にあるのは共通の意味かなええと『主人公以外の役割』?『役どころ』?『キャラクター』?とか言う意味みたい、その横に書いてあるのはジャンル分け?特性?種族?かな」ちゃんと読み取るゆーき少年です。
「ふんふん、表音文字っぽいですね。であると、単語はシンボルの組み合わせかな?」
「右下のは数字みたいだけど、意味はよくわからない?『賊』が1/1かな、『村の長老』『美しい村娘』が0/1みたい。『未熟な火吹き竜』は4/3かなあ?」ちなみに、『山賊』のカードは12枚、後は全て1枚です。
肝心の文章枠を続けて読んでいきます。奇麗なボーイソプラノです。
「『特性:雑魚(英雄にはかなわない)悪役
冒険の物語その最初に出てくる名脇役。ジャンル、登場場所によってさまざまな様相を呈する。大抵は相手の実力も測れない雑魚で、やっつけても罪悪感を抱かない容姿をしているが、まれに憎めないキャラとなり再登場することも。セリフ例:ひゃっはー』だって?」『賊』のカードを読み上げるゆーき君です。
「文章の量に比べて意味が多い気がするけど?」
「うん、なんだかニュアンスが深くなるような仕掛けが言葉にあるみたい?見た目の文章量より多くの情報が伝わってきた」なにそれ便利。
「単純な表音文字だけでなく、表意文字的な役割も併せ持っているのかな?」
「ええと続けるね。『村の長老』だね。『特性:依頼者(報酬を支払える)善人 実力者
典型的な村(中世ヨーロッパあたり?)のとりまとめをする老人。まれにマッシブな体型になり賊をこらしめるというなどの意外性をもつこともある。対象に報酬を与えることができる。よく美しい孫娘と共に出現し、問題を提起する。本人は、故郷である村の人口減少を嘆いており、血縁と対象をくっつけて村にとどめようとする罠をはることも?』」
「ふーん。なるほどね」
「で『美しい村娘』は『特性:報酬 生け贄 英雄候補 恋愛
村長の孫、美しく尽くす性格、惚れっぽい、など存在自体が報償となる立ち位置で登場することが多い。また『賊』に襲われる場面に被害者として最適な対象。強化することで序盤から終盤まで登場可能。ハーレム要員。
注意)以下は年齢制限がある情報です、閲覧されるかたは18歳以上でしょうか?
はい/いいえ
』てなにこれ!」そこまで読み進んで驚愕するゆーき少年です。顔が真っ赤です。
その反応と、カードの仕掛けを知って、大爆笑のおかーさんです。
「インタラクティブなリアルカードってなにこれ、無駄に高い技術力!」笑い転げています。
「……うー」もう突っぷしたまま、うめくだけです。
「で、Yesタップしたの?」
「しません!」がばっと起きて叫ぶ、ゆーき君です。ああ涙目だけど可愛いですね。いえ美少年の涙目だからこそ、かわいいのです。
「うんそうだね、ゆーき君にはまだ早いかな(もし勧めたと分かったらおとーさんにあとで叱られるしね)」ちょっと笑いながら、かいぐりかいぐりと息子の頭をなでる、おかーさんでした。
「ええと、気を取り直して……最後『未熟な火吹き竜』読みますよ。
『特性:飛行 火炎(燃料?で攻撃力+) 対英雄 財宝(中)
空を駆ける竜。属性は炎。燃料?を単位量加えるごとに攻撃力+1。人間とは比べ物にならないほどの防御力をその固い鱗によってなしているが、空を飛ぶ能力を優先した成長途中の個体のため、無敵というほどのこともない。ただしどちらにせよ一般人がその巨体に出会ったなら、哀れな彼ら(もしくは彼女ら)にできることは、高温の炎の吐息によって、燃え落ちるわずかな時間で、何かに祈るか、走馬灯を見ることだけということになる。
『雷』一発で落ちるので実用性に欠ける、と、とある環境では言われかねないが、空中機動による機動力や、燃料?注入時の一撃はシャレにならない破壊力を産むので努々侮るなかれ。討伐時には大量の財宝(主にコイン)が手に入る。荒野を進むと1/8で遭遇するというジョークがある』って冗談を本気にして出してこられましたよ……」
引き続き笑い転げているおかーさんです。対して少年はがっくりとうなだれています。
***
もしかして、話が進んでいないのじゃないか?という疑問をよそに、次回へ続きます。
そして次回、ゆーき少年はこっそり大人の階段を上る!こうご期待!
「登りません!」
……いい子だなぁ。
次回へ続きます。




