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tenth  作者: 大友 鎬
第6章 失せし日々
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南島

 1


 通称南の島、正式名称一発逆転の島。そこに的狩の塔(ハンティングタワー)戦闘の技場(バトルコロシアム)がある。

 そこにやってきたアエイウ・エオアオが南の島というフレーズだけで想像したのは水着姿だった。

 当然、自身も上半身裸で赤鬼外套(レッドマント)を羽織り赤鬼防水着レッドブーメランパンツを着用していた。

 しかし、

「なんだとー!!」

 南の島に着いた途端、頭をぐしゃぐしゃに掻き乱しながらアエイウは思わず叫んでしまう。それも一目もはばからず思いっきり、だ。

 アエイウはこの世に絶望があるということを知ってしまった。水着を着ているものなどひとりもいなかった。ありえなかった。

 そもそも海水浴場など見当たらない。それはアエイウがイメージする南の島としてはありえないことだった。

 大陸と長すぎる橋でつながれたその南の島は絶壁に囲われていた。まるで囚人を収容するように。

 そのせいでかつてあった海岸は埋め立てられている。そんな島が南の島を名乗っていることがアエイウにはありえなかった。自らが抱く南の島のイメージが崩れ、アエイウは愕然と項垂れた。

 そんな傍ら、無理矢理面積の少ない極少布防水着(マイクロビキニ)を着させられた従者エミリーは照れ隠しのように髪の毛を弄っていた。恥ずかしさからか、決して大きくはない胸を腕で隠していた。

 周囲の冒険者、あるいは観光客の視線が痛い。怒鳴り散らしたアエイウの大声も相まって視線が集まっていた。そのせいでますます顔を赤らめ、動けなくなってしまう。

 そんなエミリーに傍らのミキヨシが気遣いを見せ、エミリーの肩へと手折布(タオル)をかける。

 ミキヨシ自身は白い麻の安布服(チェニック)紺直着(ブラオベスト)、膝丈までの縫合脚布(ブラッカエ)を見事に着こなし、アクセントに革製小銭入(オーモニエール)を腰に巻いていた。

 気遣いが癪に障ったアエイウが余計なことをするなとミキヨシを小突く。

 小突かれるのはいつものことなのでミキヨシは気にしない。余計なお世話をしたのはミキヨシの勝手だし、アエイウがエミリーに意地悪するのもいつものことだ。

 そもそも店を無理矢理休業にさせられて必要だからと連れてこられたことのほうが少し癪に障っていたぐらいだ。やれやれと気づかれないようにため息を吐く。

「相変わらずだね」

 ディオレスと同時期に受けた鮮血の三角陣(レッドトライアングル)で密かに、そして唯一合格しランク6になったエリマが呟く。エリマは緑色の上皮防護服(オールインワン)で、大胆に胸元を開き、首に紫の襟巻(マフラー)を巻いていた。薄紫色の髪は膝下まで伸び、蠍の尻尾を彷彿とさせる奇抜な髪型で周囲の注目を集めていた。

 ランク6の冒険者が出たのは実は半年以上ぶりなのだが、それでも世間は次々と死んでいく[十本指ザ・ゴールデンフィンガー]と、新たに再編された[十本指ザ・ゴールデンフィンガー]の話題で持ちきりで、エリマは話題にすらあがらない。エリマにとっては気が楽なのでそれは好都合だった。

「いいからとっとと宿屋に行きましょう。ウチも流石にここまで休みなしは疲れたわ」

 エミリーと同様、極少布防水着(マイクロビキニ)を着ている元PKアリーンが呟いた。アリーンはアエイウにきちんと矯正されていた。以前よりも垢抜け、笑顔にも柔和があった。

 エミリーとは対照的に極少布防水着(マイクロビキニ)に抵抗がないアリーンはまったく恥ずかしがっていないがアエイウには不満はなかった。アリーンの豊満な胸の大部分が見えているということがアエイウを満足させていた。

「そうだな! 行くぞ、宿に。宿屋の亭主に『昨晩はお楽しみでしたね』と言わせてやるよ、ガハハハハ!」

 十本指(テンスリトル)アエイウ・エオアオは仲間を引きつれ、南の島を訪れていた。

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