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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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情勢


125


 空中庭園に戻った僕たちを出迎えたのは大勢の冒険者だった。

 見知った顔から見知らぬ顔もいる。

 誰しもがレシュリー・ライヴを知っているのか問われ、殺されそうになったという共通点があった。

 ここにそろっている冒険者以外はそれらに遭遇していない、あるいは殺されてしまっている。

 つまるところ、ここにいるのは撃退できた冒険者のみということになる。

 僕たちがランク7、上級職になった喜びもつかの間、ヴォンからもたらされた情報によって僕たちはその正体を知る。

十二支悪星(エトワール)……」

 さらにジェリオと呼ばれる集配員がヴォンに渡した資料によって、その詳細な情報が判明していた。

 その情報と冒険者の情報を照らし合わせると、モッコスを殺したセキフンジャク以外はすでに死亡が確認されている。

「でもまだ安心はできませんヨ」

 さらにヴォンが資料を提示。ヴォンたち、救済スカボンズも致命的な打撃を受けたというのに気丈にも手伝ってくれていた。

 その資料に記されていたのは十二支悪星は現時点での最強の十二人という説明だった。つまり倒したとしても時間が経てば十二支悪星は補充されるということだろう。この辺は十本指と同じだけれど、十本指は実力や功績で定められるのに対して十二支悪星は悪の秘密組織ジョーカーが見込みのありそうな冒険者をたぶらかして改造してしまうという点が違う。

 現に悪意に満ちた改造でドッカーたちを失っているモモッカは許せない気持ちでいっぱいだろう。

 押しかけてきた冒険者のなかには僕を糾弾する者もいた。大怪我を負っていたのに、糾弾するために空中庭園へと赴き、ひとしきり僕へと恨みつらみを吐いてその冒険者は死んだ。名前をラロッカ、と言った。

 ラロッカの言葉は僕に戸惑いと悲しみを生んでいた。僕はなぜジョーカーにこんなにも命を狙われているのか知らない。

 そしてなぜジョーカーが僕を知るものを殺そうとしているのか知らない。

 僕が原因である、というのはヴリル協会と三百人委員会の陰謀だった。

 救済スカボンズ壊滅の一報を受けたヴリル協会と三百人委員会はその原因を探り、僕を知っているものを殺している集団がいることを知り、それだけで僕が原因だという風潮を作り出していた。

 救済スカボンズが壊滅したことでどちらかが覇権を握ろうと、救済スカボンズから情報提供を受ける僕をも追いやろうとしていた。

 僕が空中庭園にいると情報を公開したものヴリル協会と三百人委員会で、ラロッカを含め南の島で巻き込まれた冒険者などが押しかけていた。

 とはいえ空中庭園には飛空艇を持たないと入れないことから僕を糾弾したい冒険者は大陸に大勢いるのだろう。

「参ったな……」

 落第者として誹りを受けていたから慣れていると思ったけれど思った以上にきついものがある。

 僕のせいで冒険者たちが虐殺されていく一方で、僕は悠々と試練を受けて上級職になってたのだから。その間はしかも何もできず何も知らずに上級職に

なることしか考えてなかったのだから。

「あんたのせいじゃないでしょ」

「でも僕を狙っているのは事実だよ」

「なんで狙われているかはわからないじゃない。ここに押し寄せてきたバカたれと同じでもしかしたら情報を操作されているのかもしれない」

「ヴリルと三百人ができるのは一部の冒険者を過剰に煽ルだけですヨ。さすがに改造組織を操るのは……」

「うっさい」

 ヴォンの真実にアリーが怒鳴る。

 ちなみにイロスエーサたちが情報戦によって鎮静化しようと世界中を駆け抜けているが、人数の差によってデマが拡散するほうが早い。

 抑えきれてないのが現状だった。

「でも、目的は変えないよ」

 うじうじしているのも、もういい加減やめないといけないだろう。

「ジョーカーは壊滅させる。……ディエゴも倒すよ」

「無理してない?」

「どう思う?」

「まあ、あんたは何を言っても無理するから、止めないわ」

「本当は……ちょっと迷ってる」

「ディエゴを倒すかどうか?」

「バレてた?」

「そりゃね。ディエゴってやつは十二支悪星をふたりも倒してるんでしょ。根っからの悪人じゃない。資質者、だっけ、その才覚を持っている冒険者を問答無用で殺しているけど」

「それに一応、リアンのお兄さんに当たるんじゃなかったっけ? 一度リアンを守ったから見逃したのも事実だよ」

「七対三ってところね」

「えっ? 何が?」

「七割が倒したい、三割が倒したくない」

 図星だった。

「あんたのことは分かんのよ。でも倒すんでしょ?」

「うん。そうだね。そうだ。ヴォン……ジュリオさんと連絡は取れる?」

「いつでモ」

「ジュリオさんならディエゴの居場所わかるよね?」

 はイ、と頷くヴォンに僕は告げる。

「なら、決戦の場所を連絡して。場所は……廃城クリンタだ」

 アジ・ダハーカがいるとされる場所。そこいジョーカーの本拠地があるらしい。

 そこにアジ・ダハーカはすでに存在していなかった。

 けれどその噂のせいで誰も寄りつかなかった。

 だからこそそこは今まで発見されなかった。

 そこを僕は決戦の場所に選ぶ。

 ディエゴを倒すついでにジョーカーをも壊滅させる作戦だった。

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