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tenth  作者: 大友 鎬
最終章 異世界転生させない物語
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満杯


***


「いい展開じゃあねえかよ」

 ディエゴは思わず口笛を吹く。

 復活するのがこの結界の仕様なのかどうかわからないが、ゾンビはない人間の、いや冒険者としての肉体を手に入れて黒騎士キングは復活していた。

 それはディエゴにとってはある意味で本望。

 ゾンビの黒騎士キングを倒す、というのは物足りなさがあった。

「ディレイソル、もう一回やれるか?」

「それは大丈夫(?)なんですが……速度が上がったら、追い付けませんよ?」

 トドメを刺すのはディレイソルから変更なし。黒騎士キング(ゾンビ)を【鎧通】で一度倒したのなら、もう一度同じ方法で倒せるという算段。

「シャアナも前線に出ろ。でっかい一発はいらない」

「うえっ、本当に言ってる?」

「サスガも止めるだけでいい」

「とはいえ、止まるかどうか難しいところでするな」

「やるんだよ」

「ぼくはどうします?」

「扉はシャアナの近くに。キングが来たら逃げれるようにしてやってくれ」

「了解」

 レストアは自分の強さが分かっているので、後方支援なのはわかりきっていた。

 ディエゴたちが動きを止めてから、ディレイソルが動き出すまでは護衛を担当する。

 四季が移ろい変わる前に、全てを終わらせたい。

 そんな願望を抱きながら向かってくるキングを待ち構える。

 倒したらまた復活するという可能性は否めないがそれほど強力な結界ではないというのがディエゴたちの認識で、おそらく一度の復活のみだろう。

 踏んばりどころであった。

 黒騎士キングが斬首剣〔悲願のトネイリー〕を握りしめ、疾走。

 ゾンビのときより数倍、いや数十倍速い速度でサスガの目の前に黒騎士キングは現れた。

 即座に振り下ろす。がそれにトワイライトが反応。

 「1 second」

 本来なら間に合うはずがなかった。

 けれど、緊急的対策として初回突入特典〔昔々、(ワンス・アポン・)先行く所に(アドバンス・タイム)〕で時を1秒とめて無理やり割り込んだ。

 ぎりぎりでトワイライトが聖剣〔隕鉄のルバルトハウアー〕で斬首剣〔悲願のトネイリー〕を抑え込む。

 同時に【刻下聖晶(エンシェントソング)】の聖剣技が発動。【守鎧】と同様にトワイライトの聖剣を中心に障壁を展開。

 聖剣と障壁で斬首剣を衝撃を抑え込む。

 がその斬首剣はすでにそこにはない。

 斬首剣〔悲願のトネイリー〕は黒騎士キングの周囲にある四つの【収納】のうち、右側にある【収納】に吸い込まれ、左側の【収納】から出現。

 黒騎士キングは左手で握り、間髪入れずに薙ぎ払う。

 トワイライトの介入で守られたサスガが特典〔七天罰刀(セブンディザスター)〕で防御。

 黒騎士キングは左手が利き手ではなく使い慣れてないのか少し勢いが弱かったことも功を奏して防ぐことに成功していた。

「【収納】で何してくるかわからないのは厄介でするな」

「だが、どうしようもあるまい」

「はっ、だからこそ俺とシャアナがいる」

 そう言ってディエゴは【収納】めがけて【弱火】を連打する。

「いや、それ跳ね返してくるって」

「うるせぇ。撃ちまくれ」

 ディエゴはそうとだけ言った。それでも従わなければという圧がどこか感じられる。

 意味が分からない、という表情をしたシャアナはそれでも渋々【弱火】を連射する。

 冬では体温が上昇せず条件を満たせなかったが、今はディエゴが本気で戦えると気分が高揚したようにシャアナも気分高揚にともない、体温が上昇。

 初回突入特典〔炎上勝報(オンファイア)〕の条件を満たす。

 炎属性魔法がランク5まで無詠唱可能となり、ディエゴの特典と同様に【弱火】が連射できた。

 ディエゴの【弱火】に対応すべく、黒騎士キングも【収納】した【弱火】を取り出して、ぶつけていく。

 しかしディエゴの【弱火】の収納のほうが【弱火】の放出よりも速い。

 シャアナの【弱火】は熟練度の影響でディエゴのものよりも遅いが、【弱火】の放出よりも速い。

 放出のほうが遅いのには当然、理由がある。

 【収納】できるものは、一般的に道具という大分類のものに限る。武器や防具などの大分類的には道具でそのため【収納】することが可能。

 けれど黒騎士キングの【収納】は特別製でなんでも道具とみなして収納することができる反面、道具に見做すという工程を挟んでいる。

 つまり【弱火】という魔法を【弱火】という道具に変えて収納。そして放出するときは【弱火】という道具を【弱火】という魔法に変えて放出している。

 その遅れが、【弱火】の数の差になっていく。

 結果、【弱火】という道具が放出しているにも関わらず【収納】の中に溜まっていく。

 【収納】内には同じ道具は99個しか持てない。

 100個目が入ろうとして、特別仕様の【収納】はバグった。

 本来の【収納】なら入れることができずに地面に落ちる。

 しかし収納の際に【収納】内で道具に見做すという工程を挟んでいるせいで地面に落ちずにその中で【弱火】という魔法が爆発。

 バグった【収納】の機能がおかしくなり、内臓していた99個の【弱火】という道具も魔法として爆発していく。

 四つの【収納】があれど、繋がっている先はひとつ。だからこそ斬首剣〔悲願のトネイリー〕を違う【収納】から取り出せた。

 悲運にも【収納】が爆発したタイミングで斬首剣〔悲願のトネイリー〕は中に収納されていた。

 いや悲運でも不運でもなく、個数を数えていたディエゴとトワイライトの連携の妙だろう。

 壊れた【収納】から斬首剣〔悲願のトネイリー〕はもう取り出せない。

 無手になった黒騎士キングは慌てる様子は見せなかったが、左右の【収納】に手を入れようとして、――何かを取り出そうとして取れないことに気づく。

 すかさずその状態の黒騎士キングの両手をトワイライトとサスガが抑え込む。

「やっぱりお前は俺の知ってるキングとなんか違うなぁ」

 少し息は途切れ途切れのディエゴがそう告げる。少し残念げだった。

 息が途切れ途切れなのは【弱火】は何発撃ったか分からないゆえだろう。実は入ったものもあれば外れたものもある。

 黒騎士はどこかの次元のキングの成れの果てだが、ディエゴたちが戦ったふたりのキングたちよりも未熟な時期に取り込まれたのかもしれない。

「じゃあな」

 別れの挨拶を言いながらもディエゴ自体はもう手も下さない。

 ディレイソルがここぞとばかりに動き出し、身動きの取れない黒騎士キングに向かって再び【鎧通】を突き刺した。

「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――アアァ」

 黒騎士キングは言葉にならない悲鳴を上げて、結界とともに消滅していった。

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