終極迷宮編-4 競技
(^0_0^)の提案に全員が首肯した。
『Tar getS>その前に一つ報告』
『umami taro>それいい報告?』
『Tar getS>どうだろう。とりあえず、この先、50人はRe:sporterが来るよ』
Re:sporterとは異世界転生を一種の競技として生計を立てているPCたちのことを指す。
彼らは企業と契約を結んで異世界転生を目指していた。
遊びで、運が良ければ、時間が余っているから、そんな感覚で参加しているPCたちとは一線を画すガチ勢であった。
そしてそんなガチ勢がレシュリーたちの住む世界への転生を目指すべく参戦したのだ。
『(^0_0^)>あんまり良い気はしないな』
(^0_0^)はそんな人たちとともに戦って、役に立たないことをコケにされ、ザコがいたと動画にされて晒された経験がある。
どうだろう、と告げたTar getSももしかしたらいい経験がないのかもしれない。
『Λ's995>いや、僥倖じゃないか?』
一方で、Λ's995は自ら告げることはしないが、元Re:sporterだった。転生成功時の色々なしがらみが嫌で個人での転生を目指していたが、Re:sporterはかなりの実力があり、素人でなんとなく遊びでやっている人と比べれば実力は雲泥の差だ。
利用するだけ利用するのがΛ's995の方針だった。きっと彼らは昔の自分のように素人と足並みを揃えないと分かっていたからだ。
ただ、Λ's995にはひとつ懸念があった。
その懸念を伝えるかどうか、それを迷っている間に(^0_0^)が自らの能力で今後の方向性をすぐさま伝達する。
足並みが揃えられる10人が揃ったことで若干浮足立っているようにも見える。Re:sporterが後に控えているという焦りもあるのかもしれない。
『Tar getS>そういえばレシュリーの特典は? Re:sporterもまだ解析は終わってないみたいだけれど。今後の成否に関わるのでは?』
『(^0_0^)>今、捜索中だけれど、彼の厄介さはそこじゃない。近年見なかった投球士系上級職。それも錬金術師だ。見たことのない新技能ばかりで解析が追いつかない』
『Tar getS>どこも似たような感じですよね。それでもこの方針で?』
『(^0_0^)>うん。これしかない』
『Λ's995>やるしかないだろ』
そうして10人は動き出す。
“白猫はミャオと啼く”のデータセクター(^0_0^)
“キューブハンターズ”の旗振士umami taro
“慧眼神楽”の真の眼pirin gogo
“幻に踊る姫騎士の刃”の頑石戦士 Λ's995
“リングコネクト”の輪環魔道士 LEE'S
“幻影×現影”の幻影師 m@rk 333
“第七神格”の染色士Tar getS
“WAR OF SHINE”の機械化ゾンビZIN JIN
“ルームファイター”のカスタムファイターuiriaaaaaaaaaaaaaaa
“ファントム・サーガ・オリジナル”の暗黒屍鬼GGE GEE
それぞれが違う世界で、育ててきた自分の分身。
特性も特徴も操作性も何もかも違う十人のPCが力を合わせて、目の前の敵をこの世界のNPCを倒そうとしていた。
(^0_0^)が提案したのはまずはレシュリー・ライヴを全員で倒すということだった。
レシュリーが、アリーやコジロウを援護し、その結果、ふたりが暴れまわるという結果につながっている。アルルカの付け焼き刃ような操剣がPCの味方をするルルルカの卓越された操剣に互角に戦えているのも、アルルカの才覚を差し引いてもレシュリーの援護が強力すぎるというのに尽きる。
(^0_0^)もデータセクターという技や情報を解析しアシストする職業上分かっているのだ。
キルを取れる人間が強いのは当然だが、そのキルを支えているのはそういうアシストをしている人間だと。
だからこそレシュリー・ライヴを狙う。
ようやく希望が見えてきた。
(^0_0^)がそう思った矢先、(^0_0^)の顔が吹き飛ばされる。
レシュリー・ライヴの【剛速球】が、他の9人の隙間を偶然にもかい潜って、まるでスナイパーのヘッドショットのように(^0_0^)を射抜いた。
欲をかいた。消滅間際(^0_0^)は後悔した。
そしてまだ補充枠があるにも関わらず次のPCは補充されない。
『ZIN JIN>補充がないぞ』
(^0_0^)の消滅に戸惑いはあった。けれど誰かが死ぬ可能性は(^0_0^)が示唆していた。
自分が死んでも驚かないように、と忠告はされていた。動揺はすくない。
けれど補充されないのはおかしい。
バグだと思い、違う意味で戸惑っていた。
『Λ's995>悪い癖が出たな』
『ZIN JIN>どういうことだよ』
『Λ's995>次来る10人がチームってことだ。その10人で異世界転生を目指す』
『GGE GEE>なんだそれ』
『Λ's995>そういうやつばっかりじゃないんだがな。野良とは協力しづらいのだろう』




