密林
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使用放題神域サブスクリプション
発動負担結界イニシャルコスト
問題多発時空ヒヤリハット
魔物増殖血海レッドオーシャン
速度上昇空域アジャイル
空間圧縮砂漠シュリンク
複製保管領域バックアップ
活動制限障壁ボトルネック
行動制限境界デッドライン
九つの舞台が決着し、残る舞台はひとつ。
けれど対戦者たちは順番にではなく、同時進行でその舞台で戦っていた。
だから現状、何勝何敗なのか知る由もない。
その勝敗を知っているのは終極魔窟をどういう形であれ見続けた者だけだった。
便宜上、語るのが最後になった、残るひとつの舞台で戦うNPCとPCたちは他の舞台の結果を知ることなく戦っている。
それは今まで見てきた舞台で戦うNPCとPCたちも同様。結果はすべての舞台が終了してようやく判明する。
部隊として勝っているのか負けているのか、その判断は舞台にいる以上できない。
***
PCが降り立ったのは、密林の獣道だった。
獣たちが通った道以外には低木や蔓草が生い茂り、進むには苦労しそうだった。
『B0DH1・5ATTA>ボクっちゃには{似合}わない{場所}だなあ』
格好をつける感じでB0DH1・5ATTAはぼやく。
B0DH1・5ATTAは全身がピクセルが判断できるほどの解像度で表現されていた。いわゆるドット絵。ビットマップ画像だった。
現実と変わりがない密林の光景にB0DH1・5ATTAは別の意味で浮いていた。
とはいえ肌の質が異なっている程度の認識でしかない。この世界では人間だけでなく亜人もいれば魔物もいる。
いてもおかしくない、というほどに不自然ではないのだ。
『B0DH1・5ATTA>さあ、{進}もう」
格好をつける感じで言うが、ピコピコと意外と歩き方は可愛らしい。
見た目の可愛らしさとドット絵で描きこまれた世界観が人気のデメテルテイルズのプレイヤーの特徴だった。
デメテルテイルズは豊穣神デメテルとともに畑を耕し、世界を豊かにしながらも邪神の復活を阻止すべく世界をめぐる物語で、畑を耕しながらスローライフを満喫する姿はまさに平和、一転、邪神の復活を阻止の物語はその愛らしさを裏切る残酷さがあった。いわゆる可愛い絵柄で三酷な物語が展開されるのも人気を博していた。
B0DH1・5ATTAは鉄の鎌を取り出す。デメテルテイルズーー通称デテテルの世界ではそう呼ばれているが、終極魔窟ではピクセルシックルと名前が変更されていた。このピクセルシックルは耐久力が∞で一度制作すれば、延々と草を刈り取れるものだった。
サッ、サッ、と鎌を動かすたびに効果音が鳴り、周囲の蔓草が刈り取られていく。
刈り取った草はB0DH1・5ATTAと同じようにドット化していた。
『B0DH1・5ATTA>さて{悪者}を{見}つけないと』
申請戦争を勝利したときはそんな感情を抱いてはいなかった。
けれど終極魔窟で期せず三つ巴になって、B0DH1・5ATTAは悟った。
キングって{人}は{悪者}だ、と。
それぐらい、突如やってきた十人の乱入者が格好良い感じだったのだ。
B0DH1・5ATTAはそういう直感で動く人間だった。
そんなB0DH1・5ATTAの前に、次元の切れ目のような穴が出現する。
『B0DH1・5ATTA>あ、これ{見}たことあるやつだ。{確}か{転移}の……』
格好をつける感じで、見覚えのあるそれをじっと観察する。
するとそこから冒険者が出現していた。NPCだ。
「あ、キミってPCの……」
少し敵意が見えたがすぐには襲い掛かってこないようだった。
「相手がキングなんだけどさ、手伝ってくれない? って無理か……」
『B0DH1・5ATTA>キングってあの……こっちが{勝}てばこの{世界}はお{前}たちの{物}になる!って{最初}に{宣言}してた?』
「ごめん、その台詞は聞いてないけど……たぶんその人。でもさすがに手伝ってくれないよね? こっちの世界に来たがってるPCが」
『B0DH1・5ATTA>{確}かにそれが{目的}。けど{直感}だけど……あの{人}は{悪者}だ。キングの{思}い{通}りに{動}くと{悪事}に{乗}っかっているようで{嫌}なんだ』
「ということは……」
『B0DH1・5ATTA>{手伝}ってもいい。けど、そのあと、{真剣}に{勝負}してもらうから。そういう{契約}ならいいよ。レシュリー・ライヴ』
格好をつける感じでB0DH1・5ATTAは契約条件を出した。
「あれ、僕名乗ったっけ?」
契約成立の有無の前にレシュリーは自分の名前を相手が知っていたことに驚く。
『B0DH1・5ATTA>Re:ENCOREの{死闘}はもはや{有名}を{超}えて{伝説}』
「なるほどね。あの子は強かった」
ルルルカの特典が変質しなければ、きっと負けていた戦いを思い出して、懐かしんで笑う。
『B0DH1・5ATTA>で{契約}は? {結}ぶ、{結}ばない?』
「いいよ。いいよ。キングを倒したらいくらでも」
『B0DH1・5ATTA>なら{契約成立}』
格好をつける感じで笑い、握手を求めた。
それに応えるように握手をしようとして――
機を待っていたかのように
〘――バグが発生しました――〙
〘――急いでバグを取り除いてください――〙
〘――バグが発生しました――〙
警告が鳴り響き、レシュリーはB0DH1・5ATTAの差し出した握手を弾いた。
「あれ……?」
『B0DH1・5ATTA>契約しないってこと? ……あれ?』
レシュリーの行動のおかしさを問いただそうとしてB0DH1・5ATTAも自分の言葉がおかしいことに気づく。
格好をつける感じで言ったのに、そうはならなかった。
「契約はするよ。でもごめん。なんでか握手はできなかった」
『B0DH1・5ATTA>こちらも悟った。格好がつかなかったからね。この舞台のこれが仕組みか……』
***
「手を組んだか……」
レシュリーと名も知らぬPCの気配が近くにあり、争う様子がないと悟ったキングはそう判断していた。
「だがこの誤作誤動生域バグで勝てると思うなよ。せいぜい我が野望の糧となれ」
不可思議な現象がレシュリーとB0DH1・5ATTAを襲い、
〘――バグが発生しました――〙
〘――急いでバグを取り除いてください――〙
〘――ババババババ、グググググがががががが発生発生発生発生しましましましたたたた――〙
〘――急急急急急急いででででバグバババババグググググをををを取り除取り取取取取取りりりりりり除い除除いてててててくだささささささいいいいいい――〙
警告すらもおかしくなったにも関わらず、キングの足取りは普段と何も変わっていなかった。




