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tenth  作者: 大友 鎬
第12章 ほら、呼び声が聞こえる
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想定

 デトロアは黒い影をコジロウと評したが、それは正しくは違っていた。

 黒い影の正体はコジロウであり、コジロウではなかった。

 影師のコジロウが影法によって繰り出した分身【強影(オルター・エゴー)分身(〈リード〉)】だった。

 その精緻な作りにデトロアは勘違いしていた。

 だから気づかなかった。

 後ろから迫る本体コジロウの姿に。

 首の後ろ、脊髄めがけて忍者刀〔仇討ちムサシ〕が突き刺さ――らない。

 それでも超感覚で立っていた瓦礫から転げ落ちた。

「ぶねー。あぶねー。前にいたの分身か」

『Tenjyo Amano>DD。大丈夫なので?』

 落下したデトロアを救ったのはTenjyo Amanoだ。

 焦りながらもデトロアは無傷。

 直前でデトロアは後ろから迫るかすかな殺意に気づいた。盗士系複合職の攻撃は殺意を感じ取られにくいという特徴があるのだが、それでもデトロアは感じ取っていた。 

 さらに気づいたうえで振り向きもせず、致命傷になりそうな脊髄へと攻撃を避けようとしなかった。

 傷を負わないと分かっていたのだろう。

「特典〔最高級に皮良い威容(ベストファーニスト)〕のお陰だ」

 デトロアは告げる。自分の特典を隠すつもりもないのはおしゃべりな性格が起因しているのかもしれない。

「この特典のおかげで皮膚への攻撃はほとんど無効化できる」

『Tenjyo Amano>DD。効果言ったらネタバレなので』

「大丈夫だよ。大した問題じゃない。それよりも投げろ」

『Tenjyo Amano>投げ? なんで?』

「いいから」

 Tenjyo Amanoは疑問に思いながらもデトロアを投げる。投げられたデトロアは身体を丸めて、コジロウへと突撃していく。

 デトロアの姿が変貌していた。鱗甲板と呼ばれる硬い皮膚で背中が覆われそこから後頭部、腕、足へとその皮膚が変化していく。

 その変化は全身にも及ぶ。デトロアは怪獣師だった。怪獣化によってアーマジロ(鎧帯獣)へと変化。

 アーマジロは正確には強化動物に分類される。アルマジロ(帯獣)から強化された動物だ。

 獣化士の時点でも倒せば変身できるため強力かどうかで言えばそうではなかった。

 それでもデトロアはアーマジロへの怪獣化を選んだのは当然理由がある。

 デトロアとコジロウが衝突。コジロウは忍者刀〔仇討ちムサシ〕でいなすが、跳ね返るように跳んだデトロアはそのまま瓦礫へと衝突。否。瓦礫に衝突した反動を利用して、そのまま加速。別の瓦礫に向かっていく。

 何度か衝突。反発。加速。三工程を繰り返してコジロウと同じ速度まで達する。

 かつてディエゴが何十重ねもした【加速】から体当たりが最強と言っていたように、デトロアはアーマジロの強靭な鱗甲板と丸まれる身体に加え、自身の特典を利用してその域まで達していた。

 それがデトロアの狙いだとTenjyo Amanoは悟ったが、コジロウはもう一段階上の認識。

 なにせ、コジロウはクロスフェード・シュタイナーを知っている。

 そしてその彼が何をしようとしていたかも。

 別次元の存在とはいえ、クロスフェード・シュタイナーがその場にいる以上、"特異"のような何かを仲間たちに与えていないはずがないとそう認識していた。

 何よりTenjyo Amanoはコジロウが加速のために蹴り上げた瓦礫がその衝撃で壊れていること、対してデトロアが自らが跳ね返るために使った瓦礫は壊れていないことに気づいていない。

 その差がコジロウにデトロアは"特異"を持っているとより明確に認識づけた。

 特典を早々にばらしたのはおそらく"特異"を知らないと思っているデトロアがコジロウを油断させるためだったのだろう。 

 がコジロウは"特異"を知っているため、余計に警戒されてしまっているので逆効果だった。

 瓦礫にぶつかり続けて加速したデトロアがまたコジロウへとぶつかる。

 コジロウがそのまま消滅。

『Tenjyo Amano>やって……ないよね』

 言葉通り、消滅したのはコジロウの影分身だった。

「どこに消えた?」

 後ろから迫ってきたコジロウも影分身だった。目視できる範囲に高速で動き回る黒い影を三つ発見する。いつの間にか増えていた。 ひとりを追うのに手一杯でデトロアが追い切れていなかった。

『Tenjyo Amano>自分が本体を見つける。まだ何も役に立ってないんで』

 宣言して、Tenjyo Amanoの瞳が青く変化する。Tenjyo Amanoの視界には常にこの舞台(ステージ)の全体図や、自分のライフなどが表示されている。

 Tenjyo Amanoが使用できる技能は、翼と瞳と拳の三種類。技能のシンプルさもまたワールド of スペースのウリだった。

 翼を起動させるとその通り背中に翼を生やし飛行、滞空ができる。

 今回はコジロウの本体を見つけるために瞳を起動。

 見える範囲の敵を認識しターゲットマーカーを表示させる。

『Tenjyo Amano>共有するよ。仲間なんで』

 無数のコジロウのうちひとりを除いてDummyと表示される。

 Dummyと表示されているのがすべて影分身。総数は10にまで増えていた。

 三つの技能の横に表示されているゲージが減り続けているのはどういう意味だったのだろうか。

 先行体験版のためまだ表示されている画面の意味を全て理解できていないTenjyo Amanoはふと、そんな疑問を覚えてしまう。

 がそんなことは気はしてられない。

「これ捕捉できて便利すぎるな。トドメは任せた」

 言葉を受けてTenjyo Amanoは身震いした。名も知らなかったNPCとチームプレイできるなんて思いもよらなかった。

『Tenjyo Amano>ファイナルアタックくれるなんて器がでかいね、DD』

 場合によって最後のとどめを刺した人が報酬を多くもらえることもある。

 仮にそうだった場合、譲歩してくれるなんて最大の信頼を得ていると思ってもいい。

「選別の時間だ!」

 まるで決め台詞。悪を倒す正義の味方のように宣言して、DDは丸めた身体を跳躍。

 まるで跳躍遊技盤(ピンボール)のように瓦礫で弾かれ、Dummyの――つまり影分身のコジロウたちを的確に倒していく。

「やるでござるな」

 感心するコジロウにはまだ余裕が見える。

 デトロアがコジロウ本体に向かうと同時にTenjyo Amanoもまた、残る最後の技能、拳を発動。いわゆる溜めができ、翼の推進力を利用して前進。溜めに溜めた拳の一撃を放つという感じだろうか。

 コジロウのDummyを全て消失させたのはTenjyo Amanoの溜めを最大限まで充填を邪魔させないため。

 そしてコジロウ自身、デトロアとTenjyo Amanoの挟み撃ちは対応できないだろうという算段だった。

 デトロアのピンポールアタックとTenjyo Amanoの最大溜めの拳がコジロウを挟み撃ちする瞬間だった。

 コジロウも致命傷だけは避けようと必死の構え。

 想定外が起こる。

 Tenjyo Amanoの翼の推進力がなくなる。見れば翼の技能の横にあったゲージがなくなっていた。

『Tenjyo Amano>これ制限時間のゲージかっ!』

 気づいたときにはもう遅い。

『Tenjyo Amano>届かせてみせる!』

 けれど、まだ推進力は完全に切れたわけではなかった。ぎりぎりコジロウは挟み撃ちできるっ!

 が、想定外は二度起きる。

 Tenjyo Amanoが突如、この舞台(ステージ)から消えた。

 しかも、この想定外は起こりべくして起こったと言ってもいい。

 Tenjyo Amanoだった以上、それは実は想定内だった。

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