表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tenth  作者: 大友 鎬
異章(3)
893/894

ほら、呼び声が聞こえる

 ***


「おめでとうございます。十個の宝石を集めた冒険者はできうる限りのあらゆる願いを叶えることができます」

 白い部屋――いや白い空間かもしれない。壁も境界もどこにあるか分からない。永遠に白い世界が続いている。

 そんな中で声だけが聞こえた。

「私は死んだはずじゃ……」

「確かにあなたは死にましたが、肉体か精神、どちらかがたどり着けば問題ありません」

 アリテイシアの肉体はどこも損傷なく、生前の姿のままだった。

「けど、そんな状況で願いなんて――」

 そこでアリテイシアは少し押し黙って考える。

「レシュは何を願ったの?」

「あなたの再生です。生き返らせようとしました」

「可能なの?」

「不可能です。あなたの魂がセフィロトの樹に定着しましたから」

「じゃあここにいる私は何なの?」

「仮に今目覚めれば、他の死者と同様、セフィロトの樹にて魂として目覚めるでしょう。その感覚は' 'たちには分かりませんが」

「夢の中とでも思っていたほうがよさそうね」

「ええ。ですが何の中であれ、願いは叶えてもらう必要があります」

「私を生き返らせようとしたレシュリーは結局、何を願ったの?」

 その問いかけに' 'たちはレシュリーに説明したことをアリテイシアにも説明する。

「なるほどね。じゃあ私を生き返らせるな、と私が願ったらどうなるの?」

「それも不可能です。レシュリーの願いは聞き入れましたから、レシュリーが試練に合格した時点で、あなたは他のアリテイシアの肉体を使って――言葉的には生き返ります」

「結局、レシュのわがままで私は生き返ってしまう可能性があるのね」

「生き返りたくないのですか」

「私は私のわがままで自ら命を絶ったの。絶望して。生きたくないって思ったの。なのにレシュはふたりで生きたいからって生き返らせようとしてる。私のわがままを自分のわがままで塗りつぶそうとしてる」

「気に食わないのですね」

 アリテイシアの胸中を見透かしてか、' 'たちは言う。

 少しそこに人間味を感じてアリテイシアは微笑んだ。

「あーあ、なんか台無しにしてやろうかしら」

 レシュリーのわがままに付き合わされるのは、' 'たちが言ったように少し気に食わない。

 そう思えばこそ、別のレシュリーやアリテイシアに肩入れしてもいいのではないだろうか、とも思ったのだ。

「私が自ら命を絶ったのはね、たぶん仲間が少なかったの。弟子も死んだし。悪女呼ばわりされて精神的にどうにかなりそうだった。なのに母さんもあんなふうに生かされてるのを知ってしまった。それが全部負担になって耐えきれなくなったの」

 誰にも言えなかった心情を今だからアリテイシアは吐露していた。

「だからもう少し支えてくれる仲間がいたら――私はあんな目に遭っていた母さんに会っても、強くいられたのかもしれない」

 いつの間にかアリテイシアの目には涙が浮かんでいた。

 その涙をアリテイシアは拭って、強く頷く。

「決めた私の願いは――声を届けることにするわ。たぶん、他のアリテイシアやレシュリーも災難な目に会うと思う。それを切り抜けるための言葉を、私は届ける」

「なるほどです。具体的にどこにしますか」

「まずは四人の黒騎士と戦う手段を――。あの戦いで冒険者問わずたくさん死んだ。だからあの戦いをなんとかしないと私は耐えれない。だから、それを乗り越えれる可能性がある冒険者を誘導したいの。それと次に、と言ってもそんなに多く要求してもダメだと思うから次が最後、別のレシュリーがレシュに命を奪われそうになったとき、私の声を届けれるようにして」

「その願いを叶えることは可能ですが……」

「何よ?」

「その願い。特に最初の四人の黒騎士と戦う手段に関しては、ヒントを届けることでレシュリーが試練を行える可能性もぐっと高まりますよ」

「確かにそれはあるけど、別の私とレシュリーが、レシュに立ちはだかってもらわないと困るの。そうしないとレシュのわがままに対する最高の仕返しができないわ」

「くっくっく……」

 おかしくて' 'たちも笑ってしまう。

 仕返しのために願いを使うのが、人間らしくて可愛らしくもあった。

「だからね、ほら、私が呼ぶ声を届けて」


 ***


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ