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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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終極迷宮編-3 魚団

『(^0_0^)>集まって』

 まるで自分が主人公のように(^0_0^)は補充されてきたm@rk 333へ告げる。

『m@rk 333>よろしくお願いします』

 m@rk 333は素直に従った。

 補充待ちでも観戦できるため、m@rk 333も状況を把握していた。

 補充待機待ちの数はゆうに100を超えていた。ただこれが他のルールと違うのはPC側は死亡しても蘇生魔法が使えずそのままデータ削除されてしまうことだ。他のルールであれば蘇生魔法さえあれば全滅するまで、復活の機会があるがこのルールの場合、蘇生はできない。とはいえこの補充が途切れるまえにNPCを倒せば、異世界転生は成功する。

 とはいえ、このルールにはランク上限が存在している。この場に参加しているPCはこの世界においてのランク5以下のものしか参加できない。

 つまり、レシュリー側NPCはランク7、対するPCはランク5だった。

 とはいえそれは戦略で埋めれる差、数で押し切れる差だった。PCもそう認識している。

 けれど、けれどだ、その差は埋まっていない。

 だからこそ、(^0_0^)は場を落ち着かせる意味でそう言った。

 もちろん、NPC側の攻撃の手は緩まない。

 先程近づいてきたm@rk 333、それに今もなお生き残り続けているumami taro、pirin gogo、Λ's995、LEE'S。

 その5人が協力的だと(^0_0^)は認識していた。

 ここにいるのは10人。あとの4人は好き勝手に戦い、そして死んでを繰り返している。補充されてもm@rk 333のように協力しようと近づいてくるわけではない。

 協力しなければ勝ち残れない、と分かっていないそんなPCたちが勝手に突っ込んで、死亡しているのだ。

 異世界転生に挑戦するPCも一筋縄では行かない。レベルが低すぎるのに挑んだPCを糾弾することもあれば、異世界転生挑戦初心者が勝手に死んでベテランを窮地に陥れたりもする。むしろベテランが初心者を囮に使う場合だってある。

 (^0_0^)はここにいる自分を含めた6人で勝つために、他の身勝手な、協力的ではない4人を切り捨てることに決めていた。

 コジロウの速さに翻弄されて、バランスを崩して転倒。

『hihi hey>助け――』

 身勝手に動いたhihi heyは挙げ句、助けを求めてきたが、そのままコジロウに倒されて消滅。

 (^0_0^)は助ける素振りさえも見せなかった。

 自分たちでさえ手一杯。足を引っ張るPCはいらなかった。

『(^0_0^)>集まって』

 すぐに補充されたteraha BUSTERの会話記録にもその言葉は記録されたはずだが、teraha BUSTERは挨拶すらせずそのまま、近くにいたコジロウへと向かっていく。

『(^0_0^)>状況を整理しよう。アリーの能力、アルルカの特典は分かった。ルルルカはこちらの味方だと見ていい。今もまたアルルカを抑え込んでくれている』

『pirin gogo>あのゴスロリネーチャンが倒してくれりゃいいんだけどね』

『LEE'S>むずいだろそりゃ』

『(^0_0^)>当面としてはコジロウの特典を解析したいんだよ』

『Λ's995>何分あればできる?』

『(^0_0^)>10分ぐらいかな。おそらく速度系のなにかだと思う』

『Λ's995>分かった。だけどアリーへ対処はどうする。防御不可能だぞ』

『(^0_0^)>防御はね、でも回避ならできる。そしてあの攻撃は単体にしか使えないんだよ。データがそう物語ってる』

『umami taro>ということは回避率UPに切り替えたほうがいいね』

『LEE'S>しゃあねえ。俺の輪環魔法も援護に切り替える』

『Λ's995>俺は役に立たなそうだな』

『(^0_0^)>そんなことはないよ。キミはレシュリーを。あの球は速すぎて避けれない。キミの盾ならなんとか守れるだろう。データが――』

『Λ's995>そう物語ってるんだな』

『LEE'S>wwwwwwwwwww』

『pirin gogo>俺もレシュリーのほうに行こう。俺の真眼もそっちに使えそうだ』

『m@rk 333>回避ということなら、私もできることがあるわ』

 m@rk 333が指を鳴らすと周囲に大量の魚が出現する。

『(^0_0^)>キミ、幻影×現影のPCか』

『m@rk 333>うん。これで多少は撹乱できると思うの。撹乱するわよ』

 m@rk 333はすり抜ける幻影と実態を持つ現影を用いて戦闘を行う幻影師で魚を用いて戦闘を行っていた。

 そのなかで現影の魚を大量にしようして敵を撹乱する【現影魚団】はm@rk 333の得意技だった。

 【現影魚団】の魚は実体を持ち、当たればその技を打ち消して消滅する。

 敵はその魚を全て破壊するか、避けて対象を狙わなければならない。

 ゆえにそれは十分に撹乱たるものだ。

「面倒でござるな」

 一言。コジロウが加速して【現影魚団】を葬り去っていくが、数が多い。

「それを先に破壊したほうが良さそうだね」

 レシュリーも逃げ戸惑うPCよりも先に現影魚に対象を切り替える。

『m@rk 333>数が無くなる前にお願いね』

 幻影はこちらで言うところの精神力を消費するが、現影はまるで弾丸のように弾を使用する。

 限界まで持ち込んでいるとはいえ、魚のような数が多いものは消費も多い。そのぶん、弾が小さくて安価なのがメリットだが、幻影×現影の世界ではないため、買い足すことはできない。

『(^0_0^)>もうすぐだ。もうすぐ解析が終わる』

『LEE'S>随分と早くね?』

 【現影魚団】が思わぬ効果をもたらしていた。何もなければ10分かかる解析だったが、コジロウが特典を用いて【現影魚団】を攻撃したことが解析を早めた。

『(^0_0^)>m@rk 333さんのおかげだ。数が増えたおかげで特典の使用回数も増えた。それではかどったんだ』

『Λ's995>で結果は?』

 pirin gogoの真眼でレシュリーの攻撃軌道を見切り、それをΛ's995が盾で弾きながら問いかける。

『(^0_0^)>〔疾駆の感覚(シックズセンス)〕。常時速度ボーナスに加え、撃破時の速度ボーナスだ』

『umami taro>それやばくない? あの魚、コジロウが全部倒したんだよね? この世界の影師とかって、敏捷性=威力じゃなかったっけ?』

 言うやいなや、(^0_0^)に従わなかった四人のPCがコジロウとアリーに葬られていく。

『m@rk 333>もうないよ、魚』

 とはいえ、レシュリーを除く三人の特典は筒抜けになっている。

『(^0_0^)>大丈夫。一旦、集まろう』

 ――集まろうは、新たに補充された四人に対してだ。

 その四人は素直に集まってくる。

 偶然、いや必然と捉えるべきだ。(^0_0^)はそう感じた。

 こういう場でパーティーを組んでの突入ではないのに、息が揃うのは珍しい。

『(^0_0^)>攻勢に出よう』

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