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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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食堂

 24


「一応、助けてもらったから言いたくないけど礼を言うよ。ありがと、レシュリー・ライヴ」

 試合終了後、通路でリーネがそう言ってきた。

「それと私が本来ああいう性格だって他のやつに喋ったらブチ殺すから」

 そのあと耳元でそう囁いてきて、思わず苦笑する。

「言わないよ」

 そう約束するとリーネは安心したように胸をなでおろす。

「次の試合は準決勝。ご飯休憩が終わってから開始だよー!」

 リーネとのやりとりが終わった頃、全試合が終了したのか、総合司会のテンテンの報せが聞こえてきた。

 掲示板に勝敗とともにいつから次の試合が始まるか時間が提示される。

 掲示板に近づき、まずは次の試合までの時間を確認する。

 次の試合は三時間後。全力を尽くしてもらうための配慮だろう。

 それだけあれば激戦を繰り広げていたいたとしても回復できる。


A組第二回戦第一試合

レシュリー・ライヴ(退)、アリテイシア・マーティン(退)、コジロウ・イサキ(残)、シュキア・ナイトアト(残)

勝利(2)V.S.敗北

ジネーゼ・ジ・ジジワルゾ(退)、リーネ・アクア・ク・アク(退)、シッタ・ナメズリー(負)、フィスレ・ウインドミル(負)


 僕たちの試合結果など見る必要がないが、それでもとりあえず確認して、次の僕たちの対戦相手は誰だろう、と視線をずらす。


A組第二回戦第二試合

パレコ・プキージ(負)、ミハエラ・カーブ(負)、キューテン・チョッカ(退)、センエン・ヤルヨイ(退)

敗北V.S.勝利(2)

グラウス・ルシアンドール(退)、マリアン・レイクドール(退)、ルクス・ブラックオード(残)、マイカ・ルクホワイト(残)


 パレコ・プキージという名が知れているらしい冒険者組を打ち砕いたのはあの執事とメイドがいる組だ。的狩の塔(ハンティングタワー)順位はパレコが七位でグラウス組は九位だが、グラウス組の実力はパレコ組以上だったのか、何か仕掛けでもあったのか。

 警戒は必要だった。


B組第二回戦第一試合

ルルルカ・アウレカ(退)、アルルカ・アウレカ(残)、モココル・ファンデ(残)、モッコス・モッコス(負)

勝利(2)V.S.敗北

アロンド・ホーム(退)、ミチガ・エル(退)、ヨミガ・エル(退)、ヒックリカ・エル(退)


 むしろに驚くべき展開はこの試合かもしれない。的狩の塔(ハンティングタワー)順位十三位の組が五位のアロンド組を倒し、見事準決勝に進んでいる。

 もしかしたら的狩の塔(ハンティングタワー)は要領や戦術を確認する試練であって、必ずしもその順位=実力ではないのかもしれない。この結果はそれを現しているような気がした。


B組第二回戦第二試合

グレグレス・フィッシャー(死)、ギンヂ・トミサカ(死)、ファグゾ・ジデゾロ(死)、シジマツ・ソライロ(死)

敗北V.S.勝利(1)

アエイウ・エオアオ(残)、エミリー・サテライト(退)、アリーン・ジェノバ・リーグ(退)、ミキヨシ・ホクト(退)


 ここは何も言うまい。僕が見捨てたグレグレスやそのチームメイトはアエイウたったひとりよって殺されている。セリージュの仲間の復讐を代わりにやった、とでも言うべき結果だ。

「闘技場からは出られないみたいだけど食堂はあるみたいだし、ご飯にしましょ」

 試合結果を見る僕へとアリーが話しかけてきた。グレグレスの件は結果を見て、うじうじしていても意味がないとでも言いたいのだろう。

「行こう」

 僕はアリーの提案に乗って歩き出す。

「シュキアはどうする?」

「あちきは少し用事があるから三人で行ってきなよっ」

「分かった」

 用事を尋ねるのも失礼なような気がしたので僕たちは食堂へと向かう。


 ***


「なんじゃんよ、くそっ!」

 食堂に向かうと食堂の扉からジネーゼが出てくる。

「どうしたの?」

「ああ、レシュリーじゃんか」

 ジネーゼがさらりと僕の名を呼ぶ。リーネを助けたことで、僕に対するとげとげしさというか、むき出しの敵意が収まっているようだった。

「ここはダメじゃん、ダメダメじゃん。人が多すぎて席がないじゃんよ!」

「食堂はふたつあるはずよね。どうしてこっちにばっかり?」

 アリーが疑問に思ったのか尋ねる。

「あっちはあれがいるから」

 リーネがそれに答えたあと、「小さくマジ死ねばいいのに」と呟いた。それだけで答えが出る。

 もうひとつの食堂にはアエイウが居て、女性ならナンパされるので落ち着いて食べれず、男ならアエイウが問答無用に邪険にしてくるのでこっちに詰めかけているのだろう。

「どうする?」

「あっちに行きましょう」

 アリーが言う。

「でも……アエイウがいるらしいけど」

「それで? あんたがどうせ守ってくれるんでしょ?」

 アリーはあたかも当たり前のようにそう言った。

「あっ、当たり前だよ」

 恥ずかしかったけれど照れ隠しのように僕は強く頷いて、アリーの前に出る。

「これはアリーに一本とられたでござるな、レシュ殿」

 コジロウが微笑む。僕の照れ隠しはたやすく見破られた。

「くだらないラブコメはともかく、わたしたちはどうする、ジネーゼ?」

「ついていってみるじゃん。こんなぎゅうぎゅう詰めの食堂よりもマシじゃんよ」

 後ろからそんな会話が聞こえてくる。会話からリーネとジネーゼがついてくるみたいだったけれど、拒む理由もないので、何も言わず、僕は先頭に立ってもうひとつの食堂を目指した。

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