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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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結果

 17


 意識が覚醒した瞬間、見えたのはアリーの顔だった。

 寝台で眠る僕を覗き込むようにアリーが見つめていた。

「起きるなら起きるって言いなさいよ」

 それに気づいたアリーが驚いたように顔をあげる。

「意識がないから言いようもないよ」

「なんにしろ、無事でよかったわ」

「それよりも試合は?」

 アリーが離脱し、僕も離脱したのだから心配して当然だった。

「勝ったわ。あんたの無茶が思いのほか注目を集めていから、シュキアが不意打ちでシャアナとかいう炎使いを倒したのよ。そこからは総崩れ。どうやらシャアナの魔法に頼りきりだったみたいだわ。戦術も単純。総評は攻略法が見つかれば楽だけど見つからないと苦戦するって感じね」

「なんにしろ、勝ってよかった」

「むしろあんたが無茶したのが原因よ」

「助けてと叫んだ人がいたんだ。無視はできないよ」

「確かにそうやって突っ走るのが、あんただけど……」

 何か言いたげなアリーは言葉を選ぶようにそのあと、無言になった。

「ごめん。なんとなく全ては救えないって分かってるんだ。今までもそうだったから。でもそれでも、僕は何もしないで見捨てるのだけは嫌なんだ」

「知ってるわよ。いちいち言わなくても」

 そこで会話が少し途切れた。

「で、いつまでそうやって見つめあいながら話しているでござるか」

 途端、会話が途切れるまで待っていたコジロウが嘆息しながら呟いた。

「……あんた、いつからそこにいたのよ?」

「いつからいたか言ってもいいのでござるか?」

「……言うな。何にも言うな。言ったら殺す」

 アリーは寝台から飛び降り、狩猟用刀剣ハンティングブレイドを握り締めて、コジロウへと向かう。

「無駄な殺生はいけぬでござるよ」

「口封じって目的があるなら無駄ではないわ」

「先ほどは口封じできなかったら殺すという意味合いだったでござるが?」

「どっちでもいいのよ」

「それよりも次の試合の時間でござる。急がねば失格になるでござろう?」

「元々、こいつが起きなきゃ不戦敗だったじゃない!」

 アリーが僕を指し怒鳴る。そうだったのか、だとしたら目が覚めてよかった。

 いつの間にか【収納(ポケト)】されていた鷹嘴鎚(ベク・ド・ファコン)を取り出し、軽く振ってみる。よし、体は動く。

 アリーとコジロウをつれて部屋の外に出るとシュキアが待っていた。

「……体の調子はどうだいっ?」

「大丈夫」

 僕はそうとだけ答えた。

 僕たちが走る通路には一回戦の結果が載っていた。

 急いでいるのは分かっているが少しだけ立ち止まり、俯瞰するように眺めて、結果を一瞬で把握する。


A組第一回戦第一試合

レシュリー・ライヴ(退)、アリテイシア・マーティン(退)、コジロウ・イサキ(残)、シュキア・ナイトアト(残)

勝利(2)V.S.敗北

シャアナ・ジジ・ヲンヴェ(退)、ヒルデ・ハーケン(負)、シメウォン・マーヅ(退)、ラインバルト・ボン・アルバイト(退)


 (退)が場外に落とされた冒険者、(負)がリタイアを審判に表明した冒険者、(残)がステージに最後まで残っていた冒険者だろう。

「(死)って表記もあるけど、A組に死者はいないよっ?」

 シュキアが立ち止まっていた僕にそう教えてくれる。


A組第一回戦第ニ試合

ジネーゼ・ジ・ジジワルゾ(残)、リーネ・アクア・ク・アク(残)、シッタ・ナメズリー(残)、フィスレ・ウインドミル(残)

勝利(4)V.S.敗北

ビビデ・バビデ・グー(退)、ナナミ・セイドス(退)、アルカンス・レイナ(退)、ノルカ・ソルカ(退)


A組第一回戦第三試合

セレオーナ・グレッセヤ(退)、ダモン・イイダ(退)、ケッセル・パラオティ(退)、クレイドル・アージエ(退)

敗北V.S.勝利(1)

パレコ・プキージ(残)、ミハエラ・カーブ(退)、キューテン・チョッカ(退)、センエン・ヤルヨイ(退)


A組第一回戦第四試合

グラウス・ルシアンドール(退)、マリアン・レイクドール(退)、ルクス・ブラックオード(残)、マイカ・ルクホワイト(残)

勝利(2)V.S.敗北

キィム・ジョンテ(退)、アルコセナ・ビット(負)、クリムゾン・ノピッグ(負)、ジャン・スミス(退)


 A組を一通り確認して本当にシュキアの言っていた通り、死者が出ていないことに安堵する。疑っていたわけではないけど実際に確認することで実感が湧いた。

 ついでに次の対戦相手はA組第二試合で勝ったほうだったと思い出す。

 つまり予想したとおり、対戦相手はジネーゼたちだった。

 B組ではアイドル冒険者ルルルカ組と、開始五分で勝利を収めたアロンド組が二回戦でぶつかるようだった。

 一回戦での死者はセリージュの仲間三人だけだった。助けられなかったことを後悔するが、すぐに思い直す。セリージュが助けれただけでもよかった、と。

「とっとと走る。時間がないよ」

「ごめん。分かってる。今行くよ、アリー」

 気持ちを切り換えて、三人のあとを追う。

 通路を抜けると、歓声が聞こえた。一回戦よりも観客が増えている。

 ステージは一回戦では八つあったのに四つになっていた。ステージの広さは縦に長い。四つのステージをふたつずつ繋げてニ回戦を行なうらしい。

 入口に一番近いステージが僕たちの戦場だった。

「ギリギリじゃんか」

 そこに待ち構えていたジネーゼが余裕の笑みを見せていた。

「今度は勝つじゃん」

「やってみなよ」

 挑発にあえて僕は乗った。

「ヤッホホー! 全員、時間内に揃ったから、第二回戦を始めるよん!」

 テンテンの言葉で会場が沸く。ステージにいる全員が戦闘体勢を構えると、

「今回もわたしを楽しませろよんっ! レディーーーーーーーゴーーーーーーーーーー!」

 テンテンが試合開始を合図し、僕たちは走り出した。

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