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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-24 一匹

 尾先、尾裂、あるいは御先狐、尾崎狐。

 空中庭園では多種名前があるらしい。

 オサキという魔物を調べたとき、そんな豆知識が記載されていた。

 とはいえ誰だって調べればそんなことはわかることだ。

 九尾之狐の9つあるしっぽのひとつ――その先端、尾先から生まれたというだけあって、

 その尻尾は大きく、先端に行くにつれ透明。

 そまるで幽霊の下半身だけれど、それは大きく膨れた尻尾の話。

 本体は狐に酷似していた。

 それでも目は紫色に妖しく輝いていた。

 目の前にオサキがいた。

「行くわよ」

 アリーが言う。

 道中聞いた話では、メレイナたちは快復し、再発はしていないが、一応養生させているらしい。

 グレートフィールダー大草原と目と鼻の先、フレージュとちょうど中間ぐらいにオサキは漂っていた。

 アリーが連絡を取ったイロスエーサの情報だと、「オサキは一定時間、漂ったあと場所を移動するのである」とのこと。

 外にでかける冒険者の絶対数が多くなり、早々に見つかった感じだろう。

「時間をかけるとここからいなくなっちゃうわ」

「見失いそうもないけど」

 オサキの大きさは尻尾を除けば狐と同等の大きさだけど、半透明の尻尾は異常なまでに長かった。

 それを追っていけばオサキの位置はずっと追いかけられそうだ。

「とは言っても長時間は戦えないわよ。わかってると思うけどあいつが病原のひとつなんだから。長時間戦えば今度は私達が発症しちゃうわよ」

「それだけは避けないと」

「そ。それもだけど人数も最小限にして感染リスクも最小限にしてる」

「だからメレイナたちは休養させてるわけか。別についてきてもいいと思ったけど」

「同行させたほうがいい経験になるけど、今の脅威は目の前の病原よりも、再発した疫病よ。そちらを防がなきゃ意味がない」

「それは同意見だね。再発した疫病に対応した薬も作りたいけれど」

 話は自然とそこで終わった。全集中というべきか、オサキが周囲を警戒し始めたのだ。

「慎重に仕掛けるわよ」

 警戒しているといってもどこかにすきが生まれる。それを僕たちはずっと待ち続けていた。

 オサキの視線が僕たちの隠れている茂みからそれる。

 僕もアリーも合図せずとも同じタイミングで飛び出していた。

 途端、だった。

 僕たちめがけて長く大きい剣が振り下ろされていた。

 アエイウだった。

 見間違うはずもない。長大剣だけではなく裸に赤マント、赤パンツなんて男はこの世にただひとりしかない。

【転送球】で長大剣の上へと転移する。

「どうするの? オサキが逃げるかもしれないわよ」

「アリー、頼める?」

「だと思った。あんたは……聞かなくてもわかるわ」

「うん。なんで攻撃してきたか、理由を聞くよ」

「オサキは任せて。なんとかしてみる」

「ありがとう」

 上空でまるで別れを惜しむように二手に別れて僕はアエイウと対面する。



***


 振り下ろされた剣は大地をかなりえぐっていた。

 それだけでアエイウから浮かんでくる表情が見て取れた。

 怒りだった。

「どうしてだ?」

 アエイウは問いかける。

「どうしてだ? どうしてなんだ、レシュリー・ライヴ?」

「話がよくわからない」

「お前は何もかもおそすぎるのだ。エリマのときも、今回のときも、お前がお前が作るのさえ遅くなっていなければ!」

「誰か、誰か死んだのか?」

 アエイウは何も答えず僕に長大剣を振り回してきた。

 図星だ。

 怒りだけではないどこか自分への不甲斐なさも見てとれた。

 そうして気づく。

 これは強烈なやつあたりだ。

 エリマさんのときもそうだった。

 あんなにも愛されていたのに、アエイウはそれを受け止めないで僕に立ち向かってきていた。 

 僕がエリマさんを元に戻すための球を【合成】できなかったから。

「オレ様にとってお前はヒーローではない。オレ様の女を救えないお前はただのゴミクズだ」

 それは痛烈な言葉だった。

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