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tenth  作者: 大友 鎬
第11章 戻れない過去
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超人計画編-1 全滅

 終極迷宮30000000階。

「ようやくでござる」

「ええ。大変でした」

「まさか帰還できなくなる呪いがあるなんて初めて知ったの」

 その言葉に集約されていた。

 何が起こるか分からない終極迷宮だ。世界改変によってノアの羽根により脱出できるようになったものの、その同じく改変によってノアの羽根が一定階層降りるまで使えないという呪いが出現したのだ。その呪いをかけられたコジロウは30000000階突破まで終極迷宮を脱出できなくなってしまったのだ。

 となれば降りるしかない。

 情報を元に行動に移したいコジロウではあったが、何が起こるかわからないのが終極迷宮だった。

「おおっと、ようやく六人になったみたいじゃぜ」

「六人以上いなきゃ戦えないってんで足止め食らっていたんだよい」

「ぼくの計算によれば772%突破できますね」

 コジロウとルルルカ、そしてアルルカの前に現れたのは個性的な面々だった。

 六人揃ったことで、三分のカウントダウンが始まった。

「打ち合わせの時間はそんなにないようでござるな」

 状況を理解したコジロウがつぶやくとその場にいた三人が自己紹介を始める。

「わっしはベンダーミン。怪獣化師じゃぜ」

「拙者はトロニオン。討伐師だよい」

「ぼくはミーダス772。772%の確率で全滅師です」

 そのあとに続いてコジロウ、ルルルカ、アルルカも上級職を告げる。

 あとは合わせるしかない、時間がとにかくない。

 応用力を試されるのがこの部屋での戦いなのだろう。

 怪獣化師ベンダーミンの姿は編笠が特徴的なもの、基本的に猫背で、ボロ布のような服をきていた。

 状況によって体格すら様々に変化させる怪獣化によっていちいち服が破れるのが面倒くさいのだろう。

 ボロ布に見えるが伸縮性に長けた材質で作ってあった。

 討伐師トロニオンは空中庭園式の鎧を着用し、草鞋を履いていた。討伐師なので12個の武器に適正があるが、今手にしているのは刀だった。コジロウの顔が反射して映る。

 殲滅士の上級職たる全滅師ミーダス772は杖を持ってはいるがところどころ機械のようなものが露出しているのが妙に気になった。

 改造ではないが、もしかしたら別次元にそういう別の技術があるのかもしれない。

 それも戦術に組み込める可能性はあるかもしれないが、今はとかく時間がない。

 もう制限時間は一分を切っていた。

 ちなみにお互いの特典は話さなかった。そこまでの時間はないと判断していた。

 どの次元でも共通の職業さえ伝えれば各々の特徴はそれなりに分かる。

 わかった上で独自の判断で臨機応変に戦うしかない。

 もっとこの部屋の情報があれば突入前に話し合うこともできただろう。

 だが突入して人数が揃った途端スタートなのであれば必要な情報を伝えることしかできなかった。

 残り5秒になったとき、ミーダス772は口早にこう告げた。

「まずはぼくが仕掛けます。772%の二段構えでね」

 コジロウが動き出そうとしていたのを見てだろう。

 いつもならば、PCが現れて、PCのタイミングで試合が始まるのだが、今回はそれがない。

 始まっているカウントダウンが終了次第、戦闘開始なのかもしれない。

 その予想はあたっていた。

 表示されていたカウントが「0」になった瞬間、PCたちが飛び込んできた。

 同時に青いゲージのようなものが虚空に出現する。


「なんでこんなに数が多いのっ!?」

 思わずルルルカが叫ぶ。

 けど、ミーダス772はほくそ笑んでいた。

「772%推測通りじゃあないかっ!! ここはPCたちはゲージがなくなるまでコンティニューでき、ぼくたちは最低人数6人で戦わないといけないクソステージ。でもこんなところだからこそ、ぼくの技能が役に立つのだ。772%ね」

「口上はいいからさっさとやるんだよい」

「分かってる。772%の力でお見舞いしてやる【紅蓮の園(フィアンマテッラ)】!!」

 言うやミーダス772の杖が粉々に砕けた。

「もう耐久が持たないって分かってたからごめんね。だからこそ772%こういう場で使いたかった」

 詠唱がいらない全滅・殲滅技能は杖の耐久度を消費する。終極迷宮では武器をメンテナンスする道具がなくなってしまえば、もう武器の耐久度は上がらない。

 となれば武器の最期をどうするか考える必要がある。それを考えたうえでミーダス772は武器の有終の美を大量のPCを倒すということに決めたのだ。

『Logic@pen>いきなりっ!』

 全滅師がいることが頭になかったのだろうか。

 始まると同時に何も考えずに走り出したPCが目の前に広がる夕焼けのよりも赤い空を見て驚く。それがまるでマグマのように降ってきていると気づくまで思わず足を止めていたものまでいた。

「772%警告する。振り返るなよ」

 それは安い挑発にも聞こえたし、まるで来た方向に振り返って逃げ出そうとしているものを揶揄しているようにも聞こえた。

「ニャア」

『robert.164>猫?』

 振り返ったPCの後ろでは黒猫が鳴いていた。瞬間、その猫を見たPCの足が腐って溶けた。

『robert.164>なんだあああ?』

 パニックになって叫ぶと周囲のPCも、症状は違えど様々な不幸が降り掛かっていた。

「だから772%振り返るな、って言ったでしょ」

 その言葉は本当にミーダス772の警告だった。

 もちろん、全滅技能にそのような技能はない。基本的に全滅及びその下位である殲滅技能はその威力をもって敵を屠るか副作用的に低確率で起こる即死効果によって死に至らしめる技能だ。

 状態異常でじわじわと、という技能は存在しない。

 よってそれはミーダス772の初回突入特典だった。

「振り向けばキャッツがいる、なーんて」

 冗談めいたように言うがまさにそれこそがミーダス772の初回突入特典〔振り向けば(ターンゼア)猫がいる(イズキャッツ)〕だった。

 その効果は振り向いたら不幸が降りかかる。呼ばれて振り向いても、逃げようとして振り向いても効果は発動する。

 黒猫が見えてしまったというのがすでに効果の対象。

 向かってくれば【紅蓮の園(フィアンマテッラ)】の餌食、恐れおののいて後ろを振り向いて逃げれば特典の餌食。

 まさに恐怖の二段構えだった。

 逃れているのは開始時に慌てず、【紅蓮の園(フィアンマテッラ)】の範囲外にいたPCのみだ。

 それ以外のPCは逃げて〔振り向けば(ターンゼア)猫がいる(イズキャッツ)〕の餌食になったか、それが嫌だと前に進み、範囲外に逃れることができずに【紅蓮の園(フィアンマテッラ)】によって焼かれてしまったものだけだった。

 一瞬にしてPCコンティニューゲージが半分以上減少する。減少した分だけPCが補充されたため、PCの総数は減ってはいない。

 それでも開始数十秒でほとんどのゲージが削られたのはやる気が削がれる要因であった。

 何人かのPCがせっかく与えられた挑戦権だというのに立ち尽くして動かないままでいた。

 いわゆる戦闘放棄だ。負ければ使ったキャラクターは削除されてしまうが、死ぬわけではない。

 他のキャラクターを使えばいい。もう使わなくなったキャラクターだったりサービス終了したゲームのキャラクターだったり、どうせもうやらないゲームでワンチャンを狙っただけ。

 そんな思考で戦闘を放棄するPCが少なくない数存在していた。

 PC側での話ではあるが、もちろん罰則は存在している。

 それでもいいと思わせるほどに戦意を喪失させていた。

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