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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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終極迷宮編-2 難門

『pirin gogo>まずはあの女だ』

 軽装の戦士という身なりのPCのひとりが指示を飛ばす。指し示す先にはアリーがいた。

 アリーはこの戦いにおいて一番PCを死に至らしめている。

 何より彼女の固有技能が強すぎるのだ。

 【三剣刎慄】。

 三方向からの剣により、首刎ねだ。

 防御を固めればと思ったPCのひとりが剣の通り道に盾をおいて防ごうとしたが、盾ごと持っていかれていた。

 pirinはその苦い経験を思い出す。

『pirin gogo>来るぞ。バッファーはフォローしろ』

『umami taro>分かってるよん』

 焦りもなく気楽な声でumamiは大きな旗を振り始める。足元に淡い円型の範囲が表示される。

『umami taro>集まって固まって、全員で突撃するよ』

 それだけで恩恵を受けるべく全員が集まる。

 その円の中にルルルカはいない。

 ルルルカはNPCのため、いくら味方をしたとしても恩恵は得られないのだ。

 ルルルカは憎悪に顔を歪ませてアルルカへと匕首を飛ばしていく。

<10th>のアルルカと同様に扱うのはヤギユウシリーズだ。しかし違いはある。百一本目の匕首だ。

 魔匕〔来たれ、ベイベエ〕ではなく匕首〔来たれ、ベイベエ〕。

 <10th>では魔剣となって消失したその匕首がルルルカの手元に存在している。

 ルルルカは百一本の匕首を平然と操り、アルルカに襲いかかっていく。

 すでにルルルカの髪の毛は水色。

 まるで喪服のように、けれどもレースやフリルをふんだんに使った黒を貴重した洋服、パニエで膨らませたスカートで着飾った衣装に妙に合っている。

「死んでなのぉおおおおお!」

 妙に苛立った声でルルルカはアルルカに力の限り匕首をぶつける。

「それは私のなのよおおおおおおおお!!」

 苛立ちの原因はアルルカにあった。

 彼女も匕首を操っていた。

 数は十一本。

 彼女は魔双剣士の上級職、魔癒双剣師であって、そしてそれは魔癒双剣師の技能でもない。

 だから本来なら【操剣】は使用できない。

 そう本来なら。

 彼女が選んだ初回突入特典は〔夢の[亦/真]夢(ドリームドリーマー)〕。

 自分の選択している複合職、上級職では使用できない技能を使用できる特典。

 そんな特典があると知ったとき、アルルカは迷わずこの特典を選んだ。

 また、姉さんと戦える。

 そんな喜びがあった。

 アルルカが操る十一本のうち、一本は匕首〔空庭の聖女ルルルカ〕。

 その頑強な匕首を先頭にまるで精鋭と言わんばかりの十本を率いて、百一本ものヤギユウシリーズ<3rd>と激突していく。

 何時間もぶつかり合ってもなお、均衡。

 それがルルルカ<3rd>の気分を苛立たせるのだ。


 

 一方、

 バッファーのumamiの周囲に固まったPCたちはアリーに警戒。

 umamiが旗を振るたびに防御力にバフがかかっていく。

『Λ's995>あの人スタイルいいけどおっかないからな。解析班、解析できたのかよ?」

 アリーの鋭い眼光にビビリながらumamiたちを守るようにΛ's995が盾を展開する。

『(^0_0^)>もう少しだ。分かってるのは単体攻撃。職業技能データにないから固有技能ってとこだ』

『LEE'S>数時間戦ってやっとそれかよ。問題のやつはどうした?』

 迎撃する準備をするかのようにLEE'Sが手の中に集めた指輪をジャラジャラしながら、輪環魔法を詠唱し始めていた。

『(^0_0^)>固有技能って分かったのがついさっき。だから今は特典データ漁ってる。そっちはなにか見つからないのか、magia』

 隣にいるmagia ryoumaへと話しかける(^0_0^)。

 (^0_0^)は大きな鉄の箱を背負い、黒い文字がたくさん書かれた宙に浮かぶ半透明の板を指で叩きながら、かけているゴーグルに映し出されたデータを洗っているようだが、magia ryoumaの姿は見えているようだった。

 magia ryoumaは耳につけた装置で音として流れる膨大な情報を拾っていた。

『magia ryouma>ビンゴ、ベストマッチだ』

 言った瞬間だった。

 magia ryoumaの耳についた装置が危険な音を察知したのは。

 だが、遅すぎた。

 バッファーのumamiの防御力のバフもΛ's995の盾もすべて切り裂いてアリーの【三剣刎慄】がまるで種明かしを許しはしないとmagia ryoumaを切断する。

 恐怖を感じる暇もなかった。前から二本の刃が、後ろから一本の刃が、同時に三本の刃がmagia ryoumaの首を刎ねた。

 がmagia ryoumaもただでは死にはしない。

 既に(^0_0^)へとデータを送っていた。

『(^0_0^)>彼女の初回突入特典は〔全ての難門を(モントリ)通り抜ける(オール)〕』

『Λ's995>どっかの街みたいな名前だな……』

 お気楽に答えたような気がするが盾を切断されたΛ's995は腰を抜かしている。いや腰を抜かさなければ彼も切断の対象になっていた。

『(^0_0^)>だけど強力すぎるよ。クールタイムはあるにはあるけれど単体攻撃、単体技能の使用の際に、障害を全て無視できる』

『pirin gogo>つまりΛ's995の盾もumamiのバフも全部無駄ってことかよ……』

 ようやく解析されたアリーのデータはPCを恐怖をもたらすものでしかなかった。

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