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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
525/874

終極迷宮編-1 第三

 ***


 半年で戻る。

 そういう計画が狂った全ての元凶はひとりの女性にあった。

 終極迷宮20000000階。

 階層的にはディエゴたちの足元にも及ばない。

 PCと戦うその階層で、レシュリーたちは窮地に立たされていた。

 10人のNPCと無数のPCが戦う永久耐久戦。

 どちらかの突入申請がなくなるまで戦い続け、全滅させないといけないというルールのなか行われるPC側に超絶有利の最悪のPCvsNPCの転生を賭けた勝負だった。

 発生確率は0.00000000000000000000000000000001%。

 起こる可能性は奇跡に近いが発生さえしてしまえばPC側は全滅する前に突入申請し続ければ、永遠に転生の可能性があり得る超幸運のルール。

 一方、NPC側は10人という制限つき。10人で全てのPCを全滅させなければならない。

 特殊な上昇能力が付与されるということもない。

 そして戦闘から数時間が経過して既に5人が死んでしまっている。

 現在、生存しているのが、

 アルルカ・アウレカ<10th>

 コジロウ・イサキ<10th>

 アリテイシア・マーティン<10th>

 レシュリー・ライヴ<10th>

 そして、残るひとり――

 これを招いたの元凶であり、なぜかPC側を援護して5人を殺した女冒険者――

 名を

 ルルルカ・アウレカ<3rd>といった。

 彼女の初回突入特典〔出ると最悪な死を招く(アクシデント)〕。

 はっきり言えばデメリットしかない、その初回突入特典は上級者向けの特典であらゆる不運が招かれる特典だった。

 難易度を極限に引き上げる、と言えばいいのか。

 乗り越えた先に充足感はあるものの、多くのものを失ったうえで、ということが多く好き好んで選択する冒険者はいない。

 不幸を望むもの。魔女。

 <3rd>のルルルカを<3rd>の冒険者はそう呼んでいた。

「姉さん、やめてください」

 アルルカが叫ぶ。

「うるさいなの!! その顔で、その声で、姉さんと呼ぶナアぁあああああああああああああ!!」

 ルルルカ<3rd>の初回突入特典〔出ると最悪な死を招く(アクシデント)〕は彼女が自責の念に駆られるほど拡大する。

 <10th>の、別次元のレシュリーとアルルカとはいえ、出会ってしまったことで、彼女の念は拡大した。

 これほどまでにNPC側に不利な盤面になってしまったのはそれが原因だった。

 彼女が、この階層に入っていくのを追いかけたルルルカ、それを放っておけなったレシュリーが巻き込まれてしまったのはそれが原因だった。

 そして追いかけてきたことで、彼女はさらに狂う。

 自分の前にいるレシュリーとアルルカが、殺してしまった好きだった人と妹が、笑顔で心配してくるのだ。

 別の次元でもまた会えてよかった――アルルカの喜びようは自責の念にかられていたはずのルルルカをどんどん追い込んでいく。

 <10th>のアルルカは<10th>のルルルカを失ってもなお、強く生きていた。

 けれど、自分と来たら――自暴自棄になった。

 死ぬために初回突入特典〔出ると最悪な死を招く(アクシデント)〕を選んだ。

 けれど生き残り続けた。生き残ることが罪滅ぼしだと言っているような気がしたのだ。

 そうして罪を滅ぼし続けて、ルルルカ<3rd>はアルルカ<10th>に出会った。追い打ちのようにレシュリー<10th>にも。

 罪が滅ぼし足りない、と延々と罰を与え続けるように。

 だからルルルカ<3rd>は狂った。もう嫌だと、逃げ出したいと、ルルルカ<3rd>の精神が変な方向へと壊れた。

「殺してやる。殺してやる。殺してやる」

 PC側にも狂気の魔女と知られていた彼女は、まずPCではなくNPC側の冒険者を殺した。

「味方になってあげるの! だから、目の前の、目の前の奴らを殺してよおおおおおおおおおおお!!」

 ルルルカは叫ぶ。

 そうして始まったこの狂気の舞台は数時間経った今でも続いている。

 さらにレシュリーたちは知らなかった。この空間と、外とでは時間の経過に差があることを。

 そもそも終極迷宮とはそういうところだ。階層によって、時間の経過も気圧も、魔力の濃さも違う。

 だからこそこの数時間が、外では何日にも該当していることを知る由もなかった。

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