終極
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200000階。
「300000階で死にかけたお前は200000階でもそうそうたどり着けない。何か月もかかるだろ?」
ディエゴに侮辱されたペラントーは奮起し、一ヶ月でそこへとたどり着いていた。
ざまあみろ、と思ったが、すぐに後悔していた。
ペラントーは死にかけていた。
そこにいたPCに追いつめられていた。
パターン化し、PC達の動きを制限したつもりだった。
けれどパターン化したことでNPC、つまり自分たちの動きも制限され、それはPC達によって解析され、動きを読まれ追い詰められていた。
200000階のルールは追加補充ありで、
PC側の増援ゲージを0にして全滅させればペラントー達の勝ち。
NPC側の増援ゲージを0にして全滅させればPC達の勝ち。
というもの。
すでにNPC側の増援ゲージは25を切っていた。増援に5使うため、あと増援は五人。
突入時にいた10人の冒険者はもはやペラントーひとりになり、あちらの増援ゲージは40でPCたちは10人もいる。
ペラントーがひとりなのは増援要請をかけているにも関わらず、誰も要請に応じないからだ。
敵わないと思う冒険者達、未だ防げているPC達の異世界転生を初めて阻止できなかった者として名を刻みたくない腕がある冒険者達が手を拱いているのだ。
ディエゴとトワイライトは羽根を使っているために200000階は飛び越えている。
「いやだ」
思わずペラントーは叫ぶ。
『orenchi red>命乞いかよ』
『zou mou>せっかく増援待ってるのにねえ』
増援ゲージは人数が10を切っている際に10分間経過すると5減少する。
ゲージ0が勝利条件になっているため、そういう措置が取られている。
そうしているうちにNPC側の増援ゲージが20へと減る。
『toroi toroi>はーい。これで俺たちの異世界転生まであと40分でーす』
『Oyaji Koyaji>それにしても今回はマジヌルゲーでしたねえ。FIMIさんの攻略情報通り動いたらすぐ殲滅ですもん』
『toroi toroi>それな』
『mimi mimi>ってかこれもう待ってる意味ある? 退屈なんだけど40分待つの』
言った途端だった。
NPC側の増援ゲージが0になった。新たにNPC側に冒険者が4人追加されたのだ。
『mimi mimi>wwww 奇跡キターーーーーーーーーー。すぐに増援したんだけど。やっぱり退屈って言うと補充されるのあるあるネタだろ』
『zou mou>おうし、さっさと終わろうぜ』
PC達はこのヌルゲーを終わらそうと武器を構える。
けれどヌルゲー。簡単なゲーム。イージーモード。そう思い込んでしまったのはPC側の油断だろう。
直後、mimi mimiの首が飛んでいた。
『toroi toroi>は?』
唖然とするしかない。
『orenchi red>おいおい。FIMIさんのデータにないぞ?』
それは新手を意味していた。
PC側が入りたい異世界。そこでランク7に達し、新たにエンドコンテンツへと挑戦してきた新規参入者。新参者。
PC達は思わず新参者たちの名前を見る。
アルルカ・アウレカ<10th>
コジロウ・イサキ<10th>
アリテイシア・マーティン<10th>
レシュリー・ライヴ<10th>
PC達は彼らの名前を知らない。どれほどまでの活躍をしたのかも知らない。
それでもその横につく<10th>の文字に恐れおののいた。
終極迷宮の記録保持者たちと同じ世界に住む者たちだったから。
途端にヌルゲーではなくなったと自覚したPC達はごくりと唾を飲んだ。
その十数分後、PC側の増援ゲージは0になり全滅した。
第9章 終




