表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tenth  作者: 大友 鎬
第12章 ほら、呼び声が聞こえる
738/874

優先

 番長湯梨浜ことyahksも異能を持っていた。

 自身の体を”猛熱”と呼ばれる炎で包むことで絶大な攻撃力を手に入れる。――ただし、命を削りながら。

 異能猛熱殺々(もえつキル)

 自身の負の感情に対応して自動発動し、発動後は解除できない。

 自身の体力を秒ごとに消費し、0になるまで延々に続く。

 終極迷宮(エンドコンテンツ)終極魔窟(エンドレスコンテンツ)内の発動で、それは取り返しがつかない。

 yahksはShr@vakaと、grid onpaoのことを愚痴りながら負の感情をためて発動。

 '友喰い'を発動させた際に確実に異能猛熱殺々(もえつキル)を継承させるように導いた。

 yahksの言動は大言壮語で実は何もできなかったように見せてgrid onpaoはイラつかせるように動いていた。

 最後は自分のほうが強い、だなんて言われてgrid onpaoがイラつかないわけがない。

 番長湯梨浜の異能猛熱殺々(もえつキル)を'友喰い'したgrid onpaoはその収まらないイラつきが、負の感情になって猛熱殺々(もえつキル)の発動条件を満たす。

 満たしたなら、もう猛熱殺々(もえつキル)は止まらない。秒速で命が削れていくが、grid onpaoは猛熱殺々(もえつキル)の利点にばっかり目を捕らわれていた。

 何より、特典〔痛いの痛いの飛んでけ(ペインシェア)〕の効果がその短所を実質無力化していた。

 さらにShr@vakaが召喚したタベールドンとオネムドンの追撃が、猛熱殺々(もえつキル)の効果確認をさせる暇をなくしていた。

 しかもタベールドンもオネムドンも重量級。本来なら一撃で倒されることなんてないが、猛熱殺々(もえつキル)がそれを可能にしていた。

 ワンパン。

 その行為にgrid onpaoは高揚していく。爽快感が、確認を疎かにしていく。

『grid onpao>だ・か・ら何がしたいんだよ”って”思いました』

『Shr@vaka>単なる時間稼ぎ、尺稼ぎ、間延びっぽいらしいな』

 grid onpaoの問いかけに対するShr@vakaの答えはその通りだった。

 言葉通り。もう下地はyahksが整えていた。

 猛熱殺々(もえつキル)が自動的に体力を削り、一定量の傷を防いでくれる特典〔痛いの痛いの飛んでけ(ペインシェア)〕の効果をかき消す。

 そこからはもう死へは秒読み。勝手に自滅していくだけだ。

「でもなんだ、効果は知らんがテンテンとやら”特異”を持っていてそれをあいつは持っているのだろう? その効果はどうした?」

 説明を受けていたユーゴックが指摘する。”特異”の存在はgrid onpaoが'友喰い'したときにばらしていた。

『Shr@vaka>わしが担当した。おそらく、これ、あれ、それっぽいらしいなというものが推察できた』

『Buddhak's etra>それはなんなんです?』

『Shr@vaka>テンテンと戦っていたとき、不自然な殴り合いがあったっぽいらしい」

「あったか?」

『Buddhak's etra>はて?』

『Shr@vaka>あったんだよ。それに前の舞台(ステージ)でわしは不自然、不可解、不格好に意図せず動かされたっぽいらしい』

「つまり操作されていたということか?」

『Shr@vaka>それほど明確、鮮明、正確ではないっぽいらしい。どうやらある程度、望み通りになると言ったほうがいい』

『Buddhak's etra>それは操作されたと言うんでは? どう違うのです?』

『Shr@vaka>さあ? でも考えてみるとさ、わしが操作、運転、操縦されたっぽいらしいというより、テンテンの望み通りに動かされたという感覚が強いっぽいらしい』

「ガハハハ。細かい違いはどうでもいい。とにかくそういうような効果を持っているということだろう?」

『Buddhak's etra>では次はその対策を?』

『Shr@vaka>だからそれはわしが担当した。もう解決、締結、決着してるっぽいらしいから』

 確かにgrid onpaoはShr@vakaのばらまいた食料を未だに食べている。

『Shr@vaka>ドラドンは造語でね、それこそ竜に貪欲をかけあわせた言葉。だからその言葉通り貪欲で、普段は欲望に忠実、正直、実直っぽいらしい』

 Shr@vakaは言葉を続ける。その傍らで食料を食い尽くしたgrid onpaoはその場に座り込み、うとうとし始めた。

『Shr@vaka>わしが推察したようにテンテンの望みを叶えるのが”特異”の効果なのだとしたら、もし仮にgrid onpaoがドラドンを'友喰い'した場合どうなるか想像、想見、夢想したっぽいらしい』

『Buddhak's etra>その結果がこれですの?』

「なるほど。そのドラドンとやらの貪欲さが優先されたのか。タベールドンは食欲、オネムドンは睡眠欲ってところか。考えたな、三大欲求なら優先されてもおかしくはあるまい」

 それがShr@vakaの考えたテンテンの"特異"である"欲望"への対策だった。テンテン自身には通用しないが、'友喰い'したgrid onpaoになら通用するのだ。

『Shr@vaka>でここからはおふたりさんの仕事、業務、任務。実はタベールドンは一定量食べると爆発するっぽいらしい』

 眠たげなgrid onpaoに確かに先ほどより膨らんでいるように見えた。

「おい」

『Shr@vaka>でも大丈夫。その前に体力を0にすればいいっぽいらしい』

「そういうことか」

『Buddhak's etra>なるほど。要するに自爆する前に倒せってことデスワー。yahksがここまでお膳立てしてくださったのですから、台無しなんかにさせませんのデスワー!』

 言われてユーゴックとBuddhak's etraがgrid onpaoに立ち向かう。

 相手は自爆の準備中。爆発前に倒せば勝ち。倒せなければ負け。

 目的が明確化される。

 grid onpaoはもはや欲望に抗えない。一定の傷の蓄積で欲望が成就する"特異"――"欲望(ディザイア)" がgrid onpaoの欲望を成就させ続けていく。

 grid onpao本人が望んでなくても'友喰い'した人々もある意味でgrid onpao自身。

 食べたい、食べたい、眠りたい、眠りたい、眠りたい、grid onpaoがやめろと思っても"欲望(ディザイア)"がより強い願いをかなえていく。

 タベールドンの効果で体が膨らんでいく。

 自爆の予兆。

 膨張する身体をユーゴックとBuddhak's etraが殴り続けていた。まるで肉を柔らかくするように。

 それでも何もできない。欲望が優先されてどうしようもなくなっていく。

 台無しにしようと動いたgrid onpaoはyahksとBuddhak's etraに台無しにされていた。

 膨張する身体に穴が開く。

 ぷしゅーと空気が抜けるように身体が縮み、grid onpaoは消失した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ