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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
79/873

開戦

 14


 十分後にきっちりと現れたテンテンは僕たちを先導して通路を歩く。そこには三十(メーチェル)×三十(メーチェル)のステージが八個あった。テンテンが言っていた通り、ここで八試合が同時に行なわれるらしい。

「それじゃ、各ステージへおあがりくだちいっ!」

 テンテンの可愛らしい声が拡張器を通じて響き渡る。全員がステージにあがるとステージを覆うように結界。

「この結界は観衆へと魔法や爆風が及ばないようにするものだから安心して対戦相手をブッ殺しちゃってくだちい。結界は張ってあるけど中の人は落ちちゃうよ。当然、ステージから落ちたら負け! 死んでも負け! リタイア宣言でも負け! チーム全員が敗北で不合格ですよん! それでは一回戦! レディイイイイイイイイイイイイイイゴォオオオオオオオオオオオオオオオですよん!!」


 ***


 こうしてランク5になるための試練、戦闘の技場(バトルコロシアム)の第一回戦が始まった。

 第一回戦最初の脱落組は、的狩の塔(ハンティングタワー)順位第十六位、愛称『デンジャラスベジタブル』。

 的狩の塔(ハンティングタワー)順位第五位組との圧倒的な実力差により、開始五分で敗北を喫した。彼らの自信はただの思い込みだった。下克上(ジャイアントキリング)の秘策なんて何もなかった。

 開始五分に脱落した愛称『デンジャラスベジタブル』を倒したのは的狩の塔(ハンティングタワー)順位第五位組はアロンド・ホームが率いていた。

 狩士アロンド・ホームが六つの盾を使い分けるという荒業でミチガ・エル、ヨミガ・エル、ヒックリカ・エルの賢士三兄弟を守り、三兄弟が五分の詠唱後に発動した三重(トリプル)風膨(バルーン)】が『デンジャラス・ベジタブル』を一瞬にして吹き飛ばしたのだった。


 ***


 Bグループ第一試合の戦いは混迷を極めそうだった。的狩の塔(ハンティングタワー)順位第十三位と第十四位の戦いだ。

 グダグダになるだろうと予想してか観客もあまり戦いを見ていない。圧倒的な力の差で弱者が踏みにじられる様、もしくは実力者同士の熾烈を極める戦いを観客は求めていた。

 それが第十四位組を率いるルルルカ・アウレカには不服だった。彼女は注目してほしかった。売れないアイドル冒険者である彼女はなんとしても目立つ必要があったからだ。

 顔が良ければアイドル冒険者でもやっていけると思っていたが、彼女にはあまり冒険者としての才能がなく、強く美しくがモットーのアイドル冒険者としては未熟だった。

 だからこそ目立ちたい。十四位という順位の時点で最初から注目されていない。だからこそ大穴として見事優勝して目立ちたい、そんな想いがあった。

 彼女が率いているのは、マネージャーになってくれているモココル・ファンデ。彼女の愛らしさと実力に惚れている冒険者も少なくはないが、何分その実力もルルルカのわがままで押し潰されていた。

 さらに妹であるアルルカ・アウレカ。彼女はモココルやルルルカに比べれば見劣りする顔立ちだ。それがコンプレックスなのか目元まで髪を伸ばして顔を見せないようにしている。しかし実力はモココルよりも上だ。もっとも姉に逆らえないのでその実力はそれほど発揮されていない。

 最後の一人、モッコス・モッコスは労働担当の髭親父だ。「グヘギャハハハ」という極たまにするバカ笑いがルルルカは嫌いだったが、何一つ文句言わずにルルルカの命令を聞いてくれるという点には何も不満はなかった。

 そんなルルルカのわがままに引っ張られてきたため実力はたかがしれていた。

 対する第十三位組を率いるのはゴンダ・サイゴ。彼は無精髭をモシャモシャしながら顔を赤く染めていた。

 何を隠そう、彼は酔っていた。飲んだくれのゴンダ、それが彼の通り名。

 毎日時間があれば「酒をくれ」と叫び、酒を飲み、得たお金を酒につぎ込む。

 常に酔っ払っているせいで千鳥足だが、そのせいもあってか避けるのが上手い。が酔って強くなるわけでもない。

 そんな酒豪、悪く言えば酒中毒者に付き従う三人、マイミィ・キジハラ、クック・ドゥル・ドゥス、マハリク・マハリヤンも酒中毒者だった。

 戦闘前に極度の緊張に陥るクックは戦闘前に少しだけ酒を飲み気分をほぐす。

 マイミィはゴンダよりも酒を飲むくせに酒に強いのか平然な顔をしている。

 マハリクは酒に物凄く弱いくせに酒が好きな変わり者。試合前に飲んだ一杯ですでに泥酔に近くおそらくまともに戦えないだろう。

 第十三位という順位は泥酔マハリクと飲んだくれのゴンダが全く酔ってなかったときの結果だった。酔っていればおそらく第十三位という順位すら取れない。さらに下の順位がいることを鑑みれば彼らはそれなりに実力を持っているといえるのだが、現状は泥酔ニ名、ほろ酔い一名、酒豪一名という結果である。実力など目に見えていた。

 だから観客はそんな試合に注目しない。


 ***


 むしろ注目を集めているのはB組の三試合目。

 グレグレス・フィッシャーが率いる的狩の塔(ハンティングタワー)順位第六位組とフィオナス・グィレンが率いる的狩の塔(ハンティングタワー)順位第十五位組の戦いだろう。

 圧倒的な実力差で、巻き起こる殺戮に観客は歓声をあげるのだ。

 試合開始直後、第十五位(フィオナス)組の狩士アイターム・ソレッシロは第六位(グレグレス)組の狂戦士ギンヂ・トミサカによって右腕が切断された。悲鳴をあげ、尻餅をつき、後ろへと退く。

 それを見つめるギンヂは切断した右腕を拾い上げ、少しだけ齧りつく。

「不味っ、なーんで人肉ってこんなに不味いんだつーの」

「ってか人肉を食うならそいつを菜食主義者にしなきゃ駄目だと思う。常識的に考えて。肉食や雑食動物はまずいって相場が決まっていると思う」

 ギンヂに呼応したのは同組のファグゾ・ジデゾロ。

「てかお前、そいつをいたぶるで決定だと思う? 俺はあいつにすると思う」

 ファグゾが走り出す。向かう先はアイタームの右腕が切断されたことで涙目になったセリージュ・ポワゾ。

「さてさて号泣悲鳴を聞かせてくれ!」

 グレグレスが哂い、フィオナスにゆっくりと歩いていく。

「オイラいっつも残り物やん」

 不満を漏らしつつもシジマツ・ソライロは他の三人が狙わないシクリーヌ・ククッリへと向かっていく。

 アイタームの右腕を切断したギンヂの仲間ということもあってかシクリーヌは自分から攻めることもせずシジマツを睨んだまま武器を構えシジマツを待ち構えていた。

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