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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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終極迷宮編-7 盲点

 レシュリー・ライヴは観察していた。終極迷宮に来て重要なのは情報だった。

 輪環魔道士や機械化ゾンビ、頑石戦士との遭遇は初めてだった。

 だから情報を得るために、攻撃を分析していた。

 情報を持っているのはPC側だけではない、NPC側も戦い抜くことで情報を蓄積していく。

 もっともPC側は生み出す力によって無限大にその役職を増やしていける、らしい。

 なんにせよ、情報は揃った。

 輪環魔法には致命的な弱点がある。

 そうしてレシュリーは動き出していた。

 まずは【清浄球】を投擲。本来なら血を洗い出すだけの効果。

 けれど同時に魔法の水で体をきれいにする。

 すなわち、染色士の天敵。

 レシュリーはこの戦いの前に染色士と戦闘していた。そしてこの【清浄球】が有益だと理解していた。

 だから染色されたことにレシュリーはまったく動揺していなかった。

 一方で染色士Tar getSは動揺していた。

 水属性では消すことはできない。

 それは知っていたが、洗浄する魔法によって消すことができるなんてことは、いわゆる攻略サイトにまだない情報だった。

 そもそも投球士の情報は少なくその項目は編集すらされてないこともある。

 脅威に値しない、他サイトのコピペで作られるような無数のサイトのいくつかはそう明記もしてある。

 だから染色士Tar getSは知らなかった。そもそも染色士は転生しても魅力的ではないとされ、最近になって再評価されたため、その弱点もわからなかった。

 制限していた動きも、状態異常でさえも、血を洗い流すだけの効果だったはずの【清浄球】に無効化にされた。

 【清浄球】を使える投球士は少ないが、その球の上位互換ともいえる癒術【清浄】でも可能なのだろう。NPC側に周知されれば染色士は一気にオワコン化するだろう。

  戦闘不能になってはいないが、もはやその一球だけで、Tar getSの全ては封じ込められてしまった。

 そしてその投げたタイミングには脱帽。

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaが飛び出た瞬間だった。uiriaaaaaaaaaaaaaaaはレシュリーが状態異常で動きが鈍くなり好機だと判断したのだった。

 けれどそれは罠。【清浄球】で一瞬に正常になるからこそ自身を囮に使った。

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaの攻撃は止まらない、いや止めれない。だからこそ、着地のときが隙があると輪環の中にすぐに身を隠している。

 やられる、そう思ったがレシュリー・ライヴは回避。体術でいなしもしない。

 『uiriaaaaaaaaaaaaaaa>えっ?』

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaも動揺する。回避できたのなら、今まで体術でいなす必要もなかったはずだ。


 演出。



 uiriaaaaaaaaaaaaaaaは気づいてしまった。

 体術でいなさなければ避けるのも厳しい、という幻想をuiriaaaaaaaaaaaaaaaは抱いていた。

 まずはその幻想をぶち壊さなければ勝機はなかった。

 当てられてはいる、だからいつかは。そう思い込まされた時点で、uiriaaaaaaaaaaaaaaaは罠に嵌っていた。

 そしてそのuiriaaaaaaaaaaaaaaaは止まれず輪環に吸い込まれていく。

 その後ろを追従するように【豪速球】が迫っていた。

 輪環魔法によって出現する輪環の位置は動かせれない。

 同時にuiriaaaaaaaaaaaaaaaが飛び出していく位置が違うことによって、輪環の中では全てがつながっているとレシュリーは判断していた。

 一方で、輪環が中で繋がっているのであれば無数にある輪環のどれに向かって攻撃してもその中にいる敵には届いてしまう。

 それを輪環魔法の詠唱者たるLEE'Sがまるで蓋を開け閉めするように操作している。

 全てはレシュリーの推測だが、この推測は的を射ていた。

 だからこそ、uiriaaaaaaaaaaaaaaaを追従するように、球を投げていた。

 そしてuiriaaaaaaaaaaaaaaaが輪環に入る瞬間に【豪速球】が追い抜いた。

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaを締め出すほどLEE'Sは非情にはなれなかった。

 だからこそ、その【豪速球】も輪環に入り込んだ。

 輪環の中で頑石戦士Λ's995はゆっくりと動く。その球を防ぐのは自分の役目だった。

 だが、一歩遅い。

 【豪速球】として投げられたその球は【破裂球】。

 中で弾ける。

 対処しようとしていたΛ's995と入ったばかりのuiriaaaaaaaaaaaaaaa以外がたまらず外に飛び出す。

 それをレシュリー・ライヴはまっていた。

 出た瞬間、目の前には球。【破裂球】を【豪速球】ではなった直後、全ての輪環めがけて【豪速球】を放っていた。

 連投はレシュリー・ライヴの得意とするところ。それはPCとて周知。

 誘き出されたと分かった頃にはもう遅い。

 生半可な防御力のPCをほぼ一撃で葬り去ってきたレシュリーの【豪速球】の連投が襲いかかる。

 輪環全てだったが、飛び出したことで的は絞れる。

 あとはそこに全力全速連投。

 旗振士umami taro、染色士Tar getS、機械化ゾンビZIN JINがめったうちにされ、真の眼で回避できるはずのpirin gogoですら慌てすぎて能力発動が間に合わなかった。

 そして輪環魔道士 LEE'Sが死亡したことで、輪環が消滅。

 中に残っていたuiriaaaaaaaaaaaaaaaとΛ's995が吐き出される。

『uiriaaaaaaaaaaaaaaa>くそがっ!』

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaは自分の失態を嘆く一方で

『Λ's995>早く入ってこい!』

 未だ待機中のRe:sporterに叫ぶ。Λ's995は嫌な予感がしていた。

 吐き出されたuiriaaaaaaaaaaaaaaaにも【豪速球】が迫る。

『uiriaaaaaaaaaaaaaaa>なめんなよ』

 ルームファイターにはジャストガードが存在する。それに成功すると無傷で攻撃を無効化する。

 uiriaaaaaaaaaaaaaaaはジャストガードで【豪速球】を弾く。だが、レシュリーは〈双腕〉だった。

 そしてルームファイターは一対一の対戦格闘だった。つまり、連投はともかく同時多方向攻撃には対応できない。

 接近していたレシュリーが放つふたつの【回転戻球】は同時多方向攻撃だった。

 ひとつをジャストガードした瞬間、顎めがけてもうひとつの【回転戻球】が直撃する。

 ぐったりと倒れてuiriaaaaaaaaaaaaaaaが霧散。

『Λ's995>早く入ってこい! 頼む!』

 目の前に展開した頑石の盾がレシュリーの【豪速球】によって削れていく。

『Λ's995>早く入ってこい! 時間がないぞ』

 削れるにはまだ余力がある。

 けれどレシュリーを孤独にしていた【不可侵岩石変事(ストーンヘンジ)】の壁はもうない。

 死神はもう側まで来ていた。

『Λ's995>後悔するぞ!気づけ、ルールに!』

 Λ's995は虚空を見上げて睨みつけた。

 瞬間、Λ's995が消滅。すぐ側にはアリーがいた。

 どれだけ障害があろうが、それを無視する特典〔全ての難門を(モントリ)通り抜ける(オール)〕によって頑強な盾を無視して、固有技能【三剣刎慄(トリアングラム)】がΛ's995の首を刎ねたのだ。


 そして、転送が始まる。


 補充を待っていたPCたちの転送が、


 ――ではない。


 この階層を勝利したレシュリーたちの転送が、だった。

 

 観戦していたPC側の画面にはもれなく「敗者」という文字が躍っていた。


 補充はまだたくさんあった。

 けれどそのたくさんの補充はされることがなくPC側は敗者となった。

 NPCたちにいつも通り突破されてしまった。また異世界転生は叶わなかった。


 それはなぜか。

 癒術士系複合職が祝詞を忘れたり、剣士系複合職が、剣を【収納】するのを忘れてうっかり武器屋を出てしまったり、一般人と比べると冒険の匠とも呼べる冒険者がそういう失敗を犯すことはままある。

 そしてPCにもそれは言えた。

 ルールを思い出してみよう。

 この階層のPC側は全滅する前に突入申請し続ければNPCを倒すまで戦いが続くルールだった。

 それは裏を返せばPC側は全滅してしまえば、補充が残っていても終了してしまう危険性を孕んでいた。

 そして次に控えるRe:sporterチームは10人で突入しようとしていた。

 では突入申請は出していなかったのか。

 結論を言えば出していなかった。出してしまえば欠員が出た瞬間、補充されてしまい、そうなれば10人で突入することができないからだ。

 そうなれば10人で分担した役割を遂行できない。

 チームで動けるメリットばかりを考えてルールの欠陥、盲点に気づいていなかった。

 PCに有利な、そして幸運なルールで浮足立っていた。自分たちの番がやってくることに、興奮が高まり、三度にも及ぶΛ's995の警告にぎりぎりまで気づけなかった。

 それに尽きる。

 三度目の警告でようやく気づき、突入申請を出すコンマ数秒前にΛ's995のが消失が確認され、その申請は通らなかった。

 だからこそ呆気ない幕切れだった。

 補充の数はゆうに五千を超えていた。その数が途切れることなく突入し戦いを繰り返せばいくらなんでもNPCたちを倒すことができただろう。

 だがそれはもう叶わない。

 そしてこんな幸運なルールを呆気ない幕切れで終わらせてしまった集団を好奇心だけで遊んでいた素人たちが絶対に許してくれないのもPCたちの世界の事実であった。

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