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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-50 盗見

 ランク4冒険者ココ・ココデットは集配者になりたかった。

 大手集配社がこぞってなくなっていくのはココにとって予想外のことだったけれど、それならば自分で情報を切り売りすれば良いと思った。

 とはいえ、ココが得れる情報なんてもはたかが知れている。

 【分析(ステータス)】を用いて数値化した冒険者の強さを確認することぐらいだ。

 それでも確認した情報を【情報庫(ライブラリー)】によって保存しておけば、切り売りして集配者を名乗ることができる。

 【分析(ステータス)】は保護封という道具によって簡単に防がれてしまうため、その入手難易度は簡単なようで難しくもある。

 ランク1冒険者、島から大陸に渡ったばかりの冒険者ならまだしも、中堅とも呼べれるランク3~4の冒険者なら保護封は絶対に持っている物だ。

 だけど、それでも、

 ココは欲求が止められなかった。

 南の島をつなぐ橋、そこが壊され、海が凍り作り出された戦場。

 そこで戦う冒険者の情報を得たくて得たくて仕方がなかった。

 ココの目にはキング、(今はエース)の姿が悪に映る。

 勧善懲悪の物語には惹かれるが、完全超悪の物語にも惹かれた。

 圧倒的悪。それに惹かれてしまっているのだ。

 あいつに、いやあの方に【分析(ステータス)】を使いたい。

 それがどういう結末を導くのか、ココにはさっぱり分からなかった。

 それでも欲求が止められない。

 まるで自己意識を誰かに奪われてしまったかのように発動していた。

「【分析(ステータス)】!」

「おい、何してるんだよ」

 一緒に見ていた冒険者の制止の声は遅かった。

 すでに発動していた。


エース

LV1225(ランク7上限) 超剣師 ランク7

ATK:96162 INT:93100 DEF:66762 RGS:44712 SPD:104737 DEX:104737 EVA:65537


 それは圧巻だった。圧倒的だった。

 才覚もないのに、数値化された情報はいかに計算式を逆算したとしても一般的な冒険者の基礎値ではない。

 ココの無駄な才能である瞬間的に逆算してみたところ、基礎値の合計は破格の300だった。

 一般的な冒険者が10。才覚を持つ冒険者がだいたい20~30だとすると、300は異常値だった。

 エースの特典を見ることのできないココが恐怖の次に覚えたのは妙な気持ち悪さだった。


 次の瞬間、ココが傷だらけになって倒れた。

「おいっ!」

 制止していた冒険者が驚きの声をあげる。

「言っとくがオレじゃねえ。こいつが勝手に血を吹き出して倒れたんだ! くそ。回復錠飲めるか?」

 自分ではないと潔白を証明しながら、冒険者は道具による回復を促す。

「このなかに癒術士系か、癒術を使えるやつはいませんか?」

 冷静な冒険者が癒術士系複合職の冒険者たちが集まり、賢明にココの治療を行っていく。

「へへ、見てよ」

 一方でココは【情報庫(ライブラリー)】に記録したエースの能力値を他の冒険者へと見せつけていく。

 それを切り売りして集配者としてやっていくというのがココの夢だったが、ここに来て自分が手に入れた情報を見せつけたいという欲求が勝った。

 承認欲求を満たしたい、目立ちたい、それがココの夢の原動力だった。

 だからこんな状況でもココはエースの恐るべき数値を見せたくて見せたくてたまらなかった。

 それがすごく快感だった。

「なんで傷が止まらない?」

「へへへ、見ろよ、見ろ。これ」

 ココはそれでも笑う。本当は痛くて痛くてたまらないはずなのに、欲求を満たせているという興奮がそれを感じさせないでいてくれた。


「治療は無駄だぞ、愚民たち」

 南の島の状況を知らないはずのエースの声が届く。

「すでに発動してしまった【名簿削除(リストカット)】は、情報を見た者を決して許さない」

 言うやいなや、ココが振りまいた無自覚な情報を見てしまった冒険者もその対象となってしまっていた。

 エースの無慈悲な宣言通り、【名簿削除(リストカット)】がまるで記載された情報を隠滅しようとエースの情報を知ってしまった者たちを血だるまにしていく。

 ココの情報を見ていた最期のひとりが倒れ、その固有技能の暴走は止まる。

「ひどいと思うか?」

 エースがディエゴに問う。

「どうだろうな」

 ディエゴは否定も肯定もしなかった。


***


 ジャックの攻撃も、ディエゴの攻撃も通用していないように南の島で行く末を見つめる冒険者達には見えていた。

「これが早期突入特典〔寝る子は育つ(ヒュプノペディア)〕の強みか」

「二重人格だとすると効率が良すぎるでするな」

 ディエゴが嘆息するように感心し、サスガが辟易していた。

「想定外すぎるが、打つ手はあるはずだ」

 ちらりと向く方向からレシュリーがやってきていた。

 レシュリー・ライヴにアリテイシア・マーティン。

 ディエゴが想定してなかったランク7冒険者の出現はキング(現・エース)との戦いにおいてディエゴが想像し得ない何かをもたらしてくれる。

 ディエゴの戦意は消えることはないが、それでもほぼ無敵のエースに対して打つ手がなくなっているのが事実だ。

 ジョーカーのように冒険者の改造ありきではなく

 クイーンのように強力な魔物を調教して操るわけでもなく

 ジャックのようにランク8だったのを詐称しているわけでもない、

 エースは能力を特典によって底上げし、地力が強くなっている。

 もちろん、能力値だけで戦いの勝敗は決まらない。

 経験、戦闘技術、あらゆるものが戦いを左右する。

 投獄されていた分、眠っていた分、そのあたりはディエゴたちに一日の長がある。

 そう思い込まなければならないほどディエゴは想像以上に苦戦を強いられていた。

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