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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-58 脱出

「ハハハハハハハハ!」

 燃えに燃え、消し炭となってもエースはなお不気味に笑う。

「もうお前の負けだぁ、エース」

「だったら手を止めるな」

「そのつもりだ。息絶えるまで、もう俺は手を休めるつもりはねぇ」

「ケハッ、ケハハハハハ」

 ディエゴにはエースの言葉は負け惜しみのようには見えなかった。

 だから油断はしない。

「世界に嫌われすぎている、だったっけ?」

 エースはディエゴに告げられた言葉をディエゴに問い返す。

「……」

 ディエゴは答えず【弱火】の連射していた。

「世界がもし、エースにして王、王にしてエースを排斥したいというのなら」

 エースは痛みなどないと言わんばかりにおかしげに言葉を続ける。

「どうして、この技能は残ってるんだろうなあああああああああああ?」

 エースは火傷によって表情はわからないほど顔面は焼け焦げていた。

 けれど、確かに笑っていた。

 そうしてそれは発動する。

 エースが極度の致命傷を負ったとき、自動的に察知して緊急的に避難させる固有技能【脱出(イジェクト)装置パック

 デデビビの使う【降参(サレンダー)】に似ているその技能は、使用条件が限定的ではあるものの、自身が傷を負う不利益を被ることはない。

「小技で戦ってくれたお前とは相性が良かった」

 そう言ってエースはどこかに飛んでいく。

 エースを倒すにはこの固有技能を発動させずに倒す必要があった。

 数値的に言うならばエースは残り体力が5%でこの技能が発動するようにしていた。ざっくり言えば残り体力6%になった時点で、その6%を一気に削る必要があった。

 不敵に微笑むエースを取り逃がす可能性があったため、ディエゴは詠唱して攻撃階級10の魔法の使用して大幅に削るのを控え、小刻みに削るようにしていた。元よりそれが得意というのものある。

 それが仇となった。 

「この期に及んで取り逃がすかよ」

 舌打ち、ディエゴは後を追っていく。速度は【脱出(イジェクト)装置パック】を使用したエースのほうが早い。


 ***


 その道中、

「ようやく追いつきましたよ、兄さん」

「リアンか」

 渦中の戦いの噂を聞いてか、リアンはアルを引き連れて戦いの場に現れる。ここまで参加が遅れたのはまだ世界が不安定な情勢だからだろう。

「色々と説明してください」

「後だ。後で全部話す」

「本当ですか?」

 そうやってはぐらかしてきたディエゴをリアンは正直に信じられない。

「戦いはまだ終わっていないが、もうクライマックスだ。お前も、自分の父親や母親の仇を見たかったらついてこい。もう死にかけだがなぁ」

 その言葉もリアンにとっては信憑性がないものだったが、なぜだがついていけなければという使命感に駆られた。

「行こう、アル」

 アルは反対もせず素直についていく。リアンの両親が亡くなった戦いはアルの父親が亡くなった戦いでもあるのだ。


 ***


「なんだよ、そりゃ……」

 エースが【脱出(イジェクト)装置パック】によって着地したと思われるアドラクティアの森の奥地に遅れてディエゴが到着すること五分。

 そこには黒騎士と手に持つ屠殺剣に貫かれたエースの姿があった。

「黒騎士が……お父さんとお母さんを?」

「違ぇ。その逆だ。貫かれて死んでるやつこそが討つべき仇だった」

 ディエゴは想定外ながらもリアンを守るように前に出て、【弱火】を放つ。

「何が狙いだ?」

 【弱火】を屠殺剣で弾いた黒騎士は何も答えなかった。

 そのまま去っていこうとする黒騎士に今度はアルが吠えた。

「どうして……どうしてお前がその剣を持っているんだ? お前はアネクなのか?」

 そう、黒騎士が持っていたのはかつてアネク――アーネックが使用していた屠殺剣〔信義たるレベリオス〕だった。

 そんなはずないと思いながらもアルは叫んでいた。

 もちろん、闇市に流れて正体不明の黒騎士が購入したという可能性はなくはない。

 けれど見間違えるはずもない、【弱火】を弾いた太刀筋はアネクそのものだった。出会ってから死ぬまで一緒に旅をしていたアルが見間違えるはずもないのだ。

「応えろ!」

 涙ながらに問うアルを黒騎士は少しだけ振り返り一瞥。

 けれどそのまま去っていた。

「応えろ、アネク!」

 アルの慟哭が空に虚しく響いた。

 リアンも、そしてディエゴも想定外の出来事にただ呆然とするしかなかった。

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