表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
493/874

名乗


124


 カジバの馬鹿力。それは才覚でもなければ特殊技質でもない、アルルカやルルルカ、エウレカ家に代々継承される呪いのような血筋の力だった。

 試してみたい、というのはそれが使いこなせるかどうか試したいということだったのだろう。

 ルルルカが命を燃やしてでなければ使いこなせなかった力の条件をアルルカは満たしたのかもしれない。

 消えるような神懸った速さでコントンの背後にアルルカは迫る。

「チュ!?」

 驚きながらもコントンも反応し、アルルカを確認。けれどできたのはそこまで。

 魔癒双剣師へと至ったアルルカの【炎帝(イーフリート)】【雲泥水(ウンディーネ)】、それぞれ魔法攻撃階級6の炎と水が交わった魔充剣タンタタンの凶刃はコントンの背中へと切り込んでいた。

「チュチュチュ! チュ!」

 それは悲鳴ではなかった。

 真っ二つに切り裂いたはずのコントンの姿が消える。

 残像だった。

「うちの速度に追いチュくなんて、おみゃーはなんチュー速度チュね」

 腰を抜かしてながらも、冷や汗を掻きながらも、それでも余裕があるように、コントンは告げた。

「でもまあ、うちの速度に追いつチュけても勝てないチュ」

「確かにあんな速度に反応できたのは驚きね」

「けど、だとしたらそれが改造された部分ということでござるな」

「おそらくそう思います。余裕がありそうに見えますけど、背中の傷は隠せてません」

 指摘されてコントンは背中を少しさすり、バレていた動揺を隠す。

「このまま、押し切りますか?」

「追い込めるとは思うけれど、時間がかかるわ」

「ではどうするでござるか?」

「どうもこうも、こういうときは……」

「こういうときは?」

「あんたに任した」

 ポンポンと肩を叩いて、アリーはコントンと向かっていく。

「何か思いついて」

「そういうことでござるか」

 何か納得したような顔でコジロウはアリーに続き、アルルカも続いていく。

 三人が高速でコントンを追い詰めていく。

「素直に認めるでチュ、おみゃーらは強い。けれど要注意(チューい)! うちはおみゃーらよりも数段強いでチュ」

 その言葉は虚勢とは思えなかった。まだ何かを持っている。そう感じさせる言葉だった。

 それを示すようにコントンは剣を一振り。蝙蝠男のような影が三体出現する。

吸剣・吸孤児鬼カタレプシー・ノスフェラトゥ】で出現する蝙蝠男は一体。

 それが三体出るということは一回の使用で三回使ったことになる仕様ということだ。

 コントンは適当に剣撃を繰り出し、【吸剣・吸孤児鬼カタレプシー・ノスフェラトゥ】の影を増やしていく。

 それに対処しながら、アリーもコジロウもアルルカもコントンと高速戦闘を繰り広げていく。

 互いが互いに決定打を与えられない。

 けれど【吸剣・吸孤児鬼カタレプシー・ノスフェラトゥ】によって、かすり傷を再生させていくコントンのほうが、長期戦には一日の長がある。

 だから僕は出し惜しみはできない。

 錬金術師となった僕が新しく使えるのは【超合(ミックス)】、【錬金アルケミー】のふたつ。

 【超合(ミックス)】は【合成】の上位版。道具か投球を3つまで混ぜ合わせることができる。

 【錬金アルケミー】は【合成】の強化版で道具と投球に加え、武器も混ぜ合わせることができる。

 今回はコントンが見切れぬほどの速度を必要とする。

 なら……

 必要な道具を【収納】から取り出して、超合!

「行くぞ!」

 【超合(ミックス)】され、神々しく光る球が両手にあった。

 原材料は魔巻物と【剛速球】と【剛速球】。魔巻物の中身は【加速】。

 三種類の超速度を組み合わせて新技能が誕生する。

 【神速球(ライトスピーダー)】。

 速度によって威力が決まり、なおかつ自身も加速していく球だった。

 まるで流れ星のように光の尾を引いて一筋の光がコントンを打ち抜いた。

「ぬなあ!?」

 変な悲鳴とともに腹を強打したコントンが吹き飛ぶ。

「何が起きたでチュか?」

 誰よりも速く、何よりも速く早く、【神速球】はコントンに重たい一撃を加えていた。

 隙は与えない。再び【神速球】を投げていく。

「アリーたちは吸剣の対処を」

 全員が首肯するよりも早く、僕は【神速球】を連投していく。

「お」コントンが【神速球】が当たる。

「ま」コントンは避けれない。

「え」一瞬にも満たない時間でまた【神速球】が捉える。

「は」コントンには捉えられない。

「い」何かが飛んでくる、と認識しながらも、

「っ」その速度に対応できず、

「た」なんとか対応しようと模索するが、

「い」その間にまた【神速球】がやってくるのだ。

「だ」一度命中すると収まることのない、猛追に、

「れ」その圧倒的な強さに畏怖しながらも

「だ」コントンは声を絞り出してもう一度問うてきた。

「言わなかったっけ?」

 これがトドメの一撃だと教えるように少しだけ、連投から間を上げて投球。

 手元から離れても、減速どころか加速する【神速球】がコントンの頭を打ち抜き、身体を地面へと叩きつける。

「僕がレシュリー・ライヴだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ