01-魔法少年の呆然
光輝くような美少年が一人いると想像して下さい。比喩ですか?いいえ、本当に、後光が指しているようなエフェクトが彼には、かかっています。半ズボンの10歳くらい、可愛らしい容姿でちょっと目には女の子にも見える、華奢な肢体です。髪の色は黒色で、人種的には日本人ですが、さらさらの髪質と、すーと通った目鼻立ちが、どこか、現実離れした妖精のような、雰囲気をかもしだしています。テレビの中にいる、アイドルが裸足で逃げ出すナウ、なルックスです。
そして、その少年には違和感あるアイテムがいくつか、装備されています。
その細く白い腕には大きな大砲?のようなものが両手で構えられています。ちょっと無骨ですが、色合いは白色やら、桃色やらカラフルで、ファンシーです。天使の羽根を模した飾りが、プリティでもあります。
服装は、ひらひらとした、レースとかを、ふんだんにつかっています。ちょっと見露出は少なそうにみえますが、際どいところまで半透明な布を、重ね合わせているのでその、ちらりとのぞく肌が、ちょっとセクシーです。繰り返し言いますが、少年です。
どうにも現代日本で着こなすには、特定の趣味の方々が、年に二回ほどあるお祭りで、着こなすファッションよりの特殊な服、平たくいいますと美少女魔法使いのコスプレっぽい服装です。かさねていいます、彼は少年です。
二次性徴もしていなくて、喉に撒いている緋色のチョーカーがちょっと可愛らしくて、ちょっとながめの黒髪を羽根をモチーフにした髪留めでまとめていますし、緊張と、恥ずかしさからかちょっと涙目?でうるうるしている目も大きいし、睫毛もながいし、頬もちょっと赤くて、上目遣いで、桜色の唇にはグロスをつけているかのように、ぷりぷりです。再度、念のために繰り返します、この子は、おとこのこです。
美少年の前に立っているお方もちょっと、違和感溢れるお方です。
身の丈は、5mほど。均整のとれた、大人の女性のプロポーションを身体にぴっちりとした、黒い紐?帯のようなもので包んでいます。こちらは、大人の魅力たっぷり、セクシーなおねーさんといった感じです。少年の顔が少し赤いのは、こういうせくちーなおとなのおねーさん、を目の前にしているからかもしれません。
冷たい印象を与える顔立ちですが、色が真っ黒、白目であるはずのところも黒いです、なことを省けばなんとも美しい、引き込まれるような容姿をしています。ただ、今は、なんだか困惑な表情を浮かべていますが。
美少年の後ろには、これまた、現実ではあり得ない衣装のような方々がおりまして、ドレスふりふりのお姫様、これは少し少年より年長さんで、金髪美少女さん。
きりっとした感じの銀色の鎧と同色の髪と瞳の女騎士さん。銀色の鎧の露出は少ないです。
三角帽子に箒を手にした、これまた美人の魔法使い。ええとこのかたは、露出が結構大胆です。胸元開いたローブ?がセクシーな大人のおネーサンですが、ちょっと、相対する大きな黒いおねーさんに対抗して、ちょっと色っぽいポーズとかとっていますね。
彼女たちがいる、場所もまた現実の日本では、ちょっとした遊園地とかの3Dアトラクションでしたみられないような、もしくはフルCGの映画、ゲームの一場面のような、そんなところです。
何で作られているのか材質不明の、妙な光沢のある石畳に、ギリシャ神話にでてくるような石柱が周囲に立っています。ただ、それらの柱が支えている天井は見えず、かわりにあるのが、星々輝く大宇宙という景色です。流れ星が定期的に落ちていっています。
「ええと?よくぞ来た勇者一行よ……でいいんですよね?」ちょっと首をかしげながら尋ねる、黒い巨人の女の人。
「はい、始めまして、ええとあなたが邪神さんですか?」ぺこりと一礼しながら答える少年さんです。
「邪神……(遠い目をする大きな美人さんです)。わたしだって好きでそういうのやってるわけじゃないんですよね、あまり面と向かってそういうふうに言われると……」ちょっと涙目な巨人のおねーさん。
「あわわわ、すいません、そうですよね、誰だって嫌ですよね、そういうふうに悪く言われるのって」ひどく慌てて、慰める勇者ちゃんです。
「わたしのことは、もっとこうフレンドリーに、はーちゃんとか呼んでくれると嬉しいです」語尾にハートマークが見えます。
「はーちゃん?」
「『破壊と混乱と悪徳の化身、相対するものの希望をすべて吸い取り、我がものにして、絶望しか残さない、最強最悪な存在として降臨する邪神の中の、邪神』じゃあ、あまりにも長くて、いかめしいのですもの」ちょっと照れながら、もじもじしながら言い放っているわけですが。
「……ふざけんじゃにわよこの〇〇○(教育上不適切な文句が続きます、内容的には、せくちーな体つきで、でうちの子をゆうわくしていることに対しての遺憾の意が表明されています、が、お姫様、言葉使いが悪うございますよ)」
「なによこの発育不良の二次性徴のできていない小娘が!わたしなんて彼に〇〇○や×××(これまた教育上不適切な表現が続きます……内容は、大人の人に慎重に聞いてみて下さい、状況しだいでは真っ赤な顔をして、どこでそんな言葉覚えてきたの!と詰め寄られるかもしれません……うん、エロいですねはーちゃん。呼び方が定着しそう)だってできるのよ!」
「そのくらいわたしだってできるもの」真っ赤になる姫様。
「おこちゃまが何をいってるの」上から目線のにはーちゃん(呼び方、定着済み)です。
「そうよ、そういうのはサイズも経験もバッチしなワタクシに任されるのがいいのよ」どさくさにまぎれて、少年勇者にしなだれかかっているのは、豊満な肉体をアッピールしている魔法使いのおネーサンです。あたってますね、何か。少年勇者君、顔が真っ赤です。
「「みみどしまはだまっていろ、あと離れろ!」」ユニゾンで吠えるはーちゃんと姫様です。
「話が進まない……ちょっと落ち着けお前ら。あとユーキが困っているぞ?」すでに剣をさやに収めて、軽やかな身のこなしでちょいっと、少年を魔法使いから離す、女騎士。少年勇者のユーキ君は、ちょっと怯えた目をして、その騎士さんの後ろに隠れます。
「レイナおねーちゃん、この人たちやっぱりちょっと怖い……」小さな声囁くような、しかし良く通る、声変わり前の奇麗なソプラノです。そのように、さえずる美少年、それにくわえて、涙目の上目遣いというコンボに理性を半ば失いそうになる騎士のおねーさんです(お前もか)。
「……大丈夫だ、私が貴男をまもるから(一生涯)」ぎりぎり耐えています。顔は赤いですが。あと最後の()内のセリフは誰にも聞こえていません。
「うん、レイナさんありがとう、大好き。でも、僕、ゆーしゃなんだから、少しは頼ってね」にっこりと笑う美少年と、嬉しさで顔面が笑みで崩れそうになる女騎士さん、フェイスガードを降ろして、照れ隠しです。
「あー!なんでいつもいいとこ持っていくのよあんた、だいたいあなた、私の騎士でしょう!」怒ってしまいました、姫様。
「すいません姫様、この戦いが終わった後、大事なお話をさせてください」
「近衛騎士隊長やめて、勇者さまと共に去るる気まんまんだよこの人!」姫様、ツッコミキャラだったのですね……。
「ええとね、たしかに本とかでしか知らないけどね、一生懸命するから、気持ちよくするから、ね、捨てないで欲しいの……」前の話題を引きずっている、暗い表情の女魔法使いさんです。
「貴女重いの!というか色々こじらせているの、そしてなにより、凄く痛いのよ!」叫びっぱなしですねお姫様。
「ガーベラさん、頭が良くて、色々な事を教えてくれていつもありがとう。時々何を言っているかよくわからないことがあるけど、僕も一生懸命勉強して分かるようになるから、僕の方こそ見捨てずにまた教えて欲しいな」暗く落ち込んでいる魔法使いを励ますように、女騎士の影から出て、励ます少年勇者のユーキ君。
「本当?じゃあ今夜、二人っきりで、色々なコトを教えてあげる」ぱあっと明るい顔になるガーベラさん。
「?皆と一緒じゃだめなの」無垢な笑顔ってそれだけで凶器だと思います。
「!!最初から複数人とか!、上級者向けなのね!?」
「おいこらちょっとまて」「ええとユーキがそれのほうがいいなら……」「こらまて姫様」
「わたし無視されていませんか?ええとおーい、破壊神さんが目の前にいますよー」
「ごめんなさい、いつもなんだかこうなっちゃうんです……僕は一生懸命世界を救うために真面目にやりたいのに……。しっかりしないと、って毎回思うんだけど……なぜだかいつも話が明後日の方向へあるきだしてしまうんです」しょんぼりとした表情の少年です。
「ゆうしゃ君は悪くないですよ、これは主に周りの大人が行けませんね、悪影響を受ける前に、早めに縁を断ったらどうです?いまなら、神々の園へ囲いますよ?」そこは匿うではないでしょうか?本音でてますよ、はーちゃん。
「やっぱり、わたしのユーキ君を誘惑する悪い奴、邪神の名にふさわしい、世界の敵なのね!」
「そうなんですか、フレア姫?なんだか、四天王の方々と同じように、優しくて、話せば分かるような、優しいお姉さんに思えますけど?」
「あー、私がスカウトして、こっち側の陣営に、転がした四天王たちね、彼女たち元気してる?」
「はい、きっちり力から解放させてもらって、今では、とても穏やかな、いい人になっていますよ」
「そう……まあ、それなら思い残すことも無いかな?じゃあすっぱりやっていただけるかしら?」
「わかりました!じゃあ、貴女もいい人?神さま?になってもらいますね」
「正直、邪神でいることにも疲れたしー、余計な重荷から解放されるのは、望むところなのよ?まあ、少しばかり、勇者の人と、試練として戦うのも考えていたけど……」ちょっと、優しい目をするはーちゃんです。うん?と小首をかしげて天使の笑顔な美少年。目が合って、顔が赤くなります。
「……戦闘意欲をそぐとう点で、既に攻略済みなのですよね」はーちゃんがそうのたまいます。
「ちょろいよ邪神……」騎士のレイナさん、誰にも聞こえないツッコミをいれます。
「ちょっと、なんで毎回ライバルが増えるのよ!」邪神が最終戦闘を放棄したことに対してはなんら疑問には思わない、フレア姫です。
「……ええと、十人以上?あ、最初はパーティメンバーだけでするとして、四人……」そこ、分厚い本を開いて、何を調べているのですが、ガーベラさん。
……いえ答えないでいいです。書けませんから。
「ではいきます、武装解放転身無双愛神顕現!『かいしんのいちげき』!」くるりくるりと、ユーキ君の周囲がひかり輝き、謎の愛エネルギーが構えている大砲に吸収されて、ピンク色の派手な光線が、はーちゃんの巨体を貫きます。また、同時に天から白い光の柱が、はーちゃんに、降り注いでいきます。
光がおさまったところには、黒い肌の裸の美少女がスラッと立っています。
「ほう、こうなるのか?どうかな。これなら、ゆーしゃ君と釣り合うのではないかね?」黒い薔薇のような笑みを浮かべる、もと邪神のはーちゃん。くるりと一回転。お尻も小さくてキュートです。ええ、勇者君は、一瞬全てを見た後、顔を真っ赤にして、後ろを向いてしまってます。
そして、そのゆーしゃ君の隙をつくように、間合いをつめて、うしろからしっとりと抱きしめるはーちゃんです。あーいろいろ当たってますね。ゆーしゃ君硬直。
ゆーしゃはいしになってしまった。
「ああ!こら!服くらいだせたでしょう!というかくっつくな!この計算ずくの〇〇○(教育的に不適切な……以下略)」姫様の罵声が星の広間に響きます。
そして、
このたび滅亡の危機に瀕していた世界は、異世界から召喚された勇者の永きによる活躍によって救われたのでありました。
***
「という夢を見たんだ」もぐもぐと朝ご飯を食べながら、ゆーき少年は、母親に言いました。ちなみにトースト派です。コーヒーは苦くて飲めないのでミルクです。
「うん、夜にベットに忍び込んだおねーさんがたの様子をもう少し詳しく聞かせてくれるかな?」小柄でエネルギッシュなお母さんが、メモを片手に尋ねてきます。彼女は朝コーヒしか飲みませんというか、これから寝るところだそうです。
「ええと?いいけど?あのね」以下意味が分かるひとにとってはご褒美の描写が続きますが、勇者ユーキにはよくわからなかったらしいです。
一言だけ付け加えるならば、いまだ勇者ユーキはかろうじて清い身体です。
ちなみにゆーき君のお母さんは漫画家です。でもゆーき君はおかーさんの漫画をまだ見たことがありません。まだ早いですよ、とお父さんにとめられているからです。なんとなく理由が分かる(肌色成分が多いイラストをちらっと見たことがあります)ゆーき君です。でも同じく母親が書いている、少年達しかでてこない漫画も読んじゃだめというか、むしろこっちのほうが駄目?というのはちょっとよくわからないです。
クラスの子にも聞いてみようかな?めいこちゃん、漫画に詳しいっていってたっけ?
めいこちゃんっていうのは、算数も得意な女の子で、よく趣味で難しい”かけ算”をしているそうです。
……ゆーき君、悪いことは言いません、その子だけには少年たちしかでてこない漫画のことを尋ねるのはやめておいた方がいいと思います。
「それにしても凄い大砲?武器だったんだね、ええと『ゆうきりんりんりんりきてい』」?」
「全然違うよ、いい、こうだよ!」食事がおわって、リビングでちょっとポーズをとるユーキ君です。
「武装解放転身無双愛神顕現!」
ユーキ君がそう唱えると、日本の一般家庭、一戸建てちょい広めのリビングに光が乱舞します。エフェクトで肝心なところ見えませんが、一度ゆーき少年の服装が奇麗に消え、白い華奢な肢体が見え隠れ、周囲を桃色のリボンのようなものが舞い、しゅっと、身体に巻き付いていきます。すると、なんということでしょう、そこには、白とピンクを基調とした、可愛らしい衣装を来た、半ズボンの美少年が立っていて、手には、可愛らしくも凶悪な、太い大砲?のような武器を構えていたのです。
表情はなんか虚ろです。あ、ゆっくりと、首を動かして、母親の方を見ました。
「あらまあ、可愛い。ちょっと写真とらせてね」ぱたぱたと、ゴツいカメラを持ってきて、いくつかの角度で撮影し始めます。
動じない母上さまでございました。
呆然とリビングに立つ、ゆーき君です。
お話は、このあたりで、次回へと続きます。




