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tenth  作者: 大友 鎬
第2章 交わらぬ嘘
6/860

左手

 1.


 僕は逃げていた。僕よりもニ倍、いや三倍か四倍の胴体を持つジャイアント(大人間)から。

 人間と身体を構成する物質が違うのかその背丈を持ってしても動くことができるその巨人は僕を踏み潰そうとしていた。

 僕は【転移球(テレポーター)】を自分に放り、その踏みつけから逃げる。焦りから着地に失敗して坂を転がる。急いで立ち上がって後ろも確認せずに走りはじめる。ドシンという音だけで追ってきているのが丸わかりだった。

「はぁはぁ……」

 僕が必死で逃げても、ジャイアントはたった一歩で僕に追いつく。

「くそっ!」

 どうしてこうなったのか、回想する。

 船着場から真っ直ぐ進み、分かれ道を左に行ったら草原に出た。

 それから街を探して探索しているととボスゴブリンぐらいの図体のゴブリンに遭遇して、それを【速球(ブレイカー)】で倒しながら、さらに草原に進むとジャイアントと遭遇した。はい、回想終了。

 それから逃げ回っている。迷ったら利き手に進めば良かったんじゃないのか。

 【速球(ブレイカー)】を投げてみたけど、工夫のない直球は手で払われて終わる。

 同時に僕は限界だった。

 精神的にとか肉体的に、じゃない。いやどちらかと言えば肉体的にが、近いかもしれない。おなかが減っていた。激烈に。意識も途絶えそうなほど僕はおなかが減っていた。朝から何も食べておらず、戦闘を繰り返していた。すぐに街に辿り着く、そんな僕の楽観が今の事態を招いていた。

 【毒霧球(ポイゾナー)】を放った直後、僕の意識は飛んだ。たぶん、空腹で。

 そんな僕が見た最後の光景は――


 ***


「ブラジルさん、人が倒れてますよ」

 茶色の髪をたなびかせながらショートボブの女は隣にいる白髪の目つきの悪い男へと投げかけた。男は後ろで結わえている髪を揺らしながら答える。

「珍しいな、魔物(モンスター)に連れ去られることなく一晩も生きてるなんて、どこのアホだ?」

「【毒霧球(ポイゾナー)】の効果がまだ薄っすら残ってますね。とりあえず身元確認のために【分析(ステータス)】を使っておきましょうか?」

 女は草原に倒れているレシュリーに【分析(ステータス)】をかける。女の目の前に半透明の板が出現し、そこにレシュリーの情報が表示された。

「ああ、頼む。にしてもこのバカ、なんていう幸運だ。それとも計算してバカしてんのか? ここの魔物(モンスター)のほとんどが私のおかげで毒が苦手になってなかったらこんなに安らかに寝息を立ててないな」

「ブラジルさん、この子。今朝の新聞に載ってた注目の新人ですよ。ニ年前の落第者です」

「あー、私の職業を壊滅的に追い込んだ第一人者か……」

「どうします?」

「別にどうもしない。一応、このバカをキャンプに連れて帰ろう」


 ***


「よう、起きたか。バカ」

 僕は起きて早々、不機嫌な顔になる。

「ブラジルさんの言葉遣いの悪さは気にしたら負け。いつも毒舌なんだよ」

 声に振り返ると茶髪の髪をした女性が柔和な笑みを振りまく。

「それに助けたのは私だぞ。睨まれる覚えない、このアホめ」

「助けた?」

 寝る前の状況を整理しようとすると

「キミは倒れていてアタシやブラジルさんが助けたんだよ」

 そう言うと女性は焚き火のうえの鍋からスープを掬い僕に手渡す。

「ありがとうございます」

 香ばしい匂いの誘惑に負け、僕は迷わずそのスープを飲んでいた。忘れていたが僕が空腹だった。

「ハハハ」

 その光景を見ていた名も知らぬ女性は僕を笑う。

「なんてアホ面だ」

 ブラジルと呼ばれた人もそう言うのだ。

 そこまでがっついていたかな。まあいいや。

「ところであなたたちは?」

「アタシはネイレス・ルクドー。あっちはブラッジーニ・ガルベーって言えば分かる?」

「確か[十本指ザ・ゴールデンフィンガー]の毒師(ポイズンマスター)……」

「って呼び方は気に入らねぇーぞ、バカ野郎。ここらで経験稼ぎする冒険者から私はこう呼ばれている。毒物を極めた男ポイズンモンスターマスターってな」

「どっちだって変わらないよね」

 ネイレスさんが囁いて苦笑する。

「ブラジルさんは召喚士で毒系、正確には毒素系の魔物(モンスター)を使うのよ」

「絶滅種ですげぇー珍しいわけよ。さらに、【封獣結晶(キューブ)】自体も貴重になったからな」

「どういうことですか?」

「お前だよ」

「僕ですか……?」

「ニ年前、投球士で落第者とやらが出た。そのせいでそれからのニ年間、投球士を選ぶ人間はいなくなったどころか、大陸でも投球士の可能性の低さに絶望して転職(ジョブチェンジ)するやつらが続出した。結果、召喚士が必要とする【封獣結晶(キューブ)】、魔物(モンスター)を封じ込めた球のことだがそれを作れる封獣士も激減した。だから召喚士もそれに比例して減る一方だ。分かったかこのゲスが」

「……ごめんなさい」

 流石にそれが僕のせいだとするとへこんだ。

「まあ、別にお前を恨んじゃいねぇーよ、バーカ」

「ブラジルさん、やっぱり毒舌のせいでそうは聞こえませんよ」

「そうかもしれんがそれならそれでいいよ。気にするバカが悪いんだ、全て。で本題だ。どうしてここに来た?」

「ここって言うと?」

「この大草原のことだ。誰かに言われなかったか、迷ったら利き手に進めって」

「進んだ結果、ここに来ましたけど……」

「そりゃあアホすぎるぐらい不運だな」

「どうしてですか?」

「大抵の冒険者の利き手は右だから右に進めってことなんだけど、キミは例外だもんね。キケンなほうに来てしまったわけね」

「つまりお前はトコトンついてないアホ野郎ってことさ。ここから街は遠いし、街に行ってもおそらく長時間拘束されるだろうし、そもそもこの大草原でネイレス以外のランク1は生きていけないし」

「いろいろ言われてますけどほとんど何のことやらって感じですよ?」

「整理して言って欲しいならそう言え、バカ。まあ私が説明するのも面倒だし、ネイレスがしてやれ」

「ここから街が遠いってのは省いていいかな? そのままだし」

「ええ、その次の拘束ってのからお願いします」

「キミがいつから倒れていたか分からないけど……今日の朝刊でこういうものが書かれているのよ」

「これって……」

 渡された新聞の記事にはランク1になったばかりの冒険者の順位と記録などが羅列され載っていた。一位の名前は僕で、でかでかと僕の顔まで載っている。

「そして記事にはこう書いてあるわ。情報なしって」

 確かに、ニ位のリアンとかには、身長や体重に装備などのあらゆる情報が書かれている。

 その中身よりきちんと合格していたことに僕は安堵していたのだけれど。

「情報なしじゃ駄目なんですか?」

「別に駄目ってことはないと思うけど、それでも集配社(ライブラリアン)は情報を第一に考えるの。つまり見つかったら質問攻めにあって拘束されるわ」

「それは困りますね……。僕、探したい相手がいるんですよ」

「確かにそれだと時間が欲しいよね」

 同意するようにネイレスが言う。

「できるだけ草原を越えて街に着きたいんですけど」

「アタシ以外は生き残れないよ、ランク1じゃ」

「それ、確かブラッジーニさんも言ってましたよね?」

「その名は堅苦しい。陽気さが湧きそうなブラジルって略にしてくれ」

「ブラジル……ですか?」

「ああ。もちろん呼び捨ては禁止だぞ」

 ニヤリと笑うブラジルさん。

「なんでアタシ以外のランク1は生き残れないかって言うとね、ここは基本的にランク3~5の冒険者の狩場だからだよ。大抵それ以下の冒険者は死ぬね」

「それって理由になってる?」

「アタシはずっとここでブラジルさんと暮らしてるからね。ここで暮らせていることがアタシは生き残れるって証明にならない? ちなみにランク1のままなのは試練を受けてないから。レベル上限にとっくに達してるけど、レベルが上がらないだけで経験値は積めてるし」

「そういうこともあるんだ。でもなんで共闘の園(タッグパーティー)を受けないの?」

「試練の名前がまんま答えよ、二人一組じゃなきゃ受けれないからね。パートナーがいないよ」

「……ふーん。じゃ例えばだけど僕となら受けれたりするわけですね」

「そうね」

 そう言うネイレスはどこか物哀しげだった。

「ということで整理終了。補足するとお前は最後に使った【毒霧球(ポイゾナー)】のおかげで運良く生き残って私に助けられたわけだ。で助かったお前は今後どうしたいんだ、マヌケ」

「……僕ですか。僕はとりあえず街に行ってアリーを探したいんです」

「アリー?」

「僕が探してる相手です」

「なるほど……な。だが街に行けばさっき言ったように拘束されるだろうな」

「どうすればいいんですか?」

「手はある。がその前に遊牧民の村へ行くぞ」

「どうしてですか?」

副職(サブ)をつけてない新人をつれて歩けるかよ、バーカ」

 僕の頭を小突いて豪快にブラジルさんは笑った。


 ***


「でここが遊牧民の村。つってもこの場所には三日間しかいない。三日休んで三日移動するのがこの村の特徴。ちなみに自慢だが、私はその移動方法及び移動場所、日時まで全て把握している」

「適当に聞き流せばいいよ」

 ネイレスがそう言う。

 不思議なことにここに来るまで魔物(モンスター)に遭うことはなかった。

 そういえばこの遊牧民の村は安全なんだろうか。

「私は用事があるからよ。ネイレスと一緒に職屋(ジョブセレクト)に行ってくれ」

 ブラジルさんが去っていく。案外無責任だ。

「無責任だと思う?」

 僕の思考を読んだようにネイレスが言う。

「この草原の魔物(モンスター)はね、ブラジルさんが頑張って毒に弱くしたんだよ。キミはそれを知らなかっただろうけど【毒霧球(ポイゾナー)】を使ったから草原で倒れていたのに生きているんだよ。この村だってそう、定期的にブラジルさんが毒を提供しているからこの草原で生きていけるの」

 なるほど、だからこの村はこの草原に在るのか。

「じゃ行こっか。職屋(ジョブセレクト)に」

 僕は頷きネイレスに続いて職屋(ジョブセレクト)に入る。

 職屋(ジョブセレクト)に入ると、ネイレスを見つけた店員が声をかける。男性なのだろうがところどころに女性の仕草が混ざっていた。

「あーら、ネイレスちゃーん。まさか転職(ジョブチェンジ)する気?」

「ううん。アタシじゃないよ。この子に副職(サブ)をつけてあげようと思ってね」

「新人?」

「まあそんなところ」

「ふーん。でその子、基本職(アマチュア)はなーに?」

「投球士です」

「落第者が生まれてから投球士っていなくなったんじゃなかった?」

 その本人だと言ってもいいのかな?

 判断に迷っているとネイレスが

「この子は周りの反対を押し切って投球士になったのよ」

「なるほどねー。だとしたら今の時代、重宝されるよん」

 職屋(ジョブセレクト)のおじさんが資料を提示する。

 そこに書かれた複合職(スタンダード)に僕はなれるのだろう。

 表示されているのは六つ。当然、本職(メイン)が投球士のものだ。

 外野士、魔球士、剣投士、盗塁士、薬剤士、封獣士。それぞれの説明を読んでいく。

 剣士が副職(サブ)の外野士は援護系球技の大半を失う代わりに棒のほかに剣を使うことが可能で、さらに剣や棒を用いて球を跳ね返すこともできるらしい。

 魔法士が副職(サブ)の魔球士は、魔球という技能が使用になる。魔球は超変則的な動きをする球らしい。

 魔法剣士が副職(サブ)の剣投士は球だけではなく剣を投げれるようになる。投げた剣は種類や大きさによって威力が違う、と書いてあった。

 盗士が副職(サブ)の盗塁士は己の素早さの向上及び対象の素早さ減退が可能になり、さらに回避技能が使えるようだった。

 癒術士が副職(サブ)の薬剤士は癒術を込めた球を投げれる。今までの投球に加え回復球を使用できるうえ、【合成(リモデル)】も可能になる。

 操士が副職(サブ)の封獣士は弱った魔物(モンスター)を【封獣結晶(キューブ)】に捕らえることができるらしい。捕まえた魔物(モンスター)は召喚士しか使えないため封獣士はあくまで捕まえるだけらしい。

 さてどうしようか、と迷ってみるのは定番。一応それにしようと決めていたものがある。

 僕は副職(サブ)を癒術士に選択していた。

「薬剤士ねぇー」

 ネイレスが呆れたように呟く。

「なんですか?」

「いや、一番人気がないやつ選んだなーって」

「……えっ? そうなんですか?」

 それは意外だった。攻撃、援護に加え、回復もできるなんて万能で重宝されるものだと思っていた。

「そうよ。他の副職(サブ)が癒術士の複合職(スタンダード)本職(メイン)が癒術士の中で一番回復量が少ないし」

「まあでも、僕にはそれが似合ってますよ、きっと」

 落第者にはそんな職業がお似合いだと自虐してみる。

「まあキミが選んだんだし、いいと思うよ。オススメはしないけど」

「もしかしてブラジルさんにも呆れられますか?」

「たぶん。ブラジルさん的には封獣士になったらいいなって思ってるよ。言葉には出さないけど召喚士だしね」

「じゃあ存分に呆れられますね」

 そして僕の言葉は的中する。


 ***


「クソだな。クソ」

 ブラジルさんと合流し、ネイレスが僕が何になったかを言った途端、ブラジルさんが言った言葉がそれだった。

「なぜにお前、薬剤士を選ぶかな。一番使えないって言っても過言じゃないよ。まだ盗塁士のほうが使えるよ。まあ盗塁士も目クソ鼻クソだけどよ。でもその選択はあえて言おう。クソであると。ゲスの選択でバカでマヌケでアホだとっ!」

 すごい言われ方だ。

「とあまりのショックに私はいつものように毒舌全開なわけだ。でお前はやっぱり街に行きたいんだよな?」

「はい。そうです」

 その意志は相変わらず変わってない。

「じゃ条件は三つ」

「多いですね」

「何、簡単だ。まずひとつ。ここの村長に依頼を頼まれたからそれに付き合え。まあ見てるだけでいい。私の戦いを自慢したいだけだ」

 ブラジルさんはそうとう自慢したがりなのかって疑問が生まれた。

「自慢したがり、見せたがりなんだよ。他の冒険者はあんまり大草原に来ないし」

 ネイレスが耳元で囁く。やっぱりそうなんだ。

「で次。お前が持ってる短刀〔嘘吐きテアラーゼ〕をくれ」

「なっ!? なんで僕が持ってることを知ってるんですか?」

「ネイレスが【分析(ステータス)】したからに決まってるだろ。【分析(ステータス)】されると情報筒抜けだ。フツーは最初の街で"保護封"って道具を買うのが常識だ。ま、そんなのランク1の頃は知らないから大抵、祭のときに【分析(ステータス)】攻めにされるのがオチだけどな。もっとも使った相手の抵抗力とかが強いと筒抜けにはならない。祭のときに来る集配員(レポーター)はザコが多いから歯抜けの場合も多かったりする」

 だから新聞にリアンとかの情報が載っていたわけか、と今更ながら納得する。

「でとりあえずくれ。ただでとは言わんがな」

「交換ってことですか?」

「ああ、私のくれってのは交換してくれってことだ」

 ややこしいですね、と嘆息するとネイレスが笑う。

「短刀〔嘘吐きテアラーゼ〕が欲しいのはアタシなの。ブラジルさんはアタシの代わりに言ってくれてるだけ」

「そうなんですか」

「キミが大金はたいて買ったのも分かるからブラジルさんは交換って言ってるんだよ」

「分かりました。で交換するのはなんなんですか?」

「私が出すのは保護封〔マスク・ザ・ヒーロー〕だ」

 ブラジルさんが見せたのは目の部分を覆い隠す仮面だった。

「なんですか、それ」

「保護封ってのは【分析(ステータス)】阻害の役目があるんだが、これは隠蔽どころか情報改竄をしてくれる。レア中のレアだ。それとなんでもない短刀を交換してやるんだからありがたく思え」

「交換するとは言ってませんけど」

「なんだ、しないのか」

「いや、ネイレスさんが欲しそうなので交換はしますよ」

「そりゃありがたい。たまにはマヌケも役に立つもんだな」

「でなんでそんなに欲しかったんですか?」

「短刀〔嘘吐きテアラーゼ〕の柄に凹みがあるでしょ?」

「ええ、なんだろうとは気になってました」

「これはこれとくっつくのよ」

 ネイレスが見せたのは短刀〔正直者アリサージュ〕。その短刀の柄には凸の部分がある。

 それが短刀〔嘘吐きテアラーゼ〕の凹みとがっちり一致する。

「これで上下刀〔どちらの道へアトス兄妹〕が完成よ。二人が出会ってようやく真価が発揮できるの」

「良かったな、ネイレス」

「ええ」

「で三つ目の条件ってのは?」

「ネイレスをランク2にしてやってくれ」

「ブラジルさん、何を!」

 驚いたのはネイレスだった。

「ネイレスもいい加減ランク2になるべきだ。永遠の新人なんて皮肉な呼び名なんて私は気にいらない。こうしてランク1の冒険者が偶然、この草原にいる。この機会を逃したら駄目だ。このクソ野郎を利用してランク2になれ」

「でもアタシは……」

「私はまだ死なんよ。私の身体は私が一番よく分かってる。ネイレスが居なくてもニ、三年は余裕だ」

「僕はその条件も呑みますよ」

「そりゃありがたいな。私はこの草原から出れないが、経験稼ぎにくるランク4や5の冒険者やらからアリーについて情報を得といてやる。お前を街の近くに送ってからな」

「条件つけた割にはなんやかんやしてくれるんですね?」

「バカ野郎だな、お前。私は初心者には優しいんだよ。好印象を与えたいからな」

「ブラジルさん、やっぱりアタシ……」

「うじうじ悩むな。私に従え」

 その言葉でネイレスは吹っ切れたように見えた。

「分かりました」

「さてと、まずは条件どおり、依頼についてこい。それと仮面は装備しろよ。仮面はお前を守ってくれる。ちなみにその仮面をつけている間、お前の名前はレシュリー・ライヴじゃない」

「なんなんですか?」

「マスク・ザ・ヒーローだ」

 それを聞いて条件を呑むんじゃなかった。そう思った。

「でどんな依頼なんですか?」

「まあ、魔物(モンスター)退治だな。お前の出る幕じゃねぇよ。言ったとおり私が自慢したいだけだ」

「そうですか……。でも、ここの草原の魔物(モンスター)は、ブラジルさんの毒に近寄らないんじゃないですか?」

「ここにもとから居た奴らは、な。ここが安全だと思いこんで逃げてきた魔物(モンスター)は違う。魔物(モンスター)は何があろうと一定の場所に留まる奴らと冒険者や外敵から逃げ出して簡単に違う場所に行く奴らがいるわけよ。で後者は毒を恐れないから遊牧民の村を襲ったりする。そいつらにとっては飯や繁殖道具の溜まり場だからな」

「だから、そんな魔物(モンスター)にここは危険だと教え込むってことですか?」

「そんな甘いもんじゃねぇーよ、バーカ。いたぶった挙句、ここに入ってきたことを後悔させながらじわじわと殺すのさ」

 そんななか笛と喇叭を同時に鳴らしたような声が聞こえた。

「戦闘の雄叫びだ。経験稼ぎに来たランク4か、無謀なランク3が遭遇しやがったらしいな。急いでも急がなくても結末は変わらないが、ここはいっちょ急いでみるか」

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