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tenth  作者: 大友 鎬
第12章 ほら、呼び声が聞こえる
714/874

群集


***


〘――来て。助けに来て――〙


 その呼び声を感じ取れたのはランク7に到達していた冒険者たちだった。

 呼び声を聞いただけでどこに行けばいいのか、何かが起こっていたのかを一瞬で理解してしまっていた。

 ランク7冒険者たちはそれを知ったうえで行くかどうかを判断できた。

 知ってしまえば助けに行かなければ、と思ってしまう冒険者も多い。

 そのずるさに反発して拒否するもの。

 その場にいる冒険者がレシュリー・ライヴだとしって助けに行かなければと思うもの。

 同時にランク7冒険者が世界から一時的に減少する危機を察して、その危機を守ると判断したもの。

 ランク7冒険者たちは様々な判断のうえで決断する。


***


「どうする?」

 呼び声を受けた冒険者たちが集まり相談する。

 その集団はとある九人を筆頭に集まったランク7までに至った集団だった。

 その集団は二カ月前に開発されたふたつの道具を使って急激に力をつけていた。

 今では[十本指]という実力者よりも有名になっている。

 二カ月前に消えたレシュリー・ライヴとその仲間たちの所在が、頭に響いてきた呼び声によって判明し、その集団の冒険者たちは決断に迫られていた。

 全員で行くか行かないか、それとも希望者だけとするか。

 何せ、呼び声に応じればたどり着く場所にはレシュリー・ライヴがいる。

 死神レシュリー・ライヴが。

 周囲の仲間が死んでもなお、生き続けている。

 本人が知らぬ間にそんな悪評も流れていた。 

 シッタ・ナメズリーを犠牲にしてまでランク8になった、とは誰の言葉だったか。

 嫉妬がそんな噂を作り出したがそれでもランク8というのはひとつ上のランクとはいえ数えるほどというか現状はレシュリーとアリーしかない。シッタがランク8になっていたことは数えるほどの冒険者しか知らない。

 だから正直未知の存在だった。

 行けば死ぬかもしれない。もとより冒険者とはそういう者だが、レシュリー・ライヴがいるところは極めて激戦地。

 そこに助けに行くのは危険が伴うのは当たり前。

 だからこそ慎重になるのだ。

「ぼくだけが行こう」

 重い口を開いたのその九人集団の筆頭の冒険者だった。顔立ちがどことなくレシュリーに似ている。

 そう決断した矢先だった。

「大変だ」

 彼らが溜まり場にしている宿場マンズソウルの酒場へと同志のひとりが駆け込んでくる。

「狩場で魔物が大量発生してる」

「どこの狩場?」

「全部同時に!」

 その言葉に全員が言葉を失う。

 エクスにソォウル、サイコとヤド、確認されている四つの狩場――魔物の沸き所に同時に魔物が発生するという事態は前代未聞だった。

「何が起こってるんだ?」

 疑問は尤も。けれど放置ができないことだけは全員が理解できる。

「だったらみんなはそっちへ。ボクだけはやっぱり、アイツのもとへ向かうよ。いい機会だから挨拶だけはしとかなきゃ」

 レシュリーとの因縁を知っている仲間たちには引き止める権利はなかった。もとよりこの集団の頭だ。意思決定には逆らうつもりはない。

 全員が全員のすべきことをするだけだ。

「ぼくだけが行く」

 聞こえてきた声への返答代わりに誰もいなくなった部屋で応えると、その冒険者の体は消えていった。


***

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