26-魔法少年と続々々量子力学入門
前回光が波の性質を持っているの証明として、干渉縞を観察するための実験、いわゆるヤングの実験のお話をしました。
「なぜか水で波が起きる(力が伝わる)のはなぜか?という話すになって、水素結合の解説まで飛び火しましたけど」そうですね、でも仕方なかったんや、ゆーき君、このあふれんばかりの衒学的衝動を抑えることができなかったんや!まあ、その場のノリとも言いますが。
「お話が予想もつかない方向へ突き進むのはいつものことなので、お気になさらないださい。復習にもなりますし」にっこりと笑ってくれるゆーき君、まじ天使ですね。
「ユーキは優しすぎル」ちょっと苦笑いのリカルドくんですね。
それでは、改めて、波のお話をしましようね。波とか波動とか、結構スピリチュアルな響きがありますね。
「昔の漫画で”おーゔぁーどらいぶ”とか言いながら、色付きの波動を拳とかに乗せて殴りつけていたのがありましたね」古典の名作ですね。相変わらずよく鍛えられていますね、さすがママさんの娘さん「息子です」失礼。
でもまあ、特別な名前が付けられていますが、波動はつまるところ力の伝達の様相に過ぎないのですよね。力が発生する点があります、それが周期的に力の向きが変わります、その変化が何かに伝わった時、波が起こります。簡単に言葉にするとこれだけのことです。
「ずいぶん簡単ですね?」そうなんですよなっちゃんさん、物事は結構シンプルな回答が多いのです。故人曰く、『シンプルでないなら間違っているのよ』ですね。
「それはそれで問題がありそうな気がします」そうですかね?
波が発生するには、その波を伝える場所が必要ですよね?水とか、音を伝える空気とかです。それらの物質とか物体のことを媒質(medium)というそうですよ。
「あー音も波なんですネ」その通りですリカルドくん。
「あれ?でも空気って紐みたいに、繋がっているんですか?」なっちゃんさんいい質問ですね。
それではまた解説しましょう。
「「「あ」」」またやっちゃったという顔をしていますが、華麗にスルーしますよ。
実は、波にはその伝わりかたから、縦波、横波というものがあるんですよ。その違いは波の進行方向、伝播する方向において、振動する方向の違いで表されます。
縦波(たてなみ_longitudinal wave)は進行方向に対して平行である波を言います。
「進行方向?平行?」なっちゃんさん、ちょっとイメージしにくいかな?
ええとこんな感じです
・縦波
進行方向→
波波波 波 波 波 波波波 波 波 波 波波波
波の振動向き ←→
このように、媒質の過密(圧力の過多)によって波が伝わっていくわけですね。
対して、横波(よこなみ_transverse wave)は進行方向に対して垂直に振動するものを言います。
図にするとこんな感じですかね?
・横波
進行方向→
波 波 波
波 波 波 波 波 波
波 波 波 波 波 波 波
波 波 波 波 波 波
波 波 波
波の振動向き ↑↓
こんな感じですね、”波”の字ずれてませんかね?ずれてたら、ごめなさい。
((PC推奨です))
ちなみに、光は横波ですよ。
(さらりと言ってますが、横波なのはとても奇妙な感じがするのですけども、ここでは流しますね)
このように、縦波で振動が伝わる媒質、つまり圧力の変化が容易な場なら、力が伝わるわけですね、音の波、が伝わる理屈はこんなところなのですよ。
「あれ?柔らかい物質なら横波で伝わるのでしたら、水も横波なんですか?」
水中ではそうですね。振動が音となって伝わるのですから、ある程度早く圧力が変化する媒質なら音は伝わります。ただ、水面は前にも話しました水素結合とかの絡みでその振る舞いがちょっとおかしいですが。
「おかしいんですか」
変態的と言ってもいいかもしれませんね。イメージとしては特殊な水商売のオネーさん(もしかしたらおにーさん)を思い浮かべれば、
「ええと?」首をひねっているゆーき君が、相変わらず可愛いですね。商売の内容について詳しく説明しましょうか?
「せんでいいわ!」おおふ、なんだか久方ぶりになっちゃんさんのツッコミ(物理属性)を受けた気がします。
ちなみに水が変態的な振る舞いをするという原因の1つに、くだんの水素結合が関わってくるわけですね。共有結合に加えて、水素結合による強く引っ張られていることによる振る舞いと、結合の形が他の分子と違う?ので、いろいろ変態的な振る舞いをするのだそうですよ?
「なぜ伝聞系の上に疑問系?」まあ、色々あるんですよ、大人の社会にはね。
ええと、何の話をしていたのでしたっけかね?
「光が波の性質を持っているというお話でした」その通りです、ゆーき君。そして同時に粒子としての性質も持っているというお話でしたね。前に話した光電効果のくだりです、覚えていますか?
「光が波?の性質を持っているということはわかりましたけど、じゃあ、その波を伝えているもの(媒質)は何なんですか?」いい質問ですなっちゃんさん。
ひと昔前はエーテルとかいう物質が空間を満たしていると、過程されていたそうですよ。そもそもの語源は大昔の哲学者アリストテレスさんが言い出したものらしく、ええと彼はそもそも4大元素で世界は作られていると言っていた人でしてね。
4大元素とは、火と風と水と土のことです。
「なんだかゲームの設定みたいです(^ ^)」ワクワクする気持ちはよくわかります。おそらく魔法とかの発想がこの辺りから来ているような気がしますね。
で、その4元素によって世界の物質が作られていると、考えた学説?なんですね。この説結構長いあいだ市民権を得てまして、ええとアリストテレスさんの師匠筋であるところのエンペドクレスさん
が言い始めて、2000年くらい?定説だったそうですよ。ちなみに、アリストテレスの直接の師匠はプラトンという哲学者ですが。
それでですね地上世界の物質を形づくるのが、その4大元素であるという一方で、天上にある世界は第5元素が構成すると考えたんですね、天上とは特別な場所というイメージがあったからでしょうねー。でこの第5元素をエーテルと呼んだそうです。このエーテル、語源は古代言語から来てまして、決して暗くならない輝きとか、変わらない吸引力とかいう意味らしいですよ?
「えーと、若干嘘が混じっているような気がします?」
そうですね、後半は”ダイソンならね”という語源でしたっけか?
「ダイソン?」首をひねるなっちゃんさんですね。
「昔そいうゆうメーカーがあったのよ」おかーさん、さすが古い知識は知っていますね、うわ、いやさりげなく視線に殺気を込めないでいただきたい。
「どうして、わざわざ地雷を踏みに行くかナ」リカルドくん、何故ならば、それがシュチュエーション的に、美味しいからです。
「芸人根性ですね」ゆーきくんに感心された、嬉しいなぁ。
「ダイソンなら今でもありますよ」そうなんですか宇喜多会長。「確か、発動機メーカに転身しているはず?いや家電部門もあったような?ありますよね?」誰に聞いているんです?
それにしても、結構伝統的、老舗な企業なんですね。
それはともかく、エーテルです。これが空間に満ちてるので光の波動が伝わったと考えれていたんですよ。最初は。でもですね、これがまたエーテルが存在すると考えるといろいろと矛盾点が多く出ましてね。
「ほう?( ? _ ? )」
空間に充満しているのなら、惑星やら巨大質量の振る舞いがそれに影響されるはずなのに、それが観測できない、とか。
光が横波と考えるとその光が折れ曲がったり干渉したりすることが説明できるのだけども、そもそも横波が発生するほと強固にエーテルどうしが繋がっているのと考えるには、無理があるとか。そんなに硬かったら、用意に観察できるはずですから。
光行差の問題もありますね。
「光行差?」
それはですね、今君たちは、結構早い速度で走る乗り物に乗っています。その状態で天上から垂直に水が降ってきます。乗り物に乗っている君たちにとって、その水は乗り物の進行方こうに対して、後ろ側に斜めに流れていくように見えますね?
「ええと、はいそうですね」
その水が光に置き換わったバージョンの話しです。ジェームズ・ブラッドリーという天文学者さんがいました、アインシュタイン以前、200年くらい前の方ですね。この方、惑星上から真上に観測できる”星”を1年通して見続けたんですね。ちょっと特殊な光学望遠鏡を使用しました。
詳しくは『ジェームス・ブラッドリー 望遠鏡』 で検索してみてください。
「ええと?」
惑星という概念はわかりますよね?主星の周囲を周回する星のことです。主星を周回することを公転と言いますが、これ、惑星上に存在した時代、観測点が移動する速度のうち最速だったんですね。
「最速だと何か良いのですか?」
つまり乗り物の速さが速いと、水のながれも斜めに見えるということです、あー、つまりですね、光ってとっても速いじゃないですか、その速い光が斜めに見えるには、乗り物もかなり速く走らないといけないんですね、で、この時代一番速く動くものが惑星の公転速度だったということなんですよ。
「いかほどで?」
ざっと、秒速30㎞ぐらいですかね?光の速さが、およそ秒速30万㎞ですから、だいたい、光の速さの1/10,000ですね。
「結構遅いんですね´д` ;」まあ、自然現象ですから。いろいろ仕掛けとかはしていませんし。
で、ですね、結構速く動く観測地点で、そこそこ遠くの星を観測した結果、動かないはずの星が動いていたことが、1年を通して判明したんですよ、ええと、1年というのは、惑星の公転周期で1回転したことを言いましたので、1回、公転するうちに、その星に往復運動が見られたと。
「そこそこ遠くって?」
ざっと、154光年?光の速さで154年かかる距離の星ですね。名称はりゅう座γ星といったそうですよ。
「「「「へえ」」」」
でこの見え方から、光もまた観測するものが移動すると、斜めに見える=実際の位置よりずれて見えるということがわかったんですね、これを光行差と言います。
それでですね、この光行差、エーテルがあると考えるとおかしいのですよ。公転することによってエーテルがかき回されているはずなのに、それの影響を全く受けないで、光が斜めに見えているという現実がそぐわないのです。しかしですね、他の説明がうまくいかないのでエーテル存在説はもう少し幅を利かせます。
つまりですね。
光『ねえあんた、いつまでも夢ばかり追いかけてなくて現実(光行差, etc.)を見てよ』
エーテル『うるせい、俺には才能があるはずなんだ、世間(物理法則)の方が俺について行ってないんだよ』
光『バカ、あんたには才能なんとひとかけらもなんだよ、でも悔しい、捨てられないのよー』
エーテル『そんなことはねえ!いつか見てやがれ!』
といった感じでしょうか?
「今度はだめ人間に引っかかった女性風!!」いいツッコミですなっちゃんさん。
まあ、実際のところエーテルの存在そのものは否定しきれていないので、こういう感じになるんですが。
「「「あるの?!!」」」
はい、単純なガスとしてのエーテルは無いようですが、空間そのものがエーテルであるとか、場として存在するとか、そんな感じでエーテルさんはまだまだ健在なのですね。
まあ、単純に光の媒質としてガスみたいなエーテルが存在するとは言えないのは確かですが。
そしてですね、このような光の性質をうまく説明するものとして、量子力学が登場したようなわけなんですよ。
「あ、量子力学に戻ってきました」ゆーきくんその通りです。
では、次回はもう少し量子力学っぽい内容に入りますね。
「「「あー続くんだ」」」
続きます。




