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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-59 手帳

「何があったの?」

 リアンやアルたちが追いついたというのにも驚きがあったけれど、

 エースの死体にはもっと驚きがあった。

 明らかに剣に突き刺された痕が残っていた。

「アルが止めを刺したの?」

「違ぇ。こいつらじゃねえ、そして俺でもねえ」

 僕の問いかけに答えたのはディエゴだった。

「じゃあ誰が?」

「アネクです」

 アルの言葉に耳を疑う。アネクは死んだはずだ。いやもしかして……終極迷宮を体験した僕には思い当たる節があった。

「違ぇ。そして別次元(サーバ)のやつでもねえ。NPCが次元転生、次元転移できるわけもねえ。あれは似て非なるもの。倒したのは黒騎士だ」

 倒したのは黒騎士だ、ぐらいしかアルは聞こえてないのだろう。ランク7にならなければ終極迷宮などの用語は理解できない。それが世界の仕組みだった。

「黒騎士……。倒したわけじゃないけど…出会ったことはある」

「あの魔物は真実がどうか分からないが、人の技と記憶を奪うらしい」

「らしいってのは?」

「推測だからだ。俺が出会った黒騎士とさっきの黒騎士は武器も技自体も違う」

「じゃあ、もしかして別次元(サーバ)のアネクの技と武器を?」

「だとしたら黒騎士は次元転移してるってこと?」

「単純に終極迷宮に入れるんだろう。俺が出会ったのはそこでだ」

「なるほど。でもエースを倒したのはどういうこと?」

「武器や技を奪うってことは少なからず精神も奪っているってことだ。その残滓が黒騎士を突き動かしているのかもしれない」

「さっきから何を会話してるんです?」

「まだ、お前には知る必要のないことだ。少なくともランク7にならないとわからないことがある。だが……」

 ディエゴはリアンを優しく見つめた。

「俺の戦いはひとまず終わった。話してもわからないところはあるが……それ以外のことは説明するよ」

 ディエゴらしくない優しい口調で、リアンへと囁いた。

「僕たちはジャックがいたっていう牢屋に行ってくるよ」

 ディエゴの話はリアンやアルたちだけで聞くべきだろう。

 僕とアリーはそそくさと飛空艇でジャックの痕跡を探しに牢獄を目指すことにした。


***


「ジェニファーもついてきていいよ」

「カシコマリマシタ」

 エースとの戦いでは留守番させていたジェニファーは退屈だろうとそう命じる。

 どことなく楽しげだった。

 ジャックがいた牢獄はヴィヴィがかつて収容されていた刑務所の地下にあるという。

「久しぶりだね、レシュ」

「少し痩せた? ヴィヴィ?」

 その刑務所はまるで廃墟のようだった。

タンアツ(兎星)が大暴れし、修復しようとした矢先、疫病禍でそれどころでなくなった。

「私も一応癒術士系複合職だからな。大変だったよ。キミが薬を開発するまではね。それでもようやく落ち着いてきた頃だ」

「それで何用なんだい?」

 話を繋げるように、横やりを入れるように用件を訪ねてきたのはタブフプだった。

「いや、喋ってるのはこっち」

「こっちじゃないピーボルくんだよ」 

 タブフプがピーボルと呼ばれた人形を指差し、こっち扱いされたピーボルくんが怒鳴る。

 ヴィヴィに腹話術を教えた滑稽な格好をした道化師(エンターテイナー)だった。

「ジャックの牢獄を見たくてね」

「ジャック……そう言えば南の島に行ったとは風の噂で聞いたが、集配社も大変で情報が曖昧で……どうなったんだ?」

「彼はエースとの戦いで死んだんだ。エースっていうのはリアンの仇で、ジャックはエースの仲間だったと思ったら、操られていたり……彼に対してよくわからないんだよ」

「確かにごちゃごちゃしてるな」

「それにジャックはランク8だった。だからランク8の試練の明確な場所や、ランク9に至るための情報を持っている可能性もあるんだ。だから牢獄を見たい」

「なるほど。そういうことならミリアリアさんを呼んでくる。私が案内してもいいが、私は別にここの所員というわけでもない。勝手に動くのも悪いだろう」

「そっか。じゃあ呼んできてもらえる?」

 数分後、ミリアリアさんが走ってやってくる。そんなに急がなくても。

「ジャックが死んだというのは本当かい」

 僕が頷くと

「そうか……」

 何か想うことがあったのかもしれない。

「こっちさ。ジャックの監獄は。ついておいで。持っていたものはそのままにしている。誰も入ったりしてない」

 ジャックの牢獄は実に簡素だった。拘束具の痕跡に、誰かが死んだような跡だけがある。あとは何もなかった。

「手かがりなし。もしかしたら【収納】してて、それが闇市に流れてしまっているのかも」

「牢獄が見たい、というのはジャックの持つ何かが知りたいということだったのか」

「そうか。私はてっきり牢獄に情報があるのかと思って、ミリアリアさんに牢獄を見たがっているとだけ伝えたんだ」

「ふむ。ジャックの私物だったら一部は管理室で預かっている。拘束具で【収納】は封印されるが、収容前に一部道具などは没収しているのさ。そこに確か、手帳があった」

 そう言ってミリアリアさんに案内されるまま、管理室へ連れて行ってもらう。

「この手帳の中身は見てみたが、半端に白紙の部分がある変な書き方をしていたよ」

 受け取った僕がその手帳を見てみる。

「いや、これは……」

 ミリアリアさんが白紙だと思ったのは無理もない。

 終極迷宮のことや、ランク8のことについて書かれてあった。

 ランク7以上の冒険者が見ればわかる。

 そんな仕組みになっているのだ。

 僕は淡々と目を通す。

「ちょっと私にも見せなさいよ」

 アリーが手帳を覗き込む。

「時間がかかりそうね」

 びっしりと書かれた文字にアリーは辟易していた。

「場所を用意しよう。なんならその手帳も持っていっていい」

「ありがとうございます」


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