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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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閃明


113


 まだ少し戦っただけだから結論を急ぎすぎるのは良くない。

 けれどそう思ってしまうほどの重圧をバエル・ゼブブは持っていた。

 アリーとコジロウ、アルルカがバエル・ゼブブを狙う一方で、僕は視点を変え、バエル・ゼブブが守っていた水晶へと攻撃を加えようとする。

 ブォォン、と羽音。

 気づかれていた。

 アリーたちを跳ね飛ばし、滞空していたバエル・ゼブブはギロリとにらみつけると瞬きも許されないほどの急激な転換で向きを変え、水晶近くへと転移していた僕のほうへと向かってくる。

 速い――!!

 シッタなら冗談交じりで速えぇとかぬかしそうだけど。そんなアホなことを考える時間もないぐらい、逼迫。

 すでに目前までバエル・ゼブブが近づいてきていた。突撃する気だ。

 目論みを看破して一呼吸。

 僕の両手にはすでに青く光る球があった。

 インスタフライの天敵。【照明球・青】!!

 僕とバエル・ゼブブが衝突。衝突前に両腕を前に突き出して、盛大にぶつける。

「いけぇええええええええええええ」

 ぐりぐりぐりと複眼へと押しつける。

 が、瞬間弾かれる。

 体全体が障壁に覆われ守られているように感じた。

 両手が弾かれると同時に僕は水晶に激突。

「守ってるんじゃないのか」

 映える水晶を守るためにバエル・ゼブブは僕を標的に見据えたと思っていたのだけれど、その水晶に平然と僕をぶつけてきた。

 もう堪能したからいらないと言わんばかりの挙動だ。

 バエル・ゼブブが二度三度、僕へと衝突し、離れていく。

 耐えきれる落下する僕をアリーが支える。

「大丈夫なの?」

「とりあえず、【照明球】は効かない」

「みたいね。でもあの体を覆ってる障壁みたいなのを解除できれば効いたりなんかしないのかしら」

「皆目見当がつかないでござるが……」

「とりあえず私の【三剣刎慄】を当ててみるわ」

「確かに現状それが個人最大火力でござるな」

 リアンやシャアナたち魔法士系複合職がいるのであれば障壁の強度限界を超えるほどの威力の魔法を使えばいいけれど、現状それはできない。

 だからこそそれに行き着いた。

 方向性を決めてもう一度挑戦。

 アリーが【三剣刎慄】を撃てるように、僕を含めアルルカとコジロウと連携して隙を作っていく。

 打ち合わせもなしにコジロウが疾走。壁を駆け上がりながら【苦無】を連射。

 バエル・ゼブブは避ける動作すら見せない。

 全てが障壁に遮られ、地面へと落ちていく。

 それでも鬱陶しいのかバエル・ゼブブは壁走りするコジロウへと突撃を開始。

 ガンッ! と鈍い音。

 コジロウへ向かっていくバエル・ゼブブめがけて僕が【剛速球】を投げてぶつけた音。

 正確に言えば僕の【剛速球】が障壁にぶつかり阻まれた音。

 先の攻撃も防がれたのでそんなはずないと内心思いつつも一方向への障壁の可能性もあると鑑みて投げたものだった。

 防がれるのは当然。周囲を覆っていると確信を持つ。

 バエル・ゼブブの敵意が僕へと移行。急速に向きを変えるが、今度はアルルカ。【転移球】で上空に転移したアルルカの落下位置にはバエル・ぜブブ。

 僕へと向かってくるのを読んで、アルルカをその位置へと転移させておいたのだ。

 アルルカはすぐに察知。【病闇止】と【光刃】のタンタタンを真下にして突き刺す。

 ――が弾かれる。当然の結果。

 アルルカをすぐに地上へと転移。

 アルルカへ敵意を見せたバエル・ゼブブだが一瞬見失う。

 それが好機。より確実にするためにコジロウの【苦無】乱舞と僕の連続【速球】がバエル・ゼブブを襲う。アルルカを狙おうとした矢先の僕とコジロウの猛攻撃があり、バエル・ゼブブの動きが完全に止まる。

 どうすればいいのか迷っているようにも見える。

 途端、疾駆。

 アリーの【三剣刎慄】がバエル・ゼブブの障壁と衝突。

 火花を散らし、やがてアリーが弾かれる。

「大丈夫、アリー?」

 支えながら問いかける。

「当たり前じゃない。というか、障壁は?」

「傷ひとつないよ」

「何それ? 本当に無敵なの? ここのボスなんでしょ?」

 結果に腹を立ててアリーは言った。

「ここのボス? ……そうか、そういうことかも」

「何?」

「アリーの言葉がヒントになったよ。打開できるかもしれない」

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