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tenth  作者: 大友 鎬
第12章 ほら、呼び声が聞こえる
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根刮

 1ppatsuya-1828が向かう先はシャアナの元。十五人の夜明けではキャラをキルするごとに相手はランダムにアイテムをロストする仕様だが、根こそぎタンスケは残りHP15%以上の状態の敵をキルできれば、相手のアイテムを全ロスさせる十五人の夜明けでは屈指の嫌われキャラ。

 速度が十五人の夜明けのなかで一番早く、さらに連撃を得意とする。

 1ppatsuya-1828のこのキャラの連続攻撃でシャアナを撃破しようとしていた。

 ただし、1ppatsuya-1828は理解していない。

 シャアナを狙うということがどういうことか。

 シャアナは狙われていると理解しながらも1ppatsuya-1828には全く気を割かなかった。

 なぜなら――

 HUMA・Ntte117が護衛にいるからだ。

 不運なのは魔物増殖血海レッドオーシャンの戦いどころか、他の戦いすら1ppatsuya-1828が閲覧してなかったことだろう。

 キングは観客たちへの参加を呼びかけたが、観客たちもこの戦いに参加するように各所で呼びかけた。

 その各所から呼ばれたなかのひとりが1ppatsuya-1828だった。

 戦いの前に、各PCたちの配信をせめて2倍速でも見直しておけばよかったが、いつ申請(ログイン)できるか分からない状況では、見直しすらもできなかった。

 かつて別のキャラで挑んだ時の記憶、経験則だけで1ppatsuya-1828はこの場にいる。

 それでもそれなりに戦えるのは確か。

 が(名前が赤いので)敵対するHUMA・Ntte117とシャアナの関係性は知っておきべきだった。

 そして敵対したHUMA・Ntte117が何者であるかを。

 もう一度おさらいしよう、

 1ppatsuya-1828は根こそぎタンスケである。根こそぎタンスケは連撃を得意としている。

 HUMA・Ntte117はダガーの冒剣者である。その技能は連撃率アップ+99。

 もう明白だった。

 追い打ちするように言えば、十五人の夜明けはキャラ選択型FPSのため、成長要素がない。あくまで操縦者の技量で戦っていく。

 そのため、能力値は固定。特殊能力の熟練度が個人の技量に比例して自動的に設定される。

 一方で一部課金制のRPG転生したら冒険者だった剣はそれこそRPGのため成長要素があり、さらに努力型は努力に比例して能力値も技能の熟練度も向上していく。

 十五人の夜明けは開始一日でも一定の能力値が保証されるためすぐに申請ログインしてもそれなりの強さがある反面、

 NPCではなくPCとの戦いにおいては時間をかけたPCには能力値において勝てないという弱点もある。

『1ppatsuya-1828>あ×99 あげしっ!』

 99回の連撃分だけ「あ」を叫び、100回目に断末魔を残して、1ppatsuya-1828は力尽き多角形の細かい泡のようになって消えた。

 結局レイシュリーを足止めできずにeizas sazieは対面せざるを得なくなる。

『eizas sazie>新参っぽいのに生意気なんだよ、お前! マジカルダクターの力思い知れっ!』

 スタータクトを振るうと、右、右下、左下、左、上。それぞれの角に宿っていた魔法のうち、まずは右下。青色が光り輝き、そこから氷風が吹きすさぶ。

 それに合わせて橙極石の機菱杖〔和を平つヴアナラ〕の橙極石が淡く光る。

 eizas sazieの放った魔法から遅れること数秒。Label AIが起動し、レイシュリーに氷風が到達するよりも早く橙極石の機菱杖〔和を平つヴアナラ〕から魔法が展開。

 無詠唱で攻撃魔法階級6【炎熱波(ドラウド)】が発動し、eizas sazieの氷風を打ち消していく。

 詠唱が超高速だからこそeizas sazieの魔法に後出しで反属性の魔法を放つことができる。

『eizas sazie>だったらこれでどうだ!』

 炎属性の【炎熱波(ドラウド)】を見て、eizas sazieは赤色を選択。マジカルダクターの左下が光を放つと、炎塊がレイシュリーめがけて飛んでくる。

 レイシュリーは勇んで前へ前進。とっくに橙極石の機菱杖〔和を平つヴアナラ〕に光っていた。

『eizas sazie>ついでにこれもだっ!』

 レイシュリーの対応を見て、連射で左と右が輝く。緑色に光って風鋏が飛び出し、黄色に光って土雨々が降り注ぐ。

 橙極石の機菱杖〔和を平つヴアナラ〕から展開した【氷河帯(フリージングベルト)】が炎塊を凍らせていく。

 その凍った炎塊を壁にして、風鋏をやり過ごすも、

『eizas sazie>追尾するんだよっ!』

 旋回してレイシュリーへと向かっていく風鋏を見てにやつきながらeizas sazieは叫ぶ。

 その頃には橙極石の機菱杖〔和を平つヴアナラ〕が光り輝いていた。

岩石崩(ロックアバランシュ)】によって積み重なった岩が風鋏を破損させるが、片刃となってレイシュリーをまだ追撃。

 回避するも掠り、服の布地が破れて少しだけ肌が露出する。

 その柔肌を見逃さないとしていたPCもいたが、その余所見が致命的となって周囲には誰もいないはずだったのに、脇腹を刺され、そこから毒が広がり、悶えて消滅した。

 そこにいるはずなのにいない。

 あるいは、いないからいない。 

 固有技能【不在証明(アリバイ)】によって姿を消していたジネーゼがその油断を突いて邪な気持ちを抱いたPCを一瞬で倒していた。

 そんなことをはつゆ知らず、再度旋回してレイシュリーを狙う風鋏。

 その前に土雨々が襲いかかる。

 が詠唱は既に終了。【疾風怒濤シュタルガー・ヴェント】が発動し、土雨々を風化させていく。

 同時に風鋏を今度は掠ることなく回避。

『gatti tWman>くそっ!』

 何かを期待していたのだろう、そうならなかったことを嘆くgatti tWmanはたまたまタミの近くにいた影響で魔法の爆撃から逃げれないでいるPCのひとりだった。

 gatti tWmanはもぐもぐグーチキと呼ばれる食材系パズルの料理人。

 分類は魔法使いで無作為に出現する魔食材を使って魔法料理を作成できるのだが、ところどころに出現した魔食材を拾い集める必要があるが、魔法爆撃を避けながらだとなかなか難しいものがあった。

 風鋏を回避したレイシュリーは再度【岩石崩(ロックアバランシュ)】を作成して風鋏を完全消滅させる。

『eizas sazie>全部使えるのかよっ!』

「それだけじゃないよ。そろそろ気づきなよ。自分の変化に!」

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