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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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同職

 28


「ええい、アリーンは何をしているっ!」

 アエイウは予想以上の強さに焦っていた。

 エミリーは魔法筒(マジックシリンダー)の用意にもたもたしているのが容易に分かった。アエイウはそもそも遠距離特化のエミリーに期待していない。ミキヨシはエミリーびいきが甚だしく、襲いかかるモッコスの攻撃からエミリーを守ろうとしているのが目に見えていた。

 だからこそアエイウはアリーンに期待していたのだが、そのアリーンも見事にモココルに止められていた。

 鉄錘〔修復のタン〕、短突剣〔破壊のバリン〕、小丸鋸〔問答無用のブッチ〕、短剣〔恩着せがましいギリー〕、仕込針〔針千本のマス〕、アリーンは自分の武器を確認する。

 それらはどれもかつてPK(プレイヤーキラー)だったときの殺しやすさを優先したもので、臨機応変に戦えるとは言いがたいものだ。

 対するモココルは狩士の万能さを体現していると言わざるを得ない武器の多様性があった。

 アリーンが鉄錘(アイアンメイス)短突剣(ショートレイピア)を握り締めると、モココルは瞬時に【収納(ポケト)】で射程の長い鋼鉄槍〔警戒するバンガッド〕に切り換え、突きを放つ。

 (ポール)穂先(スピアーヘッド)、握り紐しかない槍とは違い、鋼鉄槍(アイアンランス)には護拳(バンプレート)が存在していた。

 しかも槍の(ポール)のほとんどが木であるのに対して鋼鉄槍(アイアンランス)(ポール)穂先(スピアーヘッド)護拳(バンプレート)全てが鉄でできていた。その分、槍よりも重いが頑丈さが段違いだ。

 熟練者ならば槍の穂先(スピアーヘッド)を避けて(ポール)を斬ったり、穂先(スピアーヘッド)を盾で受け止め勢いで(ポール)を折ることもできる。しかし鋼鉄槍(アイアンランス)ではそれも難しい。ゆえに厄介。

 アリーンはその厄介さを理解しているからこそ容易に近寄れない。

 体勢を整えるために後退すると、モココルは瞬時に武器を切り換える。

 モココルが取り出したのは拳銃〔一発必中のハズレ〕と連射銃〔全弾不発のアタリ〕。

 左手に構えた連射銃〔全弾不発のアタリ〕を乱射。アリーンがそれを回避するが、避けられることを前提に無駄撃ちしていたモココルの本命は拳銃〔一発必中のハズレ〕。

 モココルは回避したアリーンの膝を的確に打ち抜く。

 かに思えた刹那、アリーンは全身に準備していた仕込針〔針千本のマス〕を掃射。細々とした針が全身を覆うように発射し、拳銃(ハンドガン)から放たれた銃弾の軌道をずらす。本来は奇襲用である仕込針(クローズド・ニードル)を銃弾から避けるために使ったがアリーンだったが、もったいないとは思いもしない。それよりも傷を負うほうが痛手だった。

 銃や弓の弱点は装填数がなくなれば補充しなければならない。こうしてアリーンから手が放せない状況、隙が作れない状況ではその補充もままならない。それを待つのも手だがアリーンの仕込針(クローズド・ニードル)も仕込む必要があるので使えてあと一回。拳銃(ハンドガン)の装填数を考えても、それでは防御しきれない。

 だからこそアリーンは詰め寄る。

 丸鋸〔問答無用のブッチ〕を片手に詰め寄るとやはりモココルは鋼鉄槍〔警戒するバンガッド〕に切り換え突進。

 アリーンは気にせず、丸鋸(ソー)をぶつける。瞬間、丸鋸(ソー)の刃が回転を始め、鋼鉄槍(アイアンランス)にぶつかる。モココルの突進によって生まれた推進力を逆に利用して鋼鉄槍(アイアンランス)を穂先から裂いていく。相性が悪いと判断したモココルは瞬時に鋼鉄槍(アイアンランス)を放棄。

 【収納(ポケト)】を使って取り出したのはふたつの剣。穴柄頭刃剣〔斬髪屋キリー〕と穴柄頭刃剣〔散髪屋サーキ〕。

 穴柄頭(ホールポンメル)という腕が通るほど大きい穴の空いた柄頭(ホールポンメル)を握るモココルは穴柄頭刃剣〔斬髪屋キリー〕の少し上、剣身で言うところの刃区(ショルダー)にある凹型のくぼみに、穴柄頭刃剣〔散髪屋サーキ〕にある凸型のくぼみを組み合わせる。

 交差するようにふたつを合わせると刃区(ショルダー)にある凹凸のくぼみが合致。ふたつの穴柄頭(ホールポンメル)を握り締めて内、外と交互に動かすと刃区(ショルダー)を中心にしてふたつの交差した刃が動き出す。

 大鋏〔切り裂くジャック兄弟〕へと変形したふたつの穴柄頭刃剣(ホールソード)が丸鋸〔問答無用のブッチ〕を切断する。押す力のほうが力を込めやすいがために、それを利用した鋏はある程度力任せに挟んだ物体を切断することが可能だった。

 お互いがお互いの武器を潰しあう、それが圧倒的な武器を持たない狩士同士の戦いだった。

 それでも俄然、膠着状態は変わらない。

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