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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-63 総集

 アドラクティアの森に関係者が揃ったのを見計らってディエゴは語りだす。

 今までのことを。

 エースという脅威のことを。


「エースの目的は王を殺すことだった」

「それは王家転覆ということですか?」

 まず第一声に目的を語ったディエゴにアルは素早く問いかける。

「だとしたらエースを中心にして王家ができあがっているだろ?」

「つまりエースは王になることを望んでいなかった?」

「いやエースは自分が王と自覚していて王と認められなかったのがいやだった節もある」

「じゃあどういうことなんですか?」

「エースの行動には不可思議な行動が多いからな。おそらくでしかないが、エースは自分が王であると自覚して、他の王が世界を治めている。ただそれだけで許せなかったんだろな」

「ただそれだけで……ですか」

 リアンからしてみればかなりショックだろう。自分の父親、王はきちんと王政をしいていた。

 多少の不平不満は生まれてるものだが、それでも王である自分ではない偽物が王政をしいていたのが許せないというのは不条理だろう。

「俺のようなレッサーを持つフォクシーネ家が王家転覆を狙うならまだわかる。俺にとっては実父ではあるが王を倒して、その後、王政を維持するならわかる」

「でもエースは違ったでするな」

 サスガは言う。

「王政をしくわけでもない、他の制度を制定するわけでもない。王を倒すだけ倒してその責務を放棄した」

 ディエゴもトワイライトもサスガも幼いアルやリアンと比べればその当時も大人だった。物事は理解できる。

 レッサーを持つディエゴもまだ王の血を引くということで優遇はされていたため、城下町には住んでいた。

「どう暮らしていくのか不明で時代が移り変わり、町ごとに制度を制定してようやく落ち着いたのが現在、β時代だ」

「でもエースは捕まっていたんですよね?」

「そう。当時の大臣がリアンの居場所を教えるというのを条件に捕まるというエースの条件を呑んだんだ」

「世界は混乱していたし、そうしなければならなかった。苦渋の選択でするな」

「なんで私なんですか?」

「王家の正当な血を継承しているからだ」

「でも……、だとしたらなんで今だったんですか?」

 アルが疑問を呈する。

「リアンがランク5になり、正式に王の継承権が発生した。だからエースは動き出した。王がふたりになってしまうのが、許せないからだ。王族なら継承権が発生するランク5に一定の価値を見出した貴族よりもたちが悪い」

「でも逆に言えばそれまでは動き出さないという逆算ができたわけでするな」

「だから私達は虎視眈々と力を蓄えた」

「まあジョーカーの野郎だけはその前に別の理由で大騒ぎを始めたが、それは準備の一部を兼ねていたのかもしれない」

「ついで言えば王は家具の封印によってエースは封印され、キングという元からあった別人格が表面化した」

「そもそもキングこそが王家滅亡の主犯だと思っていたでするが、そこらへんはサンスの手柄でするな」

 サスガは自分で言って、木陰に横たわらせているサンスを物悲しく見つめた。

 五人でいた日々がどれほど貴重だったのか今更ながら痛感しているようだった。

「もともと俺がちょこっと怪しいと思って調べさせたんだけどなぁ」

 サスガの気分を晴らすように軽口を叩いて

「そしてその封印した家具がリアンがクイーンに頼まれた無理難題の家具だった。結局、徒労だっただろ。なにせ、クイーンがひとつを除いてすべて最初から持っていたんだから」

「ええ。兄さんも意地悪です。最初から教えてくれていれば……闘球専士たちに犠牲も出ませんでした」

「その代わり別の犠牲が出たさ。クイーンはエースの目的もわかっていた。だからリアン、お前を苦しめることならなんだってやってた」


「そのなかで一番犠牲が少ないものが絶対に見つけられない無理難題に付き合わさせることだったぁ。俺は誰かさんみたいに犠牲者0は目指さない。資質者を殺しておいて他の犠牲者を出さないなんて虫が良すぎる」

「結局、資質者を倒していたのはなんだったんですか?」

「このためだよ。詳しくは話せないが、予言みたいなもので、資質者に殺される可能性が一番高いと云われていた。だから、エースを倒す前に殺される可能性とやらを減らしておこうと目論んだ。今更、それが出さなくてよかった犠牲だなんて言うつもりはない。そもそもその結果的に義手になったわけだしなぁ」

「あんまり代償とは思えないでするな」

「だがよぉ、技能の熟練度は実はガタ落ちしてるんだぜぇ、こう見えてもよ」

「ともかくクイーンは九尾之狐、転倒童子を従え、そして疫病を撒き散らした」

「そうだなぁ。まさかトワイライトも感染するとは思わなかった」

「言うな」

「結局、その目的はなんだったんですか?」

「世界的混乱に俺たちへの嫌がらせ、最後の家具集めまでの時間稼ぎ。まあ色々だろうな。」

「エースもその間、動き回っていたようでするな」

「ああ、で同時にジャックも動き出していた。ジャックがよく分からないがどうにも操られていた。元はフォクシーネ家の関係者だったのかもなあ」

「そんな人が今まで極悪人とされていたのですか?」

「不祥事はもみ消す、王家やそれに連なる家々にはそんな奴らもいた。そういうこったろうな。分かっていれば操られているのを元に戻すのに少しは注力したかもなぁ」

「でするな。結局ジャックどのに関しては今ある情報以上のことはわからないでするし。結局、彼は何の複合職だったでするか?」

「さあな、それすら記録がない」

「何にせよ、ジャックにレシュリー、そしてジネーゼだったか……そいつらの活躍もあってエースは倒せた」

「ジネーゼもいたんですか?」

「ああ、リーネって子は残念だったが……あれは防ぎようがない。それでユーゴもやられた」

 ユーゴの遺体はサンスの隣に横たわっている。

 そして言葉からリーネがどうなってしまったのかリアンとアルは気づいてしまった。

「そんな……リーネが……」

「知り合いだったか」

「同期ですよ」

「それは……辛いでするな」

「アル、あとでお墓参り行こう」

「ああ、ジネーゼに場所聞いて、行こう。必ず」

 ジネーゼとの和解のあとにそれなりに交流できたのは幸いだったのかもしれない。

 和解できずじりじりとこうなっていたら、哀しみよりも後悔が勝っていただろう。

 後悔は何より後に引きずる。ああしておけば、と唐突に思い出すから厄介なのだ。

「あとは黒騎士でござるな」

「それはもう考察した通りだろう。人の技と記憶を奪う黒騎士は奪った記憶を蓄積しているんだろう。だからその黒騎士の残滓がエースを仕留めた。やつが奪った記憶のなかにエースに復讐したい相手がいたのだろうよ」

「いつか対峙するのでするか?」

「さあな、当面は終極迷宮に入り浸るからな」

 アルやリアンにはどこに入り浸るか聞こえなかったが

「とエースとの戦いはそんな感じだ。」

「ユーゴだったら、娯楽番組の総集編を見ているよう、って言いそうでするな」

「これで俺の復讐は終わり、リアンを狙う最大の障壁は排除した。あとは好きに生きろ。王女になるつもりなんてないだろ」

「今はまだありません」

「今は、でするか……」

 サスガとトワイライトは苦笑い、ディエゴは快活に笑う。

「まあ、選択肢として取っておくのは悪くねぇか」

 素早く立ち上がるとディエゴはサスガとトワイライトを一瞥。

 ふたりが、サンスとユーゴの遺体を背負うと

「じゃあな」

 まるで世界から消えるように足早にその場を去っていた。

 その別れは実にあっさりとしたものだった。

「すぐにいなくなったな」

「実に兄さんらしいです」

 あったように感じられたリアンとディエゴのわだかまりはそのわずかな会話で泡となって消えたように思えた。

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