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tenth  作者: 大友 鎬
第10章 一時の栄光
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沁情切札編-6 星座

「ほう。面白い」

 殺される、と怯えながらもベベジーは超新生デンジャラスベジタブルが死んだことを告げるとキングは一言、そうつぶやいた。

 超新生デンジャラスベジタブルとベベジーはONETEAMでやっていくつもりだったから、王に彼らの死を悼む気持ちがなかったことにベベジーは驚きを隠せなかったが、キングの興味はすでに移り変わっていた。

 ゲン・ミナクモの名前は知っている。

 キングもまたβ時代を生き抜いている。

 ゲンのほうがより老けてみえるのはキングが幼少の時代から生きている人間だからだろう。

 化石のような人間が今も生存し、なおもランクを上げて高みに登ろうとしている。

 キングにとって面白い以外の何物でもなかった。

「0395696977+8591(行くのですか)」

 それは数字の羅列だった。何かの数式のようにも聞こえた。とにかく傍らで聞いていたベベジーにはそうしか聞こえなかった。

 それでもキングはその意味を理解し、そして言った。

「誰が喋っていいと言った」

 凍りつくような冷たさがそこにはあった。

 言葉を発したのは王の右腕。異形の、明らかに改造された人間だった。

 その発言を王は封じ込めた。

 王にとってその人物は友人からの贈り物で、右腕とも呼べる側近中の側近だったが、まるで奴隷のようにありとあらゆることを制限して支配していた。

 その人物はカプリコーンという名前だった。

 どことなく女性のように見える山羊の顔にやせ細った体躯。下半身は魚の尾びれがふたつに分かれて足を形成していた。改造されたと一目見て分かる異形。右手は蟹の鋏で、左手は小さな炉のような腕になっていた。そして露出している背中には二つの顔が笑顔で張り付いていた

 友人たるジョーカーから、キング、クイーン、ジャックに贈られた十二人の改造戦士、邪道十二星座(ゾディアーク)のひとりだった。

 ベベジーはその正体を知らない。

 けれどベベジーにも知っていることがある。

 彼女はただただ王の傍にいて、王を守る存在。

 反旗を翻した従順員を瞬殺せしめた殺人機械だった。

「なんにせよ、久しぶりに会ってみるか」

 ゲンとは少なからず因縁がある。

 キングはふと呟いて荘厳な玉座から歩き出した。


 ***


 一方で空中庭園を制圧したクイーンはこう提言した。

「贄をささげるのよ」

 ヤマタノオロチが復活したかのような恐怖だった。

 けれどヤマタノオロチは倒されている。では誰への贄か。

 決まっていた。

 九尾之狐と、転倒童子への贄だった。

「一月に十人。すべて男のみなのよ」

 雅京の頂点、塔京に居座り、クイーンは要求する。

 クイーンが座る椅子はグロテスクそのものだった。

 座席部分は宝石の象られた瓶のような亀だがまだ命が鼓動するように時折動いていた。

 その亀に無理やりつけられた手すりは天秤だが、こちらは呻き声が聞こえる。その天秤すらも改造された人間だった。背もたれは四肢が獅子となった冒険者で生きてはいるがさるぐつわによって喋ることはできず亀の甲羅にぬいつけられていた。さらにその異形の椅子の後ろからは蠍の尻尾が見える。

それは椅子の下に絨毯のように敷かれたぺしゃんこの蠍だった。干物のように開かれてはいるが、左右のはさみ、そして後ろの尻尾はまだ生きていると告げるように動いていた。

 こちらもジョーカーからの贈り物。アクエリアス、リーブラ、リオ、スコーピオ。

 四人の成れの果て。座るものがなければ作ればいいじゃない。そんな精神でクイーンが身勝手に改造した特製の椅子だった。全員が生きてはいるが、クイーンに座ってもらうためだけに生きていた。

 もっともその椅子から荊が伸び、それが空中庭園を覆っている。

 それこそがこの鎖国の原因である。

「まずは十人。適当に選ぶのよ」

 指名されたアカサカには苦渋の表情が浮かぶ。気まぐれでそういう立場に選ばれた。クゲの多く、特に男はクリーンによって殺されており、男尊の姿勢が続くクゲでは政を得意としているようなものは残っていない。幼子のマユもそれができる立場になかった。

「少しだけ猶予を」

 既に老いぼれ。その自覚があるからこそアカサカは提言する。誰も言えぬであろうことを。

「だーめ! ……と言いたいところだけど集めてほしいものがあるのよ。それを集めるたびに一か月延長してやる」

 詰まるところ、クイーンはその集めたいものを集めるのが面倒なゆえにそういう手を取っていた。

「分かり申した。して集めたいものとはなんじゃ?」

「御石の鉢、蓬莱の洋服掛、火鼠の皮枕、竜の首の電珠、子安貝の陶磁器」

 さらりとクリーンは告げるが、アカサカは絶句。

 無理難題。それぞれが空中庭園にしかない幻の素材で作られた家具一式だ。

 それは贄を捧げなくても大勢の人が死ぬことには変わりなかった。

 不気味な、愉悦に歪んだ顔。

 アカサカは、思い出す。

 大陸風の衣装だから分からなかった。

 けれど空中庭園風の衣装に置き換えればよくわかる。

「家具屋……」

 庭園風に言えば家具屋の女王。大陸風に言えばクイーン・オブ・カグヤ。

 家具の蒐集であればどんな手でも使い、かつて雅京を貧困の窮地に追いやった女王その人であった。

「ワテクシをやはり知っておったか。なら、ワテクシに逆らえぬのよ?」

 アカサカは何も言えなかった。

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