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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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沁情


126


 気絶させたはずのジュリオがレシュリーの使いとしてディエゴの前に現れたとき、ディエゴは少しだけ驚いていた。

 情報を得させないための手法だったが、あのごく短時間でジュリオはディエゴの痕跡を辿って、ディエゴにたどり着いたからだ。

 ジュリオの姿はもういない。

 もれなく殺した、のでは当然ない。

 言付を伝えるなりすぐに姿を消していた。

 おそらくレシュリー・ライヴの悪評を消すのを優先したのだとディエゴは判断した。

 そのうえで

「廃城クリンタ……か」

「かつての王の城がアジ・ダハーカの住処となり、今は改造をする秘密組織の根城か。……ひとりで向かう気なのか?」

「そこを指定したのは悪の秘密組織をついでにつぶすのが狙いだろう。それはこっちにも都合がいい」

「ディレイソルの仇討というわけか」

「それもある。が……ドゥドドゥドゥ・ジョーカーというやつの名前に聞き覚えがある」

「聞き覚え?」

「お前だって因縁があるはずだ」

「因縁? 私に呪いをかけた奴らか? それとも呪いを解くための鬼か?」

「いいや。そんな浅いものじゃねえ、とてつもなく深い因縁がある」

「途轍もなく深い因縁?」

「ああ、俺の知っているドゥドドゥドゥ・ジョーカーは沁情(ジャッシュメント)切札(トランペッター)のひとりだ」

「沁情切札だと……? そいつらは……確か……投獄されているはずでは?」

「四人中三人はな。残りひとりは死んだはずだった」

「ということは死んだひとりが……」

「ドゥドドゥドゥ・ジョーカーだ。だとしたら好都合だろ。が疑問がひとつ。レシュリー・ライヴはなんであいつに狙われてる?」

「それは私が知るところでないが、ドゥドドゥドゥ・ジョーカーが沁情切札なら、私も行かねばなるまい」

「だろうな。サスガたちを招集できないのは厄介だが、やるしかねえ。何しろ、沁情切札は王政を終わらせるきっかけになったβ時代最大最悪の大罪人だ。ジャックを除いてランク8。誰もがエンドコンテンツの早期突入特典持ちときてる」

「王族として見過ごすことはできない、か」

「俺は違うが、リアンを殺させるわけにはいかないだろ」

「そういうことにしておくか……」

「それがお前ら[四肢]の使命でもある」

「ごもっとも」

「ディレイソルも呼べ。まずは前哨戦。ジョーカーをぶっ潰す」


***


「モーなんなのこれ?」

 セキフンジャクはクリンタにてドゥドドゥドゥを問い詰める。

「なんなのこれ、とはなんなのでーすか?」

「あたしの知らない改造がついてた。モーありえない」

「あたーり前じゃないでーすか。そっちはされた側、こっちはすーる側。主導権はこっちにあーるに決まっています」

「何それ。モーそんなの許せない」

 セキフンジャクは怒りのままドゥドドゥドゥにつかみかかる。

「てめぇが教えておいてくれれば、あたしは勝てた」

「ひひ、けーど、教えなければこうして怒りに任せてここに戻ってくーるでしょーう」

「モー何? どういうこ……」

 そこでセキフンジャクの意識が途切れる。

「今はウルウもいまーすが、素体にするには十二支悪星の最初の十二人のうちのひとーりは欠けてはならないピースですかーらねえ」

 息絶えたセキフンジャクをドゥドドゥドゥは引きずり改造部屋へと入っていく。

 寸前、

「ウルウ、おそらくもうすぐ大量の冒険者がやってきます。撃退の準備をお願いしまーすね」

「わかったニャ」

 セキフンジャクが殺されるのを黙ってみていたウルウは何も気にせず外へと出ていく。

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