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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-49 対象


「リーネは?」

 今にも泣きそうな表情で、生き返ったジネーゼが第一声を上げる。

「……」

 僕は何も言えなかった。

 いや誰も何も言えなかった。

「ああ、ああ……ああああああああああああ!!」

 地面に横たわって冷たくなったリーネの体に縋ってジネーゼは泣き続けていた。

 隣にはユーゴの死体があった。

 

「おい、ジャック」

 ジネーゼのように泣くことも喚くこともせず、ディエゴはゆっくりと立ち上がって先にエースへと対峙していた男へと問いかける。

「お前は敵か、味方か?」

「さてネ。でもエースを倒そうとしているのは間違いないネ」

「そうかい。こっちもひとまずエースを倒しにきた」

 お互いがお互いの目的を告げる。

 利害だけは一致している。

 それだけ分かればいいのかもしれない。

 ジャックとディエゴは同時。遅れてトワイライトさんとサスガが動き出していた。

 サンスと僕は疲弊して動けず、アリーはトワイライトさんたちよりも反応が遅れていた。

 経験、死の経験の差だろう。

 ディエゴもトワイライトさんもサスガも、多くの死を経験してきた。

 もちろんサンスの力で死者が生き返ることもあっただろうが、大量に人が死ぬような、戦いもディエゴたちは経験してきた。

 その差。

 僕にもアリーにもその差を埋めることはできない。

 だからアリーは出遅れる。

 エースは両手で人差し指を親指でこするような――ハートに見えなくないような形を作った。また笑顔だ。

「【迅速時限(QTE'n)出死事(Death)】」

 今度の対象はジャックとディエゴ。

 けれどふたりはたじろぎもせず、逡巡も躊躇いもなく、エースへと向かってく。

 今度は誰も死ななかった。

 いや何も起きていなかった。

「やっぱり制限付きか」

 ディエゴが笑うとエースは笑う。

「ただし精神摩耗も疲労困憊もなしだ」

 それを聞いて安堵できるだろうか。

 一日二回誰かを即死させる技能。それは恐怖でしかない。

 しかも使用したことで精神摩耗も疲労困憊ないということは使い得でしかない」

「ちなみに」

 エースは魔充剣シーグブリートを取り出し、構える。

 アリーと同じく超剣師だった。

 二連撃。

 一振り、一振りに【弱火】が宿っている。

 対象はジャックとディエゴ。

 けれど、突然向きを変え【弱火】はトワイライトとサスガへと強襲。

 なんとか回避するが驚きを隠せない。

「おいおい、なんだそりゃ」

「対象が変わった? それが特典、とみるのはエースに限って早計でするか」

「エースの早期突入特典は〔寝る子は育つ(ヒュプノペディア)〕サ」

 ジャックが言う。それだけでこれが特典ではない、と理解できる。

「じゃこれも固有技能でするか」

 サスガの問いかけに答えたのはエースだ。

「【無差別級芸術(アートランダム)】。対象を自己意志ではなく、常時発動技能に委ねる常時発動技能だ。お前らに守れるか?」

 つまり、エースが狙っている相手に素直に攻撃が飛んでこない。

 後衛の魔法士系を守ろうとしても、前衛の剣士系に飛んできたりと他の人が守りたくても守れない。

 自衛するしかない。

 それがこの【無差別級芸術(アートランダム)】の効果だった。

 僕は気づく。

「アリーはディエゴに合流して」

「あんたは?」

「守らなきゃ!」

 視線の先にジネーゼがいる。

「この場から離脱させる」

「そうね。それが賢明」

 アリーも納得した。

 エースがまるで強者の余裕を見せるように常時発動技能の説明をしてくれなかったら、ジネーゼはその対象になって、再び命を落とす可能性すらあった。

「ジネーゼ。行くよ。リーネも連れて行く」

 ジネーゼは何も言わなかった。

 この場に来てしまったことを、そしてリーネを失ったことを非常に悔いていた。

 【転移球】で大陸側の橋の入り口まで転移する。

「ここにいて」

 そう告げてもジネーゼは何も言わなかった。

 戦いの場に戻ろうとしたとき、

「……じゃんよ」

 ジネーゼが何かをつぶやいた。

「リーネの仇は自分が取るじゃんよ」

「無理せずね」

 否定はしなかった。

 ジネーゼが唯一心を開いていたのがリーネにように思えたから。

 まるで家族のようだったのだろう。

 何を言っても許してくれて、多少わがままでついてきてくれる。

 今回もジネーゼがついていくと言ったら少し嫌な表情をしていたけれどそれでもついてきていたから、やっぱりリーネもジネーゼと気が合ったのだろう。

 その心の友を失ったジネーゼはエースに挑んで殺され、彼女だけが生き返った。

 僕が生き返らせてから思うところがあったのだろう。

 自分は生かされた、というような想いがあるのかもしれない。

 セリージュもチームが壊滅したとき、唯一生き返った。

 そのとき、僕を追いかけてきて手伝うなど、何かしなければ許されないというような感情が見えた。

 ネイレスたちとの出会いが良いように作用して、今は正しく強くなっているような気がしているけれど、ジネーゼはどうなのだろうか。

 それが不安で仕方がなかった。

 ジネーゼは何も応えない。

「待ってる」

 それだけ告げて僕は戦場へと戻っていく。

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