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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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試合


 12


「それではルールをご説明します」

 参加者十六組四十八名がエントリーしたところで司会者の男が喋りだした。

 二日前のあの日、シュキアはすぐにどこかへ去ったのでどうなることかと思ったが、試練当日、つまり今日、受付にひとり佇んでいたので少し安堵した。

「この試練はとても簡単。トーナメント形式の対人試合(PvP)です。皆様方で戦っていただき、優勝した組のみが合格とさせていただきます。ちなみにこの試合は賭博の対象となっております。観衆の皆様方は当然、参加者の方も代理人を立てれば賭けることができます。この際、注意していただきたいのは当てるのは試合ごとにどちらが勝つかではなく優勝する組だということです。ちなみにどの試合であろうとも賭けることができます。堅実に儲けたいという人は、決勝戦の時点で賭ければ五割で勝敗が決まります。しかしすると最初の試合でお金を賭けるのは損ではないかと思う方がおられるでしょう。それは違います」

 一呼吸でその言葉全てを吐き出した司会者は一呼吸してさらに言葉を続ける。

「最初の試合でAという組に百イェンを賭けたとしましょう。A組の賭け金が十人で千五百イェン、B組の賭け金が十人で千イェンだった場合、Aが勝つとB組の賭け金千イェンが上乗せされ、Aチームの次の試合の賭け金が二千五百イェンになるのです。この増えた千イェンは、最初に賭けた十人のイェンの多さに比例して等分され加算されます。ここで配当として受け取ることもできますが、その場合、以後の試合で賭けを行なうことは出来ません。なお試合が始まって場に存在する人間が六人になった時点で、その試合のそのチームに賭けることはできませんのでご注意ください」

 一礼してその司会者の男がさがると次に現れたのは雀斑の少女。司会者と比べると随分とラフな格好をしている。

「ヤッホホー! 堅苦しい絶対防御過呼吸気味のシルドーさんの説明のあとは、あなたは病んでる、わたしはアイドル、にこやかすこやかテンテンちゃんの対戦相手は誰だゲームのお時間だよん! これで対戦相手を決めちゃうよん!」

 愛くるしい声で痛々しいセリフをにこやかに吐き出すテンテンという少女は右から上位順に並ぶ僕たちの右から三番目、つまり三位の組の先頭の冒険者に、『?』と書かれた正方形の箱を差し出す。その箱の上には穴が開いていた。おそらくそこに番号が書かれた何かが入っているのだろう。

「ちょっと待て。雀斑美少女!」

 僕の右隣、三位の冒険者の左隣の変態、つまりはアエイウ・エオアオという上半身裸に金鬼防水着ゴールデンブーメランパンツ金外套(ゴールデンマント)を羽織ったやっぱり変態の冒険者はテンテンが持つ箱の穴を自らの手で封じた。

「なぜ、俺さまという華麗な美男子の番を飛ばした。右隣の勝気系美女が引くよりまず先に、豪華絢爛な俺さまからだろう。なぜなら俺さまの順位が高いから、そして格好いいから」

「一位の方はA組の一、二位の方はB組の十六と位置が決まっているのですよん!」

 平然とテンテンは無表情でとやりとりをしていた。

「……なんでそんなことをするのだ?」

「ヤッホホー! 簡単だよん、そんなの。一位と二位の方がいきなり一回戦でぶつかるよりも決勝戦でぶつかったほうが試合として盛り上がるでしょ~。パンツ一丁のお兄さんのファンもその隣の格好いいお兄さんのファンもきっと特盛りのもりもりに増えちゃうのだよ~ん!」

「ガハハハ! そうか、そうか、格好いい俺さまのハーレム要員が増量、特盛りか! ならば反論はない。続けよ、美少女」

「……さーて、お仕事、お仕事! 早く引いてね三位チーム」

 テンテンはアエイウの言葉をまともに受け取らず鋭い目つきで三位の冒険者に促した。ってか三位の冒険者はジネーゼか。災難だなあ。

 ようやくその存在に気づけたのは右隣がアエイウで、あまり右側を見れなかったせいだ。邪魔すぎる。

 テンテンは慣れた手つきで全員にくじを引かせると、笑顔で

「はーい、それじゃ番号をご確認してくださいでーす! そしてこうなって、こうなっちゃいまーす!」

 目の前の掲示板に大きなトーナメント表が出現した。A組は番号一~八、B組は番号九~十六だ。

「一回戦は、十分後!! 八試合を同時にやるよ~ん! 始まったら外には出ちゃノーだから、きちんと用意をしておいてくだちい! 試合毎に休憩はあるから全力で楽しませてよん!」

 テンテンが去っていくと他の参加者もまばらに散っていった。武器をメンテナンスするのもいいかもしれない。武器を大切にするアリーなんかは暇があれば武器を研いだりしている。ジョバンニに習ったのかもしれない。

 コジロウは壁に背を当て眼を瞑っている。瞑想だった。さて僕はといえば……あまりすることがなかった。

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