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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-55 安心

「エースにして王、王にしてエース、再臨!」

 エースではなく王が言いそうな言葉を発して笑みをこぼしたのはエースだった。

 だが少しばかりディエゴにそれは不自然に映る。

 それでもアレがやってくる。

 さすがのディエゴもその技に恐怖を感じてしまっていた。

 どうする? 思考がフル回転する。

 それでも恐怖の表情だけは見せなかった。

「【迅速時限(QTE'n)出死事(Death)】」

 エースは言った。

 呟きでも囁きでもない。ただおはようと挨拶するような感覚で言った。

 圧倒的強者の圧倒的技能。

 反則技。

 が対象にされたディエゴとジャックには当然効果がない。

 【無差別級芸術(アートランダム)】によって誰かが殺された。

 思わずディエゴは【絶封結界(ホリゾントバリアー)】を解除しようとした。

 けれどディエゴはエースの表情の機微を拾っていた。

「世界に嫌われ過ぎなんだよなァ!」

 まるで分かったかのようにディエゴは笑った。

「さしずめ、能力低下は収まったが、いくつか固有技能を没収されただろォ」

「だからどうした」

 その返し言葉だけで図星であるとディエゴに伝えているようなものであった。

「ちょうどいいハンデだ」

「クックック」

 言い訳じみた反論にディエゴは笑う。

 何もかも好機。

 最初は不運だと思ったが、ジネーゼの復活から全てが覆った。

「生贄。言わば生贄だ」

 エースは言う。

「【迅速時限(QTE'n)出死事(Death)】という生贄を捧げて、能力低下をなくしたと思えばいい」 

 まるでわざと自分は弱っていますとヒントを与えられているようだった。

 けれど能力低下がなくなった。下げ止まったということは下がる可能性はもうないと思ってもいい。

 エースはジネーゼの毒の抗体と等価交換した程度だと割り切っていた。

 一方で好機だと思っていたディエゴはそれに気づけなかった。

 気づく暇すらなかっただろう。

 ジャックに首を押さえつけられるまでは。

 疲弊してさえいなければディエゴは伸びる手を避けれたかもしれない。

 いや、疲弊という条件で鑑みればジャックも同条件。

 だとすれば

「操られたのかよ、間抜け野郎が」

「一度疑わないほどの下僕として操ることができた人間を、一時的に簡易的に操ることなど簡単でしょう」

「どうやって……?」

「油断したんだ。安心もその要素だと思わない? ジャックはこう見えて仲間思いだからね、【迅速時限(QTE'n)出死事(Death)】がもう一度発動した瞬間、誰かが死んでしまうと心を痛める」

「だが……そうはならなかった……」

 苦絞められながらディエゴは告げ、そして気づく。

「そういう……ことか」

「そう。誰も死ななかったことに安心したんだ。ジャックなら安心する、そう踏んでいた。とってもとっても仲間思いだからね」

 それはレシュリーやディエゴのことかもしれないし、もしかしたらかつての仲間で今もなお生き残っていた仲間なのかもしれない。

 どちらにしろ、【迅速時限(QTE'n)出死事(Death)】によってジャックは対象にされ、【無差別級芸術(アートランダム)】によってジャックに関わりのある誰かが殺された。

 当然、そうなってしまったら憤怒しただろう。悲しんだだろう。それでも油断はしない。憎しみがその油断の壁を押しつぶすように操るという行為を押しのけるのだ。

 けれどそうならなかった。

 誰も死んでない、そう安心した途端、壁に隙間ができた。そしてエースはそれを見逃さなかった。

 そうして今がある。

「あっけない幕切れだ」

 エースは嗤った。復讐者を。

 そうしてディエゴは息を引き取った。

 瞬間、ジャックも元に戻り、

「きさっ――」

 全てを悟って襲いかかった時点ですでに遅い。

 魔充剣シーグブリートが腹に突き刺さり、そこから解放された業火がジャックを消し炭へと変えていく。

 【絶封結界(ホリゾントバリアー)】が使用者死亡により、解けていくように消えた。

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