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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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本性

 23


「どういうこと?」

 僕は唖然とし、ジネーゼを見た。

「はは、これがリーネの裏の顔じゃん。陰じゃ悪口ばっかり言ってるじゃん。死にかけた腹いせで今は表にご光臨しちゃってるじゃんよ!」

 面白いのかジネーゼが笑うとそれを見て、またリーネが悪態を吐く。

「いやいや笑ってないで反省しろっつーの! あーくそ、ほんと、もう最悪」

 僕は状況についていけない。それに気づいてジネーゼは言う。

「ジブンがリーネと旅を続けてるのは毒を研究しているからじゃん。言葉の暴力も立派な毒。ジブンはそれも研究したいからリーネと付き合ってるわけじゃん」

「はっ、何それ。あんたが使えるからわたしが付き合ってあげてるんでしょーが。誰が毒にしか興味がない女と旅ができると思ってんですか!」

「ははは。けど陰口ばっかり言ってる女と付き合えるやつもそうそういないじゃんよ」

「はぁ? 女は誰でも陰口言ってるっての。わたしだけじゃないっつの。マジアホなの?」

 ふたりのやりとりが面白くて僕もつられて笑った。なんだか良く分からないがいいコンビらしい。

 それを見たリーネがにらみつけてくる。

「まあなんにしろ、今度からは対応する解毒剤も一緒に持ち歩きなよ」

 それだけ忠告すると僕は去っていく。

「アリーも場外に出てたんだね」

「あんたがひとりだと何かがあったときに困るでしょ。余計な心配だったみたいだけど」

「ありがと」

「お礼なんていいわよ。私が勝手に判断しただけから」

 アリーが照れたようにそう言った。

「アリーはやっぱり優しいね」

 今までお世話になってきたからだろうか。そんな言葉を思わず言ってしまう。

「……何言ってんのよ、バカ」

 アリーは呆れたけど、その顔は真っ赤だった。


 ***


 レシュリーとアリーが場外でそんな話をしているさなか、試合にも変化があった。

 フィスレが突然、剣をしまったのだ。

 それを見てコジロウが攻撃の手を休め、好機と見て攻めようとするシュキアを手で制する。

「今があちきたちのチャンスだよっ!」

 なぜ止めるのか分からないと言った面持ちのシュキア。

「戦意が感じられぬ敵に攻撃するのはマナー違反でござろう」

「そうやって油断させておいて攻撃するってことも十分に考えられるんだよっ!」

「大丈夫でござる。そうでござろう、フィスレ殿」

「ええ、その通りです。審判、私は降参です」

 フィスレが降参を宣言したところで試合が終わる。

「どうしてっ?」

 シュキアが疑問の声をあげる。フィスレはジネーゼとリーネのほうを指し、

「今は仲間であるふたりを助けてもらったから。勝ちを譲るのが筋です」

 フィスレはそれだけ伝えると、シッタをそっちのけでリーネのほうへと向かう。

「大丈夫でしたか?」

 そんな気遣いの声がシュキアを苛立たせた。

 同時にレシュリー・ライヴの試合そっちのけで人を助けるという行為にも苛立ちが募っていった。さらに言えばその身勝手な行為を許すこのチームの寛容さにも。

 なんなのだろうか、このチームは。シュキアにはわけが分からなかった。

 それでも試合とシュキアの計画は進んでいく。自分を救うために。

 レシュリーたちの後ろを歩きながらシュキアは決意を改める。

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