終極迷宮編-17 変質
「なんで生き返らせたの?」
「姉さんを死なせたくなかった」
涙ながらにアルルカがルルルカに抱きついた。
「私なんてそのまま死なせれば良かったのよ」
「そうは言ってもさ、【蘇生球】はキミが生きたくないと思っていたら、絶対に蘇生できない」
照れ隠しを隠すように僕は言い放つ。
「賭けに出たの?」
「違うよ。僕が知ってるルルルカなら、アルルカを悲しませるようなことはしない」
僕はわかっていた。ルルルカが僕たちの世界のルルルカでないのだとしても、ルルルカはルルルカ、本質は変わらない。妹想いなのは違いないなのだ。
「だから生きたくない、なんて本当は思ってない。それどころかルルルカと対峙してもキミはきっとルルルカを殺すつもりなんてなかったでしょ?」
「はあ、そっちのあなたも何も変わってないの」
「そっちのレシュも救いたがりだった?」
アリーがため息をつく。
「ええ。あなたがそうやって呆れるほどに」
「それよりも」
「あ、逃げたわね」
「なんとでも言ってよ。長話はできないのは事実だよ」
向こうも一度集合していた。
「姉さん、今度は一緒に戦ってくれますよね?」
「当たり前なの」
***
『Re:ENCORE>ごめん。誤算だった』
『souris>あれは読めない。お前のせいじゃない』
『laser scissors>そうそう。【蘇生球】と〔最後に残ったものは〕はねえ』
『бeper aд>ただこれでルルルカだっけ? あの子は完全にこっちの敵になったね』
『souris>それはまあ、でも敵になる可能性も想定してるだろ?』
『Re:ENCORE>まあね』
『yoshitaro iida>まだ僕の迷宮も有効ですし』
『Re:ENCORE>でもこれで五分五分になった。もし何か別の要因が存在したら僕たちはきっと負ける』
『laser scissors>後ろ向きね』
『souris>死亡フラグみたいで気に食わねぇ』
『Re:ENCORE>でも僕たちはそうだったじゃないか。Re:sporterに、異世界転生するプロのように生業にしてきたわけじゃない。疑似異世界転生で、まるでなろう小説の無双する主人公のように世界をいい意味でも悪い意味でも蹂躙してきた。空想の中で世界を救った気になってるだけだった。それが前向きなわけない』
『laser scissors>だから前向きになるために、ガチで異世界転生目指してるんでしょ?』
『Re:ENCORE>それはそうだけど。でも……』
『бeper aд>やめやめ。なんだっていいよ。勝つための指示が早くほしい』
『laser scissors>前向き~♪』
『бeper aд>からわないでくれ』
Re:ENCOREはそんなやりとりを見て、でかけていた言葉を引っ込める。
『Re:ENCORE>じゃあ指示を出す。けど方針なんて変わらない。ルルルカの対処が加わるぐらいだ。そのぶん負担がきついけどね』
『laser scissors>それだけ神経使うってことね。たぎるわ』
『souris>前向き~♪』
『laser scissors>恥ずかしい。被せないで!』
軽口を叩きあってルルルカを蘇生させてしまったという失敗を励まし合う。
そこはNPCもPCも違いはなかった。
仕切り直し、PC側の誰もがそう思っていた。このときまでは。
そして彼らは知ることになる。
NPC側に何か別の要因が存在していて、言葉に出したことが真に死亡フラグになることを。
禍を転じて福と為す。
ルルルカが選択した、初回突入特典〔出ると最悪な死を招く〕。
それが彼女が死を乗り越えたことで変質していた。
それはPCが誰しも知らなかった特典だった。
それもそうだ。そもそも【蘇生】【蘇生球】を使うNPCがいなかった。
そしてそれらの技能を使って初回突入特典〔出ると最悪な死を招く〕を持つNPCが生き返った場合、
特典が変質するなど、PCは知りもしなかった。
まさに最悪な事故。
ルルルカに異形の蜘蛛、巣の迷宮を形成していたyoshitaro iidaを瞬殺されて、Re:ENCOREはその異変に気づく。
〔最悪な死を招く因子〕。
自らが不幸を呼ぶ原因ではなく、敵に不幸を撒き散らす要因に生まれ変わった少女は、
圧倒的な圧を持ってPCたちに襲いかかる。




