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tenth  作者: 大友 鎬
第5章 失意のままに
58/873

合成

 21


「で話って何よ?」

 痺れを切らしたようにアリーが言う。

「とりあえず手伝って欲しい」

「当たり前じゃない。何を今更……」

 そう呟いてアリーは顔をしかめる。

「まさかあんた、私が手伝わないとでも思ったの?」

「それは違うって」

 ただあまり巻き込みたくないのは事実だ。

「で、どうやって封印するか考えたの? ずっとそれを考えていたんでしょ?」

「うん。とりあえずこれを使う」

 僕はアリーたちにユニコーンの角を見せた。

「これって、あのあと、四等分したやつよね。まだ持っていたの?」

 アリーが驚く。

「高価でござるからな、すぐに換金したものだと思っていたでござるが……」

 ということはアリーもコジロウもおそらくディオレスも換金したのだろう。でもこういう希少品(レアアイテム)を売るのってもったいない気がする。

「でそれをどうするのよ」

「ユニコーンの角には解毒作用があるからさ、とりあえず作ろうと思って」

「作ろうって何を?」

「新しい技能」

「何……言ってるわけ?」

「いやいや僕、薬剤士だからね。薬剤士ってのは何も回復系球種を使えるってだけじゃないんだ。【合成(リモデル)】って技能があって。これで【回転戻球(ヨーヨー)】を作ったんだけど……」

「知ってるわよ。アホじゃないの。でその新しい球でなんとかなるの?」

 僕の余計な説明を撥ね退けて、アリーは問いかける。

「たぶん、ならない。だからアリーに手伝って欲しい。もちろん、コジロウにも」

 僕は作戦の概要を話し出す。

「無茶すぎるわ」

「拙者の役目が責任重大でござるな」

「大丈夫。そこのところは信用してるから」

「まあいいわ。それで行きましょう」

 そこまで話した時、再び狼煙があがる。

「何か予定外のことが起きたらしいわね」

 一度目の狼煙が境界を越えた合図なら二度目の狼煙は、何かが起きた時の合図。

「俺が行きます」

「私も行きます」

 リアンとアルが狼煙を見て、声をあげる。

「頼んだ」

 僕はふたりに任せることにした。

「メレイナとネイレスはこっちを手伝って」

「当然です。【封獣結晶(キューブ)】は渡しましたけど見届ける義務があります」

「それもそうだ」

「アタシは手伝うなって言われても手伝うわ。ブラジルさんもこんなことは望んでないもの」

「じゃあ【合成(リモデル)】するよ」

 道具と素材球の【合成(リモデル)】は初めてとはいえ、以前【回転戻球(ヨーヨー)】を作り出した僕には緊張はなかった。行程はあまり変わらない。【造型(メイキング)】した素材球に空く小さな穴に、粉末状にしたユニコーンの角を投入して念じた。

 変化が起こる。素材球が輝き、性質が変貌する。あっという間に毒のように禍々しい紫色の球が完成する。【滅毒球(ポイズンフォーラー)】。毒を解くというよりも毒を滅ぼすと言うべき、その球が僕の手元にあった。

「経験がモノをいったわね。呆れるほど簡単に成功するとか、どんだけ経験を溜め込んでいたのよ」

 アリーが僕の【合成(リモデル)】を見て呆れていた。

「でそれを使うってことね。試しなしの本番だから少し不安ね」

「うん、でもやるしかない。とりあえずこれで本体を切り裂いて核まで【封獣結晶(キューブ)】を届かせる」

「私たちはとりあえずあんたの言われた通りにするけど、いいのね?」

「お願い」

「それでは準備するでござるか」

 ネイレスとコジロウが僕に【鉤縄(フックフロー)】を巻きつける。僕たちは広い通りにいた。セフィロトの樹を通過すればこの辺りを通ると算段をつけていた。その広い通りに毒素が来た瞬間が始まりだ。

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