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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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吸収


138


 ドゥドドゥは気づいていた。

 主に前衛となるトワイライトやアリー、アルルカが出て、ディエゴが後衛に下がった時点ですでに準備を始めていた。

 吸魔士の時点で使える吸収魔法も吸収師で使える吸収魔法も数は変わらない。

 基本的にふたつ。

 そのうちのひとつは事前に使っておくのが基本的だ。

まずは【吸収強化ドレイン・ブーステッド】。

吸収魔法はすべての魔法を吸収できることが可能で相手が使用した魔法の威力を自分の魔力に還元することができる。

 吸収師も魔法士系複合職であるため、魔法を使用できるため、他の魔法士系複合職と撃ち合いになった際には魔力を枯竭させることなく戦うことが可能だ。

 それどこか魔法士系複合職は攻撃魔法を、残る吸収魔法のうちのひとつ【魔法吸収(マジック・ドレイン)】で吸収することが可能のため、対魔法士系複合職との戦いにおいて吸収師の勝率は高いともいえる。

 が条件がある。

 この【魔法吸収(マジック・ドレイン)】は魔法の威力を数値化した際に、自分の魔力を上回っていた分は吸収できない。

 つまり威力150の魔法を、魔力が100しかない吸収師は吸収できない。それは吸魔士でも変わらない。

 それを補うのが【吸収強化ドレイン・ブーステッド】。

 使用すると次の【魔法吸収(マジック・ドレイン)】の吸収量を三倍にする。

 つまり、数値化した魔力が100の吸収師でも、威力300の魔法を吸収することが可能になる。

 四人がかりで展開される魔法をドゥドドゥは【魔法吸収(マジック・ドレイン)】だけでは吸収できない。だからこそ【吸収強化ドレイン・ブーステッド】を使う必要がある。

 当然、改造(チート)

 ドゥドドゥが改造なしに【吸収強化ドレイン・ブーステッド】を使い、自分の魔力の三倍もの威力を持つ魔法を吸収できるようになったとしても、相手が悪すぎる。

 リアンとディエゴは王家の血をひきそれぞれが〔王血〕、〔全質〕という優れた才覚を持つ。

 残るシャアナとアズミも〔炎質〕と〔光質〕。それぞれが属性の加護を受けた資質者で、ひねくれものではない限り、炎と光属性の魔法を使い続け、熟練度は並の魔法士ではない。

 それに対抗する手段として改造(チート)がある。

 才能や努力を一瞬して水泡に帰す、何も持たざるもののまっとうな手段。

 というのがドゥドドゥの考え方。

 もっとも才覚がなくともランク7へと至り、エンドコンテンツへと行けたドゥドドゥは持たざる者と果たして呼べるかどうかは不明だが。

 それでも見返すために覆すために、道を外して外して外した姿が今の肉塊、ドゥドドゥ・ジョーカーだった。

 だからこそ遠慮はせず。

 改造【吸収強化ドレイン・ブーステッド】によって自分の魔力量の100倍の威力ですら吸収を可能にした。

 もちろん、この肉塊の姿でなければ吸収した魔力量に体が耐えきれず破裂することだろう。

 すべての準備を整えて、ドゥドドゥは【魔法吸収(マジック・ドレイン)】を使用した。

水流が精霊を象り、荒れ狂う乱流の水が命をも飲み込む【命狂止水】が

無数の光球や光帯が彼方から襲いかかる【光災陸離】が

鬼のように炊ける何もかも溶かし尽くす炎たる【鬼炎万丈】が

赤子のように無垢で純粋な風で何もかも消し去る【純風満犯】が

ドゥドドゥの前に差し出した手のひらに飲み込まれていく。

何もかもが無駄、と言わんばかり。

同時に肉塊が破裂せんとばかりに膨れ上がった。

同じ肉塊に存在している十三人の十二支悪星たちはどことなく苦しげ。

余剰に魔力を体内に取り込むと吐き気を催すような気持ち悪さががあるという。

それでも改造【吸収強化ドレイン・ブーステッド】によって、ドゥドドゥは【魔法吸収(マジック・ドレイン)】でその強力すぎる魔法をすべて吸収した。

吸魔士ならここまで。吸い取った魔力をも使って、自身で魔法を展開して戦うだけだが、吸収師は違う。

 吸魔士が入口だけで、出口を自分で作らないといけないのだとしたら、吸収師はその出口でさえも用意されている。

 唯一にして無二、吸収師のみが使うことが許された放出魔法。

 援護階8の癒術【魔法反射穴】よりもお手軽に、忍術【魔法返】よりも強力な技能。

放出魔法【魔法倍放(ダブリリース)】。

 吸収した魔力を使用して、吸収した魔法の威力を倍にして跳ね返す技能。

 ドゥドドゥは笑う。

「死ーね、死ーね、死ぃーねええええええええええ、レシュリー・ライヴゥウウウウウウウウウウ!!」

 当然、遠慮はせず。

 こちらも改造(チート)。遊びだろうがなんだろうが遠慮すらない配慮すらない楽しみをぶち壊しにするような、改造(チート)

 改造【魔法倍放(ダブリリース)】。

 魔法の威力をニ倍ではなく四倍にして返す改造(チート)

 つまり、ディエゴ、リアン、シャアナ、アズミ、四者のドゥドドゥですら改造【吸収強化ドレイン・ブーステッド】を用いなければ吸収しきれなかったほどの威力の魔法が通常の倍ではなく四倍になって詠唱者に跳ね返る。

 四つが入り混じった異様な一条の光となって。

 笑いながらドゥドドゥはレシュリーを見た。

「今だ」

 同時にディエゴの声。

 レシュリーもディエゴも絶望していなかった。もっともディエゴは絶望するような性格ではなかったが。

 何かがおかしい、ドゥドドゥが思った瞬間、レシュリーがそれを放った。

 紛うことなき新技能だった。

 放たれたその球がぶつかった融合倍放魔法がわずかに跳ね返り、向きが変わった魔法と倍放魔法がすぐにぶつかり消滅。

 それがどんな効果を持つのかドゥドドゥは理解し、

「なあああああああああああああああああ!!」

 らしくなく叫んだ。

 球が当たった部分の魔法が跳ね返り、向かう先が変わって跳ね返った。一部分だけだだがその事実は変わらない。

反射球リフレクター】。

 ディエゴがエンドコンテンツから地上に出ていることは知っていた。

 その上で自分の存在が知られれば、おそらく戦いは避けられないことも。

 けれどドゥドドゥの復讐は始まってしまっていた。

 時期が悪い、と取りやめることはできない。

 レシュリー・ライヴに復讐をしながら、ディエゴも退ける。

 ドゥドドゥはそれは可能だと思っていた。

 ディエゴがレシュリーの知り合いである資質者たちを殺していると知っていたから。

 思惑が合致すれば共闘する、とは思ってはいたが

 よもやディエゴとレシュリー、ふたりが敵対していながらそこまで協力し合うとは思っていなかった。

 つまり、ディエゴの思惑通りに事は進んだ。

「でーすが、まーだです」

 跳ね返したのはたった一部。100%のうちの0.0001%程度。

 それだけで状況は打破できるわけがない。

「おりゃおりゃあああああああああああああ」

 気合の声。レシュリーらしくない声にも思えた。

 それでも連投。連投。連投。

〔双腕〕の才覚を存分に発揮しての連投。

 どんどん投げていく。

 魔法が跳ね返り、向かう倍放魔法にぶつかり消滅。

 それが繰り返されていく。

 それも圧倒的な速さで。

 ドゥドドゥの強化された肉体、視力によってその球は確認されていたが、並の冒険者には目にも止まらぬ速さ。何が起こっているのかわからない状態だ。

 なまじ見えているからこそ、その状況が理解できずドゥドドゥは深く深く傷ついていた。

 100%のうちの0.0001%だったものがあり得ない速度で減っていく。

「レシュリィイイイイイイイイイイ・ライヴゥウウウウウウ!!」

 ドゥドドゥとレシュリーの距離はおおよそ100m程度けれど5mも進まぬうちに80%、70%、60%と尋常ではない速度で減っていくのだ。ドゥドドゥは叫ばずにはいられなかった。

「ちょっとまずいかもな」

 一方でぼそりとディエゴは呟いた。

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