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tenth  作者: 大友 鎬
第12章 ほら、呼び声が聞こえる
731/874

相愛

 ***


 ディオレスがキングへと向かっていく。

「特典は能力低下をもたらす〔減点にして弔電(デバフオンパレード)〕で、固有技能は能力上昇。他にも警戒して」

 そんなディオレスへと――いや、ディオレスたちへと僕は伝える。

 他というのは"特異"のことだけれどすべてを説明するには時間がなかった。

 キングへと向かっていくのはディオレス<8th>、シュリ<8th>、ソレイル<5th>、ギネヴィア<5th>、B0DH1・5ATTAの五人。

 代表してディオレスの顎が少し下と傾き、すぐに戻る。感謝が会釈で伝えられた。

「キングだったか」

 激突する瞬間、ディオレスが言う。

「特典の効果はオレたちに全振りしろ、じゃなきゃ死ぬぜ」

 偽剣〔狩場師範ソォウル〕の重い刃のような柱のような刀身が、キングへ振り下ろされる。

 大剣〔戦略家の家臣ジグゾグ〕で対応するキング。

 ディオレスが一瞬、脱力感を感じたように、偽剣の重心がぶれるも、すぐに持ち直す。

 ディオレスが笑い、キングが苦笑。

「言ったろ。特典はオレたちに全振りしろってよ」

 オレ”たち”の示す目線の先にはシュリがいた。

 両手用(トゥーハンド)切断(フェンシング)(ソード)を両手で握り、ディオレスの後ろから追い抜いてキングへと襲いかかる。

 上から振り下ろされた両手用切断剣〔渦中のテネグリア〕は切断用の剣であるため、切っ先が丸められており、刺突には向いてないが刀身も長く、刀身の下端、柄と刃の付け根は幅が広がり、切っ先と比べれば三倍ぐらいの幅があった。

 そんなシュリも脱力感が襲うが、ディオレスと同様、何もなかったかのようにキングへと向かっていく。

 幅広刃剣〔大音声の臣下ソゾゼブラ〕で瞬時に対応。

 不測の事態にもキングは即時に対応してみせた。

 が猛攻は止まらない。

 ソレイルの擬似刃屠竜剣〔竜を穿つバットンギッハ〕と幅広刃剣〔大音声の臣下ソゾゼブラ〕の剣戟。

 互いが互いに鈍い音を奏でて不協和音のような不快な音を奏でるように刃が刃を滑る。

 ソレイルがわずかに脱力して、キングが擬似刃屠竜剣を払いのけ、切りかかった。

 だがその剣戟に合わせてギネヴィアが雷を帯びた円月輪(チャクラム)がソレイルと幅広刃剣へと入り込み、幅広刃剣の動きを止める。

 キングが手を止めていなければ円月輪に宿った雷がキングを襲っていたがキングはそれすらも見切っていたのだ。

 ギネヴィアを双重具師と判断したのだろう。

 双重具師は剣士複合職(スタンダード)双重剣士の上級職だった。

 本来、魔法剣は魔充剣にしか魔法を宿すことはできない。そして魔充剣は通常の剣よりも性質的に脆いという特徴がある。

 双重剣士はその魔充剣にしか宿せない魔法剣を従来の剣に宿すことが可能だった。そしてその上級職である双重具師は武器だけではなく防具にも魔法剣を宿すことが可能になっていた。

 ギネヴィアがキングを猛追。ふたつの円月輪〔永遠のトワ〕と〔輪廻のワト〕が超速の刃――雷の化身となってキングを襲う。正確無比な円月輪の軌道はギネヴィア自身を狙って、集中を切らせば回避しやすくはなるが、ギネヴィアの防具は帯電していた。雷の武装、いわば雷装を身に纏っているため攻撃もしにくいようだった。

 キングは特典〔減点にして弔電(デバフオンパレード)〕でギネヴィアの円月輪の軌道を逸らそうと画策。

 すべての能力を低下させる特典の効果によって命中補正を低下させるのが目論見だろう。

『B0DH1・5ATTA>{悪}いけど、ボクっちゃもいるからね』

 恰好をつけてB0DH1・5ATTAがビットマップソードで横やり。

 円月輪の軌道が特典によって逸れたとしても、全員の攻撃が途切れないように調整していた。

 B0DH1・5ATTAの連携力はディオレスが口笛を吹いて称賛するほどだった。

 B0DH1・5ATTAの足元にはpurera、Tora;pet、Den.D、XYZot、k:u:r:a:という赤色の名札を持つPCの骸が転がり、消滅していくところだった。

 キングと連携してディオレスたちの妨害を狙っていたpureraたちは連携しようとしすぎた結果、逆に隙が生まれ、B0DH1・5ATTAや、キングの標的から外れた誰かによって倒されていた。

 今までの一連の流れはキングのみとの戦いではなく、他のPCとも戦いながらなのだから、援護としてディオレスたちの少し後ろにいる僕からしてみても驚嘆しかない。

 【超剛速球】を放り、背後に回り込んでギネヴィアを狙おうとしていた065proへとぶつける。その威力から悶絶している065proに気づいてギネヴィアがとどめを刺してこちらへと目配せ。お礼以外の意図はないと判断しつつも、なぜかアリーに申し訳ない気分になって、少しだけ治療中のアリーを見つめた。

「おいおい、特典はオレたちに全振りしろって言ったろ」

 速度が先ほどよりも段違いだった。

 キングの手首へとディオレスの鮫肌剣〔呪い唄はダバダバモード〕が食い込む。

 寸前でキングは幅広刃剣〔大音声の臣下ソゾゼブラ〕を手放して手を引っ込めることで被害を最小限に食い止める。

 逃れられなかった小指の第一関節が切断。

 キングが苦痛に顔を歪める。

 キングのなかでは色々な思考が巡り巡っているように見えた。

 ディオレス、シュリ、ソレイル、ギネヴィア、それぞれの特典はなんなのか。

 いやどうなんだろう、キングはそんなことを気にも留めてないような気もする。

 それほどまでにキングの強さは今までの戦いで痛感しているが、助けに応じて終極魔窟エンドレスコンテンツへとやってきたディオレスたちも未知数だった。

 そんなときだ、ひとりのPCの大音声が聞こえてきた。

『mayatsuteru・JH2・4fM>大変だ、大変だ、大変だ。特典が分からなかった。いくら探しても今特典が判明してないNPCの特典は分からなかった』

「ああ、だって今まで一度もそんなもの使ってないからな」

 jiHibikiという赤名札PCを切り捨ててディオレスは告げる。

 衝撃の事実だった。特典なしでディオレスたちは今の強さを持っていた。その底の知れなさに体が震えた。頼もしさがあった。泣きそうにもなっている。

 それでもキングは顔色一つ変えない。僕の想像に反して、キングにとっては想定内だったのかもしれない。

「いいか。もう一度言う。オレたちに特典を全振りしなきゃ死ぬぞ、キング! 気づいているだろうから、教えてやる」

「あんまり固有技能名を言うのは好きじゃない」

 続けてシュリが言う。

「まあまあ、そう言うなって」

 ディオレスがなだめてから、シュリがため息。呼吸を合わせて固有技能名を言った。

 それはふたりともが討伐師がゆえに取得したのかもしれない。技名を聞いてそう思った。

「「【攻勢(アタックスタイル)相愛型(カップリングモード)】」」

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