終極迷宮編-5 無料
『LEE'S>くそったれ』
それは嘆きだった。補充があればまだ救いはあった。けれど補充は"まだ"ない。
(^0_0^)を失ったことも辛い。
LEE'Sと(^0_0^)は顔見知りではない。
ここで出会ったばかりだ。それでも分かる。協力しようとする姿勢、転生したいという気持ち、それが十全にあった。
それどころか(^0_0^)は勝算が見込める説得力のある提案をしてきていた。
それに全員が乗って、あとは勢いのままなんとかなるのが人生ってものじゃないのか。
LEE'Sの人生は辛いものばかりだった。逃げるようにゲームをしているといつの間にかそういう世界に転生できる世の中になっていた。
高難易度のこの世界に転生したい理由は簡単だった。宝石を集めればなんでも叶うから。
その願いはLEE'Sの住む世界にだって適用されるはずだ。
LEE'Sには病弱な妹がいる。
親からの説明ではよくわからない病気。
不治の病、ではないらしいけれど現状では治療の困難な病気だった。
治すために基金を募ってはいるけれど、それだけでは到底足りない。
いつ貯まるのか不安な現状に、奇跡のようなルールが到来してきた。
光差す希望のように、LEE'Sは挑戦した。
無課金でほそぼそとしていたゲームが転生対応だったから、初めて課金して装備を整えて無理やり強くして、希望を掴み取ろうと今ここにいる。
(^0_0^)、お前もそうだったんじゃないのか。
LEE'Sの目は涙に濡れていた。
全員が(^0_0^)亡き今、彼の提案した作戦をきちんと遂行している。
それが勝算が高い、だけじゃない彼への弔いの意味もあった。
実際には死んだわけではないが、(^0_0^)はこれで勝利したとしても転生できないのだ。それはなんともむなしすぎる。少しだけの時間戦っただけだが、LEE'Sはすでに仲間意識があった。
(^0_0^)だけじゃない、m@rk 333もすでに消滅していた。段数制限の現影がコジロウの特典を見破った際に使い切っていた。幻影だけでは心もとなくそれでも(^0_0^)の作戦に乗ってくれた。
最後はバッファーたる旗振士umami taroの盾となって消えていた。
きっと優しい人に違いない。
さらにGGE GEEも消滅している。“ファントム・サーガオリジナル版”の暗黒屍鬼といえば、体内の暗黒重素を消費してコンティニューが可能な職業だったはずだ。
そのその重素がなくなってしまったのは一重に彼が今残っている全員をレシュリーたちの攻撃から守った証拠だった。
GGE GEEは(^0_0^)から全員を守って欲しいなどとは言われていなかった。
それでもGGE GEEは自主的に全員を守っていた。
抜けた分の補充も"まだ"ない。
Λ's995の推測が現実味どころか現実を帯びていた。
残りは8人。
計算は間違っては、いない。
オリジナル版の暗黒屍鬼はコンティニュー不可能になった瞬間にわずかな時間をおいて敵には見えぬ黒鬼として復活できる。その状態での消失こそが真の死であった。
黒鬼として復活したGGE GEEもレシュリー包囲網にきちんと加わっていた。
仲間指定されている者は、つまりはPCにはGGE GEEの姿も見えている。
だからこそ、その不運が見て取れた。
Λ's995に向かって放たれた球が、黒鬼のGGE GEEの体に当たる。
GGE GEEが雲散霧消して残り7人。まだ大丈夫だ。
レシュリーはその違和感に気づいたが、すぐに消えたのか再度Λ's995に向かって球を投げる。
その行為は盾の破壊に躍起になっているようにも見えた。
『LEE'S>仕掛けるぞ』
LEE'Sの合図で、7人の真下に輪環が出現。7人が姿を消す。
同時にレシュリー・ライヴの周囲に30個もの輪環が出現する。
それは例えるなら多次元モグラたたき。
PCたちがモグラのように、30個の輪環から姿を見せて攻撃する。
弱点は30個の輪環の位置が固定されていること。
それでもLEE'Sが死ななければ輪環は壊れることはない。
最初に飛び出したのは、室内のみで闘うという格闘ゲーム“ルームファイター”で作成できるオリジナルファイターで転生を狙うuiriaaaaaaaaaaaaaaaだった。
脚力を最大限に強化したuiriaaaaaaaaaaaaaaaはまるで特撮のように、強烈な飛び蹴りを放っていた。
直撃する瞬間、レシュリーはその足をいなす。その手には闘気が帯びていた。
[体術]。
それがレシュリー・ライヴの特典
――ではない。
それはこの終極迷宮に入ったNPC全員に配られる、いわば無料配布特典。
ダイエンケンをディエゴやトワイライトが体術で蹂躙できた理由がこれだった。
ただの拳やただの蹴りに闘気を纏うことができた。精神は摩耗し、体力も疲弊する。それでも闘気を纏った攻撃、すなわち技能やNPCの闘気に対応する攻撃を緩和することができた。
いなせたのもそのためだ。
uiriaaaaaaaaaaaaaaaはそのまま近くの輪環の中へと姿を消えていく。
追い詰めることができる。
LEE'Sたちは確かな手応えを感じていた。




