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tenth  作者: 大友 鎬
第9章(後) 渇き餓える世界
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絡繰

108


 作戦。とは言うがそれは言葉として少し大仰かもしれない。アルはただこう言っただけだ。

「ひとまずはいつも通りに」

 ようするにそれは冒険者の王道ともいえる最大火力による戦闘不能狙いだった。

 魔法士系複合職が三人も揃っているのなら大概それがほとんどの敵に通用する最善手になる。

 ジョンとモモッカ、キンさんにクマモ、そしてアルがエンモ、サクガク、トンタンを抑え込み、その時間を使ってリアンとシャアナ、アズミが最大火力をお見舞いするのだろうと誰もが瞬時に理解した。

「それってあの三人は耐えれるの?」

 モモッカの懸念はもっともだ。救いたいのに殺してしまったら意味がない。

「おそらく大丈夫です」

 アルにとってランク7の見本がディエゴという規格外しかいない。エンモ、サクガク、トンタンはディエゴほどではないかもしれないがとりあえずランク7で、さらには改造者だ。

 耐えうるだろう、とアルは説明する。

「でも……」

 モモッカはそれでも何かを言いたげに言葉を紡ごうとした。

「確かに不安があるのは分かるのでごわす」

 それを遮ったのはキンさんだった。「しかしでごわす。今はあちらが抵抗できぬようにする必要があるでごわす。ランク差がある以上、仮に捕縛する技能、魔法を使っても捕えれる可能性は少ないでごわす。だとしたら、ドッカーたちを信じて、今はそうせざるを得ないのではないでごわすか」

 ドッカーたちを信じて。その言葉はずるい。

「そう……なのかな。ううん。きっとそうなんだよね」

 ずるい言葉に騙されるように、どこか気持ちを納得させるためにモモッカは告げる。

「三人を救うために、まずはやるべきことをやろう」

 殺そうとしてくる三人をまずは戦闘不可能な、なんらかな状態にしなければ、何も始まらない。

 戦闘中に何か思いつけば別だが、まだはじめの一歩さえ踏み出していない。

 モモッカはキンさんの言葉で一歩を踏み出す。

「やろう」

 その言葉で戦闘は再開される。


 アルを中心にモモッカとジョン、キンさんにクマモが前衛。

 リアンとシャアナ、アズミが後衛。

 何をしようとしているか丸わかりだが、これが一番安定している布陣。

 後衛と前衛の間には物操士ジョンが作成した浮遊地雷(矢付)――通称THE・RAIYAが浮遊していた。

 言わずもがな、防衛の守りである。

 エンモとアルが再び衝突。

 聖義師の剣を受け止める。これが通常の剣より脆い魔充剣でなければ押し切られていたかもしれない。刃と刃がぶつかり火花を散らす。何らかの魔法を宿してはいるが、アルにはまだ判断がつかない。

 聖義師は放剣士のように魔法剣から魔法を放つことはできない。ゆえに魔法剣で切られなければいくら宿していてもその効果はアルには及ぼされない。

 ジョンとモモッカはふたりがかりでサクガクを狙う。剛弓師が至近距離で戦ってくれるはずがない。アルやキンさん、クマモでは近寄れない可能性がある。

 対してジョンとモモッカは近寄らなくても攻撃できる手段がある。

 モモッカはアリーと同じく放剣士でジョンは物操士。

 物操士は【土人形】などの技能を使用して土人形を召喚し操作する冒険者のほうが多いが、ジョンが主に使うのは複合職の名の通り【物操】だ。【物操】は初期中の初期の技能だが、熟練度やレベル、ランクによって、操れる物の数が大きくなる。

 そして物ならば何でもいい。ジョンはお手製の絡繰りUMIGAMEにTHE・RAIYAを【物操】している。

 ただの石や岩を操っても応用次第では強力だが、それならば【鉄巨人】を使ったほうが早い。

 しかしジョンのように絡繰りを操るのであれば【物操】のほうがほよど物騒だ。

 THE・RAIYAを【物操】している分、攻撃に転じれる絡繰りは少なくはなるが、それでも数も十分。操作性も鈍ることなく、ジョンはサクガクへと自走式爆裂人形(膝丈寸)――通称GO! EMONを差し向ける。ジョンの膝丈ぐらいぐらいの大きさの絡繰り人形が地面を疾走。自走はできるが、ジョンが操ったほうが回避もできるため、自走はあくまで予備の手段だ。

 モモッカも同時に魔充剣ニッポンイチから【光刃】を解放。剣をふるった軌道に合わせて、三日月のような光の刃がサクガクへと飛んでいく。

 対してサクガクは【KOKUU(こくう)】で応戦。矢はどす黒く大きな水滴で覆われていた。

 その矢が【光刃】の一部を消失させGO! EMONを射抜く。

 射抜かれた瞬間、爆発する絡繰人形はしかして爆発しない。

 【KOKUU】が併せ持つ水属性が絡繰人形を湿らせ発火させなかったのだ。

 ついでに言えば【光刃】の一部を焼失させたのは【KOKUU】が併せ持つ闇属性の力だった。

 相殺してもなお、闇が勝り、【KOKUU】は潤いと深淵を保ったままGO! EMONを貫いたのだ。

 が仲間のひとりが倒されてもなお、絡繰人形たちは歩みを止めない。ジョンに操られるがままサクガクヘと向かっていく。

 乱射された【KOKUU】がまるで黒雨のように降り注ぎ、人形たちを貫いていく。

 人形たちも屍を越えていくように残骸の山を歩いて進む。

 モモッカも【光刃】を打ち続けていた。

 【KOKUU】に射抜かれた場所は消失するため無意味に感じるかもしれない。

 がサクガクに向かっていくその【光刃】をサクガクは無視できない。

 恐るべきはその命中精度だ。範囲が横長ということもあるが無駄弾がなく放たれたすべての【光刃】がサクガクの命を掠め取らんと向かってきていた。その対処に手間を、そして時間を取られ、GO! EMONの侵攻を許していた。

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