二位
『grid onpao>悪だ”って”思いました。けど、まだ最悪じゃない”って”思いました』
grid onpaoは自分の状況を、そう例える。
弱体化したのは確かだが、まだテンテンの特典、そして"特異"がある。
『Buddhak's etra>今がチャンスなのデスワー』
『yahks>やめろ、やめろ。まだ'友喰い'されるぞ』
『Buddhak's etra>それはやってみなければわかりませんのデスワー』
『yahks>分かるんだよ。分かれ』
Buddhak's etraがしゅんとなるのを尻目に
『yahks>でも、一歩進んだ』
そう言いながら、でも次はまあ俺だろうなあ、と前に出る。
『Shr@vaka>待て待て。次は、追って、続いてはわしが行くっぽいらしい』
同時に邪魔だとyahksを押しのけるようにShr@vakaがドラドンを召喚。
『yahks>そっちの策を聞かせろ』
『Shr@vaka>なら二番手、類似、次席のそっちが黙ってわしに先に策を教えろっぽいらしい』
yahksがメンチを切るが、Shr@vakaは譲らない。
『yahks>俺は無敵に対する策だ』
『Shr@vaka>わしは台無しにされた返礼、仕返し、再戦っぽいらしいな』
Shr@vakaは多くは語らないが、yahksも観戦していた身だ。
前の舞台での決着をつけたがっているのは理解していた。
***
『yahks>なら俺が先だな』
道を譲れと少しだけyahksは歩む。その横に並走するようにShr@vakaはこう愚痴る。
『Shr@vaka>そういえば知ってるっぽいらしい? あいつ、そいつ、彼奴は会社員の平均月収ぐらいの小遣いをもらってるっぽいらしい』
『yahks>しかもそれを全部課金籤に注ぎ込んでる、ってぐらいには知ってる。じゃあ問題、あいつが課金籤に全額突っ込んでSSRが当たらなかったことに対する言い訳は?』
『Shr@vaka>答えは”親ガチャに失敗した”らしいっぽいな。なんという傲慢な口癖、常套句、言い草っぽいらしい』
『yahks>俺たちからしたら、小遣いの時点で裕福、勝ち組みてえなもんだ。だから勝手にあいつの現実も充実してると思ってた』
『Shr@vaka>けれど違った。何せDUM -MY games-基準では、わしらのほうが高水準、高次元、上級者だなんて愉快、興奮、喝采だったっぽいらしい』
『yahks>ああ、確かにそれはすかっとした』
grid onpaoに恨みを持つ誰かが、grid onpaoが'友喰い'しDUM -MY games-の能力を反映して弱体化した際に、実際にgrid onpaoがかつてDUM -MY games-に反映していた能力を画像付きで流出させた。
あまりの能力値の低さにクソゲーだと叫んでいた過去すら忘れてDUM -MY games-のPCであるTillie Yan Chuを'友喰い'したことも冷やかされていた。
能力値を見たShr@vakaとyahksは思わず痛快な気分になった。
ただ普通に生きて、たまに愚痴るような生活を送っているShr@vakaとyahksのほうが、DUM -MY games-における現実を反映したgrid onpaoの数値よりも高いのだ。
それはある意味で自信につながり、より覚悟を決める決め手にもなった。
そんなやつに台無しにされてたまるか、と。
適当に愚痴ったyahks――番長湯梨浜は銭を紐に通したゴエンダマを持ってgrid onpaoへと向かっていく。
『grid onpao>弱体化した瞬間、攻勢とかバッカじゃねぇの”って”思いました。まだまだ無敵だっての』
強気に言い放って、grid onpaoが【筋力最大】で増大させた拳をぶつける。
yahksに触れさえすれば、grid onpaoは'友喰い'できる。
触れさえすれば――。
grid onpaoの拳にぶつかった番長湯梨浜のゴエンダマ全体が光り輝き、そして拳を弾き飛ばす。
ゴエンダマのひとつが人知れず消滅。grid onpaoはそれに気づけたか。
番長湯梨浜の特徴を知っていれば、気づけたかもしれない。
ただ単にうまい具合に弾かれた程度にしか思わなかったgrid onpaoは連打を選択。
が、それが正しい。ゴエンダマは紐に通された銭の数だけ自動で攻撃を防いでくれる。
ただし、銭が尽きればまるでゴエンダマと縁が切れたかのようにその自動防御は解除されるのだ。
特典〔痛いの痛いの飛んでけ〕を活かしたごり押しもごり押し。
それが功を奏したのか、ゴエンダマが見る見るうちに削れ――効果が消失。
『grid onpao>結局』
grid onpaoが一呼吸、
『grid onpao>何がしたかったの”って”思いました』
grid onpaoの拳がyahksにぶつかり、'友喰い'を発動。
『yahks>お前。本当に何も知らないんだな』
『grid onpao>お前"不良番長"のPCでしょ。そのぐらい知ってるよ、”って”思いました』
『yahks>くはっ、やっぱりお前……何も知らないんだな。番長湯梨浜、ぐらい覚えておけよ』
途端に番長湯梨浜が燃え始める。異能の発現だった。
『yahks>ああ……あとこれも覚えておけ。俺は万年二位だがお前よりも強い』
『grid onpao>悪あがきはいらないんだよ、”って”思いました』
'友喰い'を発動させながら、yahksを頬をむかつきのまま殴りつける。何が強いだ。
yahksが消失していき、'友喰い'が番長湯梨浜の能力を反映していく。
それは任意ではなく、自動的に発動する。
grid onpaoの全身が炎に包まれていく。炎自体は熱くはない。技能発動時に出る闘気みたいなものだ。
その炎に包まれた瞬間から能力が上昇し、妙な高揚感がまとわりつく。
それが番長湯梨浜の能力なのだろう。
『grid onpao>どんどん、どんどん強くなる』
『Shr@vaka>とは言ってもひとりっぽいらしいな。物量、面積、規模の数に押しつぶされろっぽいらしいな』
強さに酔いしれるgrid onpaoへと間髪入れずにShr@vakaがドラドンを差し向ける。
次はShr@vakaの番だ。yahksはしっかりと役目を果たした。
ゴエンダマは無事に消費され、番長湯梨浜の能力は確かにgrid onpaoに受け継がれた。
差し向けられたドラドンはタベールドンにオネムドン。重量級のデフォルメされた竜でタベールドンは肉叉と短包丁を持って布巾を襟元にひっかけている。オネムドンは寝巻と天辺に綿がついていた三角帽の姿。
grid onpaoの進路を邪魔するように何匹ものタベールドンにオネムドンが行進。
放っておけば圧殺されそうな質感。
『grid onpao>ひゃはあ!』
その一匹に向かって【筋力最大】の拳。はじけ飛ぶようにタベールドンが消えた。そうやって幾重の壁にもなって次々と行進してくるタベールドン、オネムドンをgrid onpaoは倒し、'友喰い'していく。
『grid onpao>だ・か・ら何がしたいんだよ”って”思いました』
Shr@vakaの姿を捉えてgrid onpaoは叫ぶ。
『Shr@vaka>単なる時間稼ぎ、尺稼ぎ、間延びっぽいらしいな。でもそれがわしの再戦を台無しにされた、復讐。調子に乗ったお前の戦いを台無しにする戦術っぽいらしい!』
タベールドンを消滅させ、オネムドンを消滅させ、Shr@vakaの顔面へ拳が一歩届く手前で止まる。
Shr@vakaはにこりと笑い、ドラドンたちへと与える食料をばらまいた。
ぱくっ。
空中に放り出された食料を大きく口を開けて受け止めていた。
ごくりと飲み込むとgrid onpaoはShr@vakaがばらまいた食料を次々と拾い上げ、食べていく。
「何が起こってやがる」
予想外の光景にユーゴックが唖然としていた。
『Shr@vaka>yahksの献身とわしのドラドンが台無しにしたgrid onpaoを台無しにしたっぽいらしい』




