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tenth  作者: 大友 鎬
最終章 異世界転生させない物語
863/880

独占

***


「止めろってどうすっぺ」

 ウイエアからすればどうすればいいのか、わからない。

 ランク7未満のウイエアからすれば、得体のしれない技で、得体のしれない魔物に変身したセヴテンが襲い掛かってきているわけで。

 とりあえず傷つけないようにと【蔦地獄】による足止めを画策。

 伸びた蔓がセヴテンに絡みついてくれればよかったが、予測した発生地点を、予測よりも上回る速度で通り過ぎていく。

「うわわわわわっ!」

 【蔦地獄】が避けれ、どうすればいいのかパニックになったゆえの悲鳴ではなかった。

 突然、首根っこを掴まれ後ろに放り投げられたがゆえの悲鳴だった。

「どいてろ、下がっていろ」

「いってえっぺ」

 と受け身を取ったにも関わらず大げさに叫んでウイエアは首根っこを掴んで投げた犯人を見て、ちょっとびびった。

「んんっ?」

 ウイエアの大げさな反応に怪訝な視線を送るディエゴとウイエアの視線が合い、

「ひぃ!」

 となぜかびびって、ウイエアは地面に尻をつけたまま後ずさる。

「野営地まで下がれ。邪魔だぁ」

「手伝いは?」

 怖気づかずヴィヴィが言う。

「いらねえ。つか【蘇生(リヴァイヴ)】使って眠いくせに無理すんなぁ」

 ランク5のヴィヴィが【蘇生(リヴァイヴ)】を使えばどうなるのか、ディエゴはとっくに見抜いていた。魔力はおそらく枯渇ぎりぎりまでしかなく、ヴィヴィ本人は頭痛と眠気のダブルパンチで限界のはずだった。それでも手伝いを申し出た胆力にディエゴは感心する。

「よくやったんだから、とっととさがれぇ」

 珍しく褒めたあと、ディエゴはア・バオ・ア・クを見据える。

「行こう」

 後ろではフレアレディがシュキアを背負い、腰を抜かしたウイエアを引きずって退避を始めていた。

 途端に、何かが吹き飛びヴィヴィは思わず立ち止まって、その何かを見た。

 それは右腕だった。

 そう気づいてディエゴを見ると、確かにディエゴの右腕は吹き飛んでいた。

 まだ距離があったア・バオ・ア・クはとっくにディエゴへと接近し、止まらぬ速さで右腕を奪い取っていた。

「ハッ!」

 ディエゴは笑っていた。

 ヴィヴィはその瞬間を見れていないが、ディエゴは自ら右腕を差し出し、ア・バオ・ア・クの攻撃を防いでいた。しかも予備があるか、その右腕は再生したかのように健在していた。

「助けに来たよ」

 ディエゴにレシュリーたちが追いついてくる。ディエゴはア・バオ・ア・クの姿を見るなり先行するかたちで野営地から飛び出していた。

「いらねえ。とっとと先進め。こいつは効果が強すぎるせいで欠点として暴走するタイプの特典だ。対応方法は知っている」

「あらそう。なら任せてもいいんじゃない?」

 アリーがレシュリーと相談を始めると、その後ろに姿が見えたふたりにもこう告げる。

「トワイライトとサスガも援護はいらないぞ。俺の獲物だ」

「まだなにも言ってない」

「そう言うと思ったでするな」

 ふたりとも想像はついていたのか、手伝う気はなく言われた通り、原点草原レベル6へと向かっていく。

 緊急性が高かったこともあり、ランク7を超える冒険者がほぼ集結していたが、ディエゴの一言で先に進んでいく二人の姿を見てか、先に進んでいった。

 その間、ア・バオ・ア・クは他の冒険者を狙わなかった。いや狙えなかった。ディエゴの圧倒的強者感がそうさせただろうか。どちらかが先に仕掛けるか睨みあって動かなかった。

 レシュリーも先に行くと方針を定めたのか、この場をディエゴに託して原点草原レベル6へと進んでいく。

 そのさなか、レシュリーは振り向いて、

「キミを誘ってやっぱりよかったよ。シュキアのこと、ありがとう」

 ディエゴ、ではなくその後ろ――未だその場に留まっていたヴィヴィへとそうお礼を告げる。

「俺を挟んで惚気てんじゃねえ」

 ア・バオ・ア・クという異質な強敵がいるにも関わらず、ディエゴにはそうツッコミを入れる余裕があった。この場は任せてもいいだろう、と思えるぐらいに。

「セヴテンだったかァ……? へとへとに疲れたらどうせ解除されるんだろ。とことん付き合ってやるよォ」

 まるでその言葉を待っていたと言わんばかりにア・バオ・ア・クが動き出す。

「ハッハー!」

 とらしくなくディエゴは無邪気に笑い、衝突する。

  終極迷宮(エンドコンテンツ)に存在する都市伝説のような魔物。ディエゴが敵討ちのついでに探し求めていた魔物であった。出現率はる(ガチャ)の排出率と比べ物にならないぐらい低い。

 そんな激レアの魔物が特典での獣化とはいえ、今ここに存在している。

 ア・バオ・ア・クとの戦いをディエゴは独占したい気持ちもあったからこそ、この戦闘を引き受けていた。


***


 一方のヴィヴィはその言葉を何度も反芻して野営地へと戻り始めていた。この場に留まっていたのはディエゴに手伝いはいらないと言われたものの、まだディエゴを手伝うかどうか迷っていたからのはずだった。

 けれどそれがどうでもよくなるぐらい、レシュリーの謝礼の言葉が胸に吸い込まれた。この思い出があるうちにヴィヴィは己の欲望に従って早く眠ってしまいたかった。

 それぐらい眠気がすごい。

 今日はきっといい夢が見れそう、となぜか寝台までの足取りは軽かった。

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