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tenth  作者: 大友 鎬
第11章 戻れない過去
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超人計画編-11 不足

 オミの宣言を受けながらもジネーゼは違和感を覚えた。

 まずはその違和感の正体を見抜こうとジネーゼは【不在証明(アリバイ)】を使って違う木陰の元へと隠れる。

「そこ!」

 今度は隠れた幹に矢が刺さる。オミの持つ長弓〔隠れん坊のヒサミツ〕から離れた矢がジネーゼが隠れていた場所を捉えていた。

「隠れるとか無駄!」

 確かに的確だったがすでにジネーゼは移動していた。

「どこだ?」

 木陰にいないことを確認したオミが周囲を探る。

「すぐに発見できないじゃんか?」

 挑発するようにオミへと問いかける。声で当たりをつけたオミが透視し、しばらく見つめる。

 やがて投槍〔冷酷なミッヒー〕を投げつける。オミは多種多様な武器を扱う狩士だとこの時点でジネーゼは判別していた。

 ジネーゼが乗っていた枝に切っ先が突き刺さる。それだけじゃないと予測して宙へと高く跳ぶ。

 ある意味これも確認だった。

 【不在証明(アリバイ)】のまま跳躍していると枝が爆散。オミが投げつけた投槍は正式には隠技投槍だったのだろう。

「やったか?」

 オミが透視で周囲を確認。着地したジネーゼが無傷だと確認。

 チッと舌打ち。先程からジネーゼは回避に徹していた。避けられてばかりのオミは苛立ちを隠せずにいた。

 ジネーゼが何かを確認している、とオミは気づけずにいる。

 またジネーゼが【不在証明(アリバイ)】で消える。

「無駄だっ!」

 周囲を見回してジネーゼを探す。が見つからない。あっちは透明になっているからか時間が随分とかかる。

「見つけたっ!」

 それでも透視はジネーゼの姿を見つけるのだ。

 大剣〔硬水飲みのゴハンデル〕で周囲の樹を巻き込んで両断。複数の樹を倒壊させることで逃げ場と隠れる場所をなくすというオミの作戦だった。

 それでも瞬時にオミを察してジネーゼはそこから逃げ出している。

「どこだ?」

 再び透視でジネーゼを探すと、

「なるほどじゃん。もう分かったじゃんよ」

 オミのすぐ傍から声が聞こえた。

「どこだ? 近くとかにいるのは分かってる」

「確かに近くにはいるじゃん」

「そうだろう。すぐにジヴンが見つけてやる」

「いやもう種は割れたじゃんよ」

 途端にオミは頭に重さを感じるのを理解した。そのまま踏みつけられるようにオミは地面に屈服していた。

「いつの間に!」

「さっきじゃんよ。けど透視では見つけれなかったじゃんか」

「ふざけたこととか言うなよ。ジヴンは見つけていて、あえてだ、あえて」

 オミは意気がってみせるが明らかな動揺があった。

 ジネーゼがまた消え、オミは再び透視を発動。

「時間が、時間がかかっているだけだ!」

「時間なんて本当にかかるじゃんか?」

 声だけが聞こえる。

「調子とかが悪いだけだ」

「それが技能か改造か分からないじゃん。けど調子に左右される時点で、なんか違うじゃん!」

 ジネーゼは素直に思った感想を告げる。

「改造のような穢れたものと一緒にするな! この力は技能も才覚がなくても使える優秀な能力でジヴンは成功品とかなのだ」

「それって固有技能みたいなものじゃん? 自分もこれを手に入れて確かに優秀だと思うじゃん。けど結構クセがあるじゃんよ」

「何を言いたい? ジヴンとかにも分かるように言え」

「あーなんて言うじゃんか……使いこなせてないというか、覚えたてみたいな感じがするじゃん。それでいて成功品はなんかおかしいじゃんよ」

「ふざけるなよ。今に透視とかして、すぐに見つけてやる」

「それがもう自分の能力を理解してない証拠じゃん」

 オミが透視と言ったとき、ジネーゼは天敵だと確かに感じていた。未知の力、正体の分からない透視に恐れていた。

 だが、オミはジネーゼが【不在証明(アリバイ)】を解除し木陰に隠れていたときしか発見できなかった。

 大剣〔硬水飲みのゴハンデル〕で樹を一刀両断されたときも、長弓〔隠れん坊のヒサミツ〕から放たれた矢が幹に突き刺さったときも、

 投槍〔冷酷なミッヒー〕が足元の枝に刺さったときも、大剣〔硬水飲みのゴハンデル〕が周囲の樹を巻き込んで両断したときも、全て姿を現していた。【不在証明(アリバイ)】は移動の際に使用しただけだった。

 オミは木の陰や葉の陰に隠れていたジネーゼの位置がお見通しではあったが、【不在証明(アリバイ)】を使ったジネーゼを発見できていなかった。

 そもそも【不在証明(アリバイ)】は姿を消したように見えるがそこにいるようでいないようにする技能だ。

 曖昧な表現しかできないように、それは単に姿を消すとは違うのだ。

 それが忍術技能の【迷彩(ステルス)】とは一線を画すのだろう。

 おそらくオミの透視は【迷彩(ステルス)】は判断できたのだろう。そこからジネーゼの【不在証明(アリバイ)】が忍術技能を使えなくても【迷彩(ステルス)】が使用できるものだと思い込んでしまったのかもしれない。

 だからそんなアドバンテージを得たかったオミは、そんなアドバンテージを持っているジネーゼに狙いを定めていたのだ。

 一瞬にして後ろに現れたジネーゼに反応が遅れる。

「それ、目の色が変わるから少し注意したほうがいいじゃんよ」

 ジネーゼがそう警告し、短剣〔見えざる敵パッシーモ〕が首を掠めた。

「なっ?」

 驚いたのも一瞬。オミは首を押さえてそのまま倒れた。

 ジネーゼの毒がオミを一瞬で葬り去っていた。リーネを失ったジネーゼが得た固有技能は毒と相性が良すぎた。

「とりあえず、レシュリーに報告したほうがいい感じじゃん」

 ウガテー討伐報告後に得体の知れない冒険者について報せようとジネーゼは人知れず決めた。

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