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tenth  作者: 大友 鎬
第11章 戻れない過去
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超人計画編-2 不良

『N'portan>どうするのこれ?』

 PCコンティニューゲージが減少し、PCも戦意喪失しているさなか、ひとりの男が言った。柳のような男だった。実態がないというか、中身がない。

 PC世界のゲームで顔がない男がモブとして描かれることがあるが、それに似ている。まるで自分が主役ではない、そう言わんばかりの男だった。

『jyunder・jyunder>策はある』

 そういうPCの多くが策に溺れるが、それでもわらをもすがる思いで、N'portanは耳を傾ける。

 戦意喪失したPCは動かないだけで、まだ戦場に存在している。jyunder・jyunderの策によっては動き出す現金なPCもいた。

 自分の力ではなんともできなかったために他人の行動を責めて、それでも他人の行動によって自分でもなにかできるとまた奮起する。

 魔物などには決してとれない行動であった。

『jyunder・jyunder>コンティニューゲージを消費せずに人数を増やせばいい』

『Tita・2um>そんなことできるの?』

『jyunder・jyunder>そのための準備はしてきた。20人連れてきたけど、10人に減ったのはさすがに情報収集を怠ったせいだけどね』

 jyunder・jyunderの背後には同じような背格好、モブのような男女が現れていた。

『( ˘ ³˘)×2Train>その姿(アバター)……<百鬼蛮行>だね』

『jyunder・jyunder>その通り。まあ、見せたほうが早いね。行け、鬼たちよ』

 言うや、いわゆるモブのような姿(アバター)をしたjyunder・jyundeほか<百鬼蛮行>の十人の後ろから鬼が続々と出現する。

 その数は千。<百鬼蛮行>は最大百匹の鬼を操って侵攻していく地域制圧型SPRGだった。

 その鬼たちの姿は奇々怪々。

 潰された空気のような圧縮空鬼。ビリビリの電気を帯びた圧電鬼。見た目がメソメソしている弱鬼。理性を失っている乱痴鬼。

 実装前は人気だった前人鬼。手をこすり続けている摩擦電鬼などなど。PC世界できで終わる言葉を鬼に置き換えた独特な鬼たち、多少のだぶりはあれど大量に出現していた。

 PCコンティニューゲージはPCが最初を除き出現したときに減少する。鬼たちが千匹出現しても、そのゲージは微動だにしなかった。

『N'portan>すごい』

『Y'ld>勝てる』

 戦意喪失していたPCも動き始めた。

「なんかすごい数が増えたの?」

「まだあんたたちは近づいてきたやつらだけ倒せばよかじゃぜ」

 ベンダーミンが言う。

「あの鬼みたいなやつらはわっしにおまかせあれじゃぜ」

 言うやベンダーミンの体が大きく大きく変化していく。

 【怪獣化】だった。

『umidya>変なポーズの土偶だw』

 その感想は正しい。

 姿は土偶だが手足が卍のような形をしている。これがかくかく前後に動いているのだ。

 少し笑ってしまうのは仕方ないかもしれない。

 ベンダーミンが変形した巨大な卍ポーズの土偶はミステリードール(摩訶不思器)というれっきとした魔物だった。

 そしてその摩訶不思議で滑稽な姿勢とは裏腹に、まるで車輪のように回転して襲いかかるのだ。

『Y'ld>避けろ』

 高速で転がってくる土偶はの圧迫感はおぞましいものがあった。

 急いで回避するものもいたが、戦意喪失していたPC、逃げ遅れたPCが潰され、壁にぶつかったベンダーミンの土器の肌が割れる。

 土器のため、意外と脆い。

『umidya>自傷してんじゃんw』

 笑っていられたのはほんの一瞬だった。ミステリードールの割れた土器は小さなミステリードールへと変形した。

 変身したベンダーミンがどういう状況なのかは甚だ不思議だが、小さなミステリードールはベンダーミンが敵と認識している者へと襲いかかる性質があるオートマタ(自動土偶)だった。

 ベンダーミンの戦法はシンプル。巨大な質量で暴れまわり、暴れて自傷した分だけ、兵隊を増やして攻撃するというものだった。

 だがそれだけではない。

 その戦場には、華美な天使たちが出現していた。

『agochikuwa_099>この天使たちも鬼の仲間なの?』

『jyunder・jyunder>いや、違う。離れろ!』

 jyunder・jyunderは否定してすぐに警告した。

 どうみてもそれはPCが出したとは思えなかった。

 白い巻衣(ヒマティオン)を来た女型の天使や男型の天使に見惚れるPCも出ていた。

「何見てんだよ、ああ?」

 その天使たちは見た目に反して口が、というか柄が悪かった。

 釘バットや斧、鎖鎌など見た目が凶暴な武器を取り出して、PCたちに襲い始めた。

 その数は百はいた。ひとりの <百鬼蛮行>PCが出せる鬼の数と同数。

 さらにベンダーミンが【怪獣化】したミステリードールの破片から生まれたオートマタが増え続けている。

 大きなオートマタは壊されてもまた一定以下の小ささになるまで小さなオートマタとして分裂していた。

「どうした? PCたちはその程度なんじゃぜ?」

 挑発するようにベンダーミンは言う。

「ベンダーミンの特典は初回突入特典〔不良天使(ストレイエンゼル)〕っていうんだよい」

「772%ようするに天使(エンゼル)がグレーてるってやつだね」

「ちょっと何言ってるか分からないでござるが、要するに素行の悪い天使を召喚しているのでござるな」

「そういうことだね。最初に呼び出したとき素手で喧嘩して勝たないといけないから772%面倒臭いよね」

「けれどそれだけ腕っぷしが強かったからこそ、これだけの天使がベンダーミンを手伝ってくれているんだよい」

 その不良天使ひとりひとりもなかなかの強さだった。鬼はもとよりそれなりに鍛えてきたはずのPCたちをも蹂躙していく。

 結果、ものの一時間も立たずに

『jyunder・jyunder>そんな馬鹿な!』

 <百鬼蛮行>の鬼たちは全滅していた。全滅すればもうjyunder・jyunderは無力だった。モブのような姿(アバター)が体現している通り、何もできない。

「トドメだじゃぜ」

 とはいえベンダーミンも力を使いすぎておりミステリードールの怪獣化はやめていた。オートマタもおらず不良天使の数も数えるほどしかない。

 リザードマンに怪獣化したベンダーミンがjyunder・jyunderにトドメを刺す。

 PCコンティニューゲージは1/10程度まで減少していた。

 とはいえ戦意喪失したPCはもうおらず、残りのPCは生き残った猛者に加え、新規補充されてきたやる気十分のPCたちだった。

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