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tenth  作者: 大友 鎬
最終章 異世界転生させない物語
844/880

同時

****


幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)にはいくつかの欠点が存在する。


 ひとつ、呼び出された幻身(エテリアル)の元になった冒険者は幻身(エテリアル)が他の次元に存在している間、行動不能になる。

 ひとつ、呼び出された幻身(エテリアル)が負った傷は、幻身(エテリアル)元の冒険者が受ける。

 ひとつ、呼び出された幻身(エテリアル)が存在できる時間は五分。

 ひとつ、呼び出された幻身(エテリアル)の強さは元になった冒険者の強さの半分となる。


 逆に言えば他の次元の冒険者の力を一時的に使用できるというのはそれほどまでにも絶大ともいえる。


「突破条件はなんなの?」

 ルルルカは周囲を見渡して結界が張られていることを認識。終極迷宮(エンドコンテンツ)では次の階層に行くためにそこに設定された条件をクリアする必要があるため、似たような状況だと瞬時に判断していた。

「同時撃破です」

「あいつと、あいつを?」

 一眼のガーゴイルを一瞥して、双翼のサイクロプスを一瞥。

「ええ。姉さんは一眼のガーゴイルのほうを。どちらも空を飛びますが、姉さんの武器的に一眼のガーゴイルのほうが倒しやすいです」

「分かったの。とはいえ、どっちだろうと関係ないの」

 アルルカも同じことを思ったのか、苦笑。

「最初から全力で行くの」

 呼び出された幻身(エテリアル)ルルルカ<7th>の強さは幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)の効果によって半減している。

 が、ルルルカ<3rd>にとってそれは関係ないだろう。

 彼女の持つ変質特典〔最悪な死を招く因子(インシデント)〕は自身の能力を増大させる。その特典によって、幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)の効果による能力値の半減はほぼ相殺されている。

 さらにルルルカ<3rd>の髪の毛が青白く光る。それはアルルカと同じ力を使用したことによる発光現象だった。

 この戦いでもアルルカが使用したカジバの馬鹿力。彼女もまたその力を発動。これによって幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)の効果によって半減した能力値を超える力を手に入れていた。

 ルルルカ<3rd>が使用したのを見て、アルルカもカジバの馬鹿力を発動。

 何度も酷使したため、長時間の使用はできない。

 それでも発動したのは、あと五分以内に戦いが終わるからだ。

 それは予感ではあったが、予知にも近い。カジバの馬鹿力の発動によって先見の明のような力がふたりには備わっていた。

 しかも幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)の効果でルルルカ<3rd>は五分しか存在できない。

 それは長いようで短い。

 ふたりは同時に動き出す。息もぴったりだ。

 一眼のガーゴイルと双翼のサイクロプスが飛翔。何かを感じ取ったのかそれぞれが左右に分かれる。

 それだけで同時撃破の難易度は跳ね上がっていた。阿吽を揃えて行うのならどうしても近くがいい。

 一眼のガーゴイルにはルルルカ<3rd>が双翼のサイクロプスにはアルルカが向かう。双翼のサイクロプスの双翼による飛翔能力は一眼のガーゴイルに比べると低い。アルルカが跳躍すれば十分に背中に乗れるほどに。

 乗られた違和感に気づいて双翼のサイクロプスが背中を揺らす。

 振り落とされないように必死にしがみついて魔充剣タンタタンに魔法を宿す。宿すのは【雷気刃(グロムキンジャール)】と【鎌斬嵐(テンペスタ)】。雷と風の刃を持つ魔法の二重奏。 

 そのまま、背中を切り裂いて着地。

 双翼のサイクロプスが断末魔を上げて消滅。

 一方のルルルカ<3rd>も百本の匕首を操って一眼のガーゴイルを後ろから追い詰めていく。一眼のガーゴイルは両眼ではなくなったため、視野が狭くなっていた。そのため死角が多いという新たな弱点が生まれている。

 追われている焦りからか、後ろを追っていた匕首が少なくなっていることに気づかなかった。

 十本の匕首が下へとずれて加速。一眼のガーゴイルが振り向いて後ろから迫る匕首を確認した頃にはその十本の匕首は死角外へと逃れていた。

 そしてまだ追いつかれてないことを確認した途端、一眼のガーゴイルの意識が消滅。匕首が首と心臓を的確に貫いていた。そのまま落下した一眼のガーゴイルは消滅。

 だが、同時撃破ではない。

 むしろルルルカ<3rd>もアルルカも同時撃破を狙った気配すらなかった。

 いやむしろそれこそ阿吽が揃った行動だった。

 同時撃破ではないが、倒した時間はほぼ一緒。

 ゆえに一眼のガーゴイルと双翼のサイクロプスは同時に生き返る。

「今です」「今なの」

 示し合わせたかのように声が揃う。そして武器も。

 十本の匕首が超高速で一眼のガーゴイルと双翼のサイクロプスが飛んでいく。

 一眼のガーゴイルの一眼にルルルカ<3rd>の十本の匕首が。

 双翼のサイクロプスの一眼にアルルカの十本の匕首が。

 背丈の関係で双翼のサイクロプスの一眼への距離のほうが遠い。

 それでも、その匕首は同時に一眼への突き刺さる。

 それはルルルカ<3rd>の卓越した操具技能の賜物。全てを計算したうえで速度を調節するという超高難易度の業によって繰り出された、ある意味奇跡。

 何より、次元は違えど双子だからこその感覚もあってこそだろう。

 一眼のガーゴイルも、双翼のサイクロプスも、一眼どころか頭までも粉砕され、首より下の胴体だけが残る。その胴体も同時に倒れ、同時に消滅。

 やがて、結界が天辺からゆっくりと消えていく。

「姉さん、ありがとうございます」

「また待ってるの」

「ええ、終わったら行きます」

 それは終極迷宮(エンドコンテンツ)での再会を約束した別れだった。

 幻身(エテリアル)のルルルカ<3rd>が 幻映の湖面鏡(エテリアル・ミラー)に還っていく。


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