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tenth  作者: 大友 鎬
第11章 戻れない過去
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終極魔窟・序編-5 永休

「分が悪いでするな」

「ふむ。王にして王たる覇道を阻むのは特別職と思ったが、拍子抜けか?」

「言ってくれるでするが、特別なのは職業だけで、それだけで秀でていると思っていると思ったことはないでするよ」

 言葉を紡ぎ、同時に特典〔七天罰刀(セブンディザスター)〕を振るう。常時使っている大業物〔明鏡シスイ〕では元より相手にならないという判断だった。

 が効果は振るわない。

 奇数攻撃時に状態異常を付与する、とキングに熟知されていた。

 奇数回だけ明確にキングはその太刀筋を見切り避けていく。

 もとより奥義は繋技(コンボ)だった。

 一撃目を当て、二撃目に繋ぎ、連続的に奥義を続けていくものだ。

 一振り目の一撃目を避けられては意味がない。

 次に放つ、奥義の二振り目の一撃目は奥義こそ繋がるが特典〔七天罰刀(セブンディザスター)〕は発動せず、次の三振り目の二撃目はキングによって明確に避けられていく。

 特典による状態異常と奥義の繋技(コンボ)による威力上昇を完全に警戒されている。

 PC相手ではほぼ必中のように奥義を決め、状態異常をまみれにするサスガの攻撃は完全にキングに封じられている。

 しかも小細工なしの身体能力だけでそれを行っているように見えた。

「落ち込む必要はない。これが"とくい"分野というべきか」

 王は笑う。何かをあえて伝えてサスガの様子を伺っているようだった。

 少し怪訝に思うだけに留まるサスガの表情を見て、

「なるほどな。そちらにはまだ根付いてないようだ。それか根付かないような分岐(ルート)に至ったか」

 キングは妙に納得する。

「ならばやはり王たる王が事を優位に進める土壌が揃っていると見てもいいのだろう」

 周囲には家具が散乱していた。

 トワイライトと対峙するクイーンが【収納】から撒き散らしていた。

 その光景は戦闘中に似つかわしくない異質な光景のようにも見える。

 けれどサスガも知っている〈10th〉のクイーンはそういう嘲るようなふざけた戦い方を好んでいたようにも見える。

 キングへと飛んできた家具をキング自らが叩き落とし、破壊する。

 その様子を見てもやはりクイーンがふざけているようにしか見えない。

「〈10th〉の冒険者なら、そして〈10th〉のキングと戦ったのなら知っているだろう?」

 〈7th〉のキングが告げる。別次元(サーバ)の自分自身について語るのは別に禁忌ではない。

 ディエゴも別次元(サーバ)のディエゴから他次元(サーバ)の死因について教えられたこともある。だからこそディエゴは〈10th〉のキングを殺すために〈10th〉の資質者たちを殺し始めたという前提がある。

「〈10th〉のキングにはエースという別人格が宿っていた。いやエースの別人格がキングだったというべきか。だとしたら王たる王である、この王はエースであると言うべきか」

 鶏が先か、卵が先か、という因果性を説いているのはなかった。

「まあそれはどうでもいい。王たる王であることには変わりがない」

 重要なのは、とキングは言葉を続ける。

「〈10th〉のキング誕生には家具がつきものだった。封印されたことでキングは生まれたのだ。そしてエースは封印が解かれるまで表に出ることはなかった。キングでもあるエースは」

「何が言いたいでするか」

「王たる王の覇道には変革が必要だ。まず手始めにこの終極迷宮を作り変える」

 発した言葉の理解ができずサスガも流石に絶句。

「そのために莫大な質量の力が必要でね、そのためには封印を施して力を利用するのが手っ取り早いっ!」

 キングはぞくりとするな表情でディエゴたちを見つめていた。

「くそっ!」

 ディエゴが何かに察していた。

「リストア。特典を展開しろっ、早くっ!」

「その者ならすでに倒しましたよ?」

 クロスフェードが眼鏡を直しながら言う。

「全く、運で来たのですか? 全くふさわしくない強さでしたよ」

 言う通り、リストアはすでに地面に横たわっていた。死んでいるわけではないようだ。

「こいつら、オレたちを利用して何かするつもりだ」

「もう遅い」

 言った瞬間、キング――ではなくクイーンからそれは展開された。

「【永休牢獄(セイヴポイント)】!」

 一瞬にしてサスガ、ディエゴ、トワイライトは家具を媒体にして水晶体の牢獄へと封印される。

 抵抗もできなかった。

 クイーンの【永休牢獄(セイヴポイント)】はクロスフェードによって備え付けられた特異"救済(セイヴ)"によって顕現した能力だった。

 その能力は見せた通り、媒介を利用して、水晶体に冒険者を閉じ込めるというものだった。しかもその水晶体はまた何かの媒体に利用できる。

「痛くもありませんわ。ただ眠るだけ。誰かが導いて(ロード)して冒険を再開してくれるまでずっとずっと眠り続けるだけ。誰かが飽きたり、別のものに興味を抱いて忘れてしまわなければきっときっと目覚めますわ。それがいつかは分かりません。それまであなた方はずっと永休牢獄(セイヴポイント)で何もせず何も起こらず世界さえ救えず、志だけを胸に、冒険の再開を夢見て眠り続けるだけですことよ」

 クイーンのまるで呪いのような言葉が、虚空に響き渡った。

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