終極迷宮編-14 希望
<ENCORE V>は<ENCORE>シリーズの5作目である。
ⅠからのデータはⅡへと、ⅡからのデータはⅢへと、能力や職業を引き継げる。
シリーズを重ねるごとに職業は増えていったが、Ⅰでしか就くことができない職業が存在していた。
あまりに強すぎる、のではなくあまりにも使い勝手が悪すぎる。
そんな不評から開発者を怒らせ、何の告知もないままにⅠで一定のレベルに達してないままⅡに引き継ぐと二度と就くことが不可能になっていた。
そのため、Ⅱでその職業に就くことができたのは全体のわずか2%。
そしてその2%が<ENCORE V>になってからの上位2%を占めていた。
もちろんⅠから続けていたという強さもあるが、職業が増えるたびにその職業は強くなりすぎたのだ。
その職業の名前を 「真似師」といった。
専用技能【完璧擬態】は一定時間対象の擬態ができ、その対象が使用できる技能を使用することができる。
さらにある程度の対象が使用できる技能を使用することで、自らがその技能を習得することができる。
もちろん、自分のレベルが同等、もしくは上位ではないと【完璧擬態】は機能しない。
Re:ENCOREはレシュリー・ライヴへの擬態を成功させていた。とはいえ、レシュリー本人になるわけではない。あくまで、技能を擬態しただけだ。
それでもレシュリーの技能を全て一時的に習得したことになる。
そうして彼は知るのだ。
レシュリー・ライヴの初回突入特典を。
『Re:ENCORE>なんだ、それ……?』
思わず絶句。
【蘇生球】の存在は知識の奥底から引き出した。
けれどこの特典は想定外中の想定外。
だから特定できなかった。
たぶん、自分でなければ、擬態して技能を見抜ける自分がいなければ、一生分からないかもしれなかった。
だから笑った。こけにしたわけではない。
その予想外さに笑ったのだ。
『Re:ENCORE>彼の初回突入特典は〔最後に残ったものは〕だ』
告げた。
Re:ENCOREたちが向かおうとしている世界は
セフィロトという樹に名前が刻まれると蘇生できない、という世界だ。
そんな世界で低確率で蘇生が成功する【蘇生球】を扱うNPC。
そんなNPCが覚えているのが〔最後に残ったものは〕。
技能の成功率をわずかに引き上げる。
わずかは5%にも満たない。いや1%にも満たない。
覚えたところで意味のない、希望になりえない。
むしろそれを特典に選択したことで他の有能な特典を得ることができず、絶望でしかない。
特典の名前からそんなことも言われ出した。
絶対にNPCは覚えない。
そう言われて攻略サイトに参考程度にしか書かれていない。
それをレシュリー・ライヴは選択していた。
元々、成功率が低い【蘇生球】で仲間の蘇生を成功させるために。
おそらくもっといい特典はあったはずだ。
擬態したことで〈双腕〉であることもわかっている。
才覚専用の特典もあるはずなのに、レシュリーは
誰でも覚えれる、けれどおそらく誰も覚えないであろう特典を選択した。
配信を見ていたPCたちは全員が揃って爆笑していた。
いわゆる大草原。
wの文字で全てが埋め尽くされ、どうなっているのかコメントを非表示にしなければ見れない状況だった。
嘲笑とは裏腹に、
擬態した当の本人Re:ENCOREが戸惑っていた。
それに何の迷いもなかったのか。
それほどまでに救いたいのか。
それはルルルカに放たれた【蘇生球】の数を見ても明白だろう。
蘇生することを止めようとしたRe:ENCOREは恥じた。
レシュリー・ライヴは本気で蘇生しようとしている。
Re:ENCOREはただただ敵の数を増やしたくなくて止めようとしていた。
そんな理由で止めようとしていた自分を恥じた。
遊び感覚。
そう言われれば言い返せない気持ちがどことなく存在していたのだ。
『Re:ENCORE>僕はあなたを尊敬する』
擬態したからこそわかる。
自分たちに本気で挑んで、そして仲間たちを本気で救おうとしている。
『Re:ENCORE>だから、だからこそ全力で叩き潰す!』
宣言する。
どこかで持っていた遊び感覚を捨てた瞬間だった。
【蘇生球】を阻止する、そしてNPCを全力で叩き潰すということは
もはや存在自体を消すこと。
実際に殺すということ。
どこかでそうは思っていなかった。
けれど、そうなのだ。
Re:ENCOREは自覚し、覚悟した。




